◆ 進化の方向、発想の転換 ◆


進化について考える際の大前提があります。

進化の、と言うまでもなく大前提ですが、忘れがちです。
一般的に、進化について耳にする時、話の順番が逆だよなぁ、 と感じる議論がとても多いです。

今、僕達が見ているのは、生き残ったものだけです。
消えてしまったもの達の声を聞くことはできません。
発想の転換が必要です。 例をあげましょう。  
あなたは、「野球」について何にも知りません。 「野球って何だろう」と思い、調べる事にしました。
手に入れやすいデータと言う事で、 最近5年間の夏の甲子園大会の優勝チーム、 についての情報を手に入れました。

データを並べて見てみると、5チーム全部、投手は「左投げ」でした。
そこで、あなたはハタとひざを打って、
「そうか、野球って、左手で投げるスポーツなのか!」

これは、間違っていますよね。

甲子園大会を目指して、汗と涙を散らす数千の高校野球チームの中には、 様々なバリエーションがあるし、右投げ投手だって沢山います。 どのチームだって「優勝してやるぅぅ」と思っています。 (いや、思っていないのも多数いるかもしれないが。)

5チーム全部が左投げだったのは、たまたまサンプリングの偶然か、 それが勝ち残るために、なにか有利だったからです。

「野球」を「生命」に置き換えると、少し考えやすくなります。

今ここにいる、生き残った生物だけ見ていても、生命の本質は 見えないんです。
消え去ったものについても、できるだけ沢山のサンプルを集めて、 時間順に考えるべきです。

十分多くの優勝チームのサンプリングをして、統計的に有意に 「左投げ」が多かったとしましょう。
その場合、左投げに向かう「方向性」を決めたのは、「野球という 環境に適していた」という要因、つまり選択圧のせいだと思います。

ミクロに見ると、夏の全国高校野球大会では、左投げ投手の1球より、 右投げ投手の1球の方が打たれる確率が高い、ということです。

方向性(何の戦略を残すか)を決めているのは、環境(対戦相手)の 選択圧です。
人間の場合、過去の試合を参考にして戦略(左投手で行こう)を 決めたりするので、戦略の変わりかたは完全にランダムとは 言えませんが。

「少数有利」という選択圧もありますから、どのチームも左投げ 投手を使い、左投手を打ち込む練習を積むと、左投げが多数派 となったある時点で、「右投げ投手が有利」という選択圧に 変わるかもしれません。
それは、予測できません。


1995/04/06 T.Minewaki
2000/02/27 last modified T.Minewaki

僕に ピカッ が来た日
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