「恐竜を発掘してきた」というと、良く訊かれるのが
「発掘した化石は持ち帰りできるの?」という質問です。 そういう欲望が頭をもたげかかることもありますが、 恐竜化石は産出地の貴重な財産ですから、 勝手に持ち出してはいけません。 持ち出したところで、個人の戸棚の中でひっそりと眠るなんて もったいなさすぎます。 もともとこのツアーはモンゴル古生物研究センターのお手伝い という主旨のもの、発掘成果は専門家にしっかり 調べてもらいましょう。新種発見ともなれば、僕の名前が 付くかもしれません! うまく行くと、発掘化石に日本で再会できることもあります。 以下に、1998 年に南ゴビで発掘したピナコサウルスの化石について、 恐竜化石が発掘されてからどこへ行くのかについてお話しようと思います。 |
![]() お持ち帰り? |
![]() 発掘場所はこんなところ |
1998 年の夏、僕達は左のような場所で恐竜を発掘していました。
モンゴル国・ゴビ砂漠の南の方、
アラク・テグ
というところです。 一面の赤茶色の地面、パヤパヤと短い草が乾燥に耐えて生えています。 この地面をじーと見つめて歩き回り、「なにか」を探します。 なにか、石ころや土ではないものが地面から顔を出しているはずと信じて、 何時間も、探し回ります。 |
なにか見つけました! ある場所で岩盤の上に積もっている小石をブラシで掃き払い、 よーく見ると、妙に丸っこいでっぱりがあり、 それに沿って岩を削っていくと、長い棒のように続いていました。 写真では左側のでっぱりが先に見つかったところで、 右側へと削り進んで行きました。 そしたらその先で小さな棒に分かれていました。 |
![]() 化石かな? |
![]() きれいに露出、手指の化石
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小さな棒は短く3本ほどあり、太い棒から放射状に広がっています。
ここでこれは「手」だ! とわかりました。15cm ほどのかわいい手。 化石と回りの岩とは見分けがつきにくく、 またとてももろく壊れやすいものです。 丁寧に岩をピックで取り除き、ブロワで砂を吹き飛ばし、 化石をきれいにします。 さらに指が現れ、きれいに5本指が露出しました。 発掘監督のバタムさんを呼んで、見てもらうと、 「ビューティフル!」と感嘆した後、ピナコサウルスの手だよ、 と教えてくれました。ピナコサウルスは、全身をヨロイで覆ったような 「ヨロイ竜・アンキロサウルス」という恐竜の仲間です。 大きさは 1.5m くらいとのこと。 自分でピナコサウルスの化石を見つけたのは初めてで、 そしてきれいな化石が出たので、とても嬉しく、わくわくします。 |
この化石はなかなか良い、ウランバートルの研究所へ持ち帰ろう、
ということになったので、みんなで協力して掘り進みます。 この手指の周囲に、他の部分の化石が続いているかもしれません。 慎重に、周囲に溝を作るように岩を削ってゆきます。 地面に這いつくばっての作業で、肩や腰がミシミシと痛みます。 気を使う細かい作業で目も疲れます。交代し休憩を取りながら、 黙々と、夕方までかけて、丸い形ができてゆきます。 |
![]() みんなで周りを掘り下げる |