進化は加速する


地球上に「生命のタネ」らしきものが生まれてから、約 4,000,000,000 年 (40 億年)たったと言われています。
化石に残るような、体の構造を持った生物が最初に現れたのが 約6億年前(バージェス化石生物群など)、 つまり、多細胞になって体構造を作るだけのことに 30 億年かかりました。
それに対して、ヒト属が現れたのは 250〜200 万年前。 その後の約 250 万年の間に、脳の発達、農耕牧畜、文化・科学の発達 という、それまでのどんな生物とも全く違った生存戦略を手に入れました。

この 30 億年と 250 万年を比較するのは、変化の質が違うので無茶かも しれませんが、単純に割って、1,200 倍、時間スケールが違います。 千二百倍! えらい違いだとは思いませんか。
遠い宇宙から、辛抱強く地球生物の進化を観察しているものがいたとしたら、 ここ最近の変化の激しさには目を回しているかもしれません。


進化というのは「蓄積」のシステムです。今まであったものを受け継ぎ、 その上に変化を積み重ねていきます。それは形や能力が変わっていく だけではなくて、もっと長く見れば、進化の「やり方」も だんだん蓄積され変わってきています。
新しい進化の戦略を追加するたびに、より「当たり」の多い変化のしかたを 手に入れて、短い期間で進化できるようになってきたのです。

どういう進化戦略が蓄積されてきたのか? 僕の考える概要は 下のようなものです。

[Evolve Systems]

◆1: 「突然変異」で変異が起こる場合、変異はランダムに突拍子もない所に 発生するので、悪化する(今いる適応度から遠く離れた場所に) バリエーションを作ることが多いでしょう。変異した多くは 消えてしまいますが、それでも子供の個体数を多くしたり、 時間をかければ、有効な変異を引き当てることもあるでしょう。

◆2: 次に加わるのが「有性生殖」。これを使うと、うまく生き残っているものの 組合せでバリエーションを作りますから、適応度が高いところの周辺を、 狭い範囲内でバリエーションを作り出すことができるでしょう。 「当たり率」は突然変異のみよりもぐっと高くなります。

◆3: さらに「性選択」が働くと、ある「方向」への変化が連続的かつ高速に 進みます。性選択(好み)の方向は、最初はランダムにあっちこっちに 走り出すのでしょうが、それらのうち、(結果的に)より適応度の 高い方向へ進んだ好みがあれば、それは残ります。 当たらない場合も多いでしょうが、当たった場合には、 速く山を登って頂上へ着ける。

◆4: 「学習・論理・社会行動(など)」は、特に人間に顕著な能力です。 脳が発達したことにより、推論し、記憶し、共有し、伝承するようになって、 ついには「良い遺伝子を自分達の手で設計する(遺伝子操作出産)」ことさえ できようとしています。
自分の子供をデザインできてしまうのです。その変異の成功率は 完璧に近くなるでしょう。
(ただし、未来が正しく予測できればだけど。)


ここまで来て、突然変異のみによるランダム変化と、人間の遺伝子操作による 変異生成、の成功効率を比較すると、後者が 1,000 倍くらい正確で速い と言われれば、そんなもんかもしれないな、と納得できる気がしませんか?

そしてもちろん、生物史の必然として、進化の高速化はこれからも続くでしょう。 人間が変えてゆくだろうし、それが行き詰まって人間が滅びた後に 別の生命が台頭するのか、それはわからないけれども、進化のスピードが 後戻りすることはないでしょう。 歴史は常に、今いるものを出し抜く、ということの繰り返しで 進んでゆくのです。


1998/04/28 T.Minewaki
1998/12/13 last modified T.Minewaki

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