民衆大学(フォルケホイスコーレ)清和セミナー

「フォルケホイスコーレ(民衆大学)清和セミナー」の報告

 

1999年9月20日(月)〜25日(金)

熊本県清和村清流館

 

おとぎの国、福祉の国、そして成人教育の大国デンマーク。

そのデンマークより人々が日本を学びに熊本県の清和村にやってきます。

遠い異国の人々を迎えて、生涯学習と国際交流の新しいスタイルが

地元の人々との交流の中で清和村で実現されます。

 

 

リュ・ホイスコーレ

リュ・ホイスコーレ

主催

民衆大学(フォルケホイスコーレ)清和セミナー実行委員会

協力

日本グルントヴィ協会、九州沖縄子どもの文化学校、

清和村、清和村教育委員会、清流館、熊本県

デンマーク教育省

 

事務局連絡先

日本グルントヴィ協会

811-3404 福岡県宗像市城西ヶ丘4-1-18 清水方

Tel/Fax.0940-35-0866

mailto:mann@asahi.email.ne.jp

 

 

 

フォルケホイスコーレ(民衆大学)とは?

 

 デンマークに150年以上前からある全寮制の生涯教育の学校で、デンマーク全国で100以上、北欧全体で400校あります。18歳以上なら誰でも学べ、4ヶ月の長期コースと数週間の短期コースの二つがあり、一校につき50〜100名程度の人数です。

 わが国にも戦前から「国民高等学校」の名前で導入され、東海大学や酪農学園大学(北海道江別市)などの建学の理念ともなっています。

 

 

リュ・ホイスコーレ

 

 ユトランド半島にあるデンマーク第二の都市オーフス市から50キロの町Ry(リユ)にあり、創立105年を誇る伝統校です。演劇、音楽、造形芸術、哲学、自然学、ジャーナリズム学の6つの長期コースがあり、また多種多様な短期コースがあります。前校長のニールス・ホイルンドが国営放送のニュース解説委員になるなど、デンマークでも高く評価されている学校です。デンマークのホイスコーレ(民衆大学)との交流を進める日本グルントヴィ協会との交流をもっています。

 

リュ・ホイスコーレのキャンパス

リュ・ホイスコーレのキャンパス

 

 

なぜ日本に来るのか?

 

 デンマークのフォルケホイスコーレ(民衆大学)にヒントを得た合宿型の市民運動的な生涯教育を進める日本グルントヴィ協会は、92年8月に福岡県上陽町で、民衆大学(フォルケホイスコーレ)上陽セミナーを開き、デンマークからのゲストを迎えて交流しました。翌93年8月にリュ・ホイスコーレ(民衆大学)で、日本人のための一週間の短期コースと5日間のスタディ・ツアーを開いてもらい、それ以来94年、96年、98年の夏に同様のコースとスタディ・ツアーを実施し、交流を重ねています。

 

 また、昨年8月、大阪青年会議所の国際セミナーで、デンマークのフォルケホイスコーレ(民衆大学)からのゲスト推薦を日本グルントヴィ協会が依頼され、リュ・ホイスコーレの教員であるクリスチャン・サミュエルセン(36)を推薦しました。そこで彼が来日し、セミナーでの講演を重ね、また天皇、皇后両陛下との謁見を果たしました。

 

 以上のような日本との交流から、リュ・ホイスコーレでも日本学コースを設置して、日本のことを学びたいという機運が起こりました。今回は9月13日(月)より、5日間、デンマークにて、デンマーク一の知日家トーア・トルストロップ(元通信社極東局長)とオヴェ・コースゴール(王立アカデミー教授)に日本の全般的な知識を学び、9月20日に来日して9月30日までの10日間、日本で学び、様々な体験を重ねます。

 

 

なぜ清和村なのか?

 

 デンマークのフォルケホイスコーレ(民衆大学)運動は、もともと農民解放運動の中で起きたもので、中央に対する地方や農村地帯、地域文化のアイデンティティーの確立を意味していました。今風にいえば、村おこし的な学校であったわけです。おかげでデンマークは地方分権、地方分散が進み、世界でも有数の民主的な社会を築いています。

 

 このようなホイスコーレの理念から、開催場所は都市ではなく、小規模な農村地帯でかつ伝統的な地域文化と豊かな自然が残る地域であることが要求されました。清和村は文楽の伝統を今に伝え、豊かな自然をもち、天文台やまた子どもの文化学校の誘致、清和子どもフェスティバルの実施などに見られるような教育文化への積極的な取り組みで知られています。また緑川清流館のような村おこしもあります。リュ・ホイスコーレのセミナーを清和村で開く必然性がそこにありました。

 

 一般的に東京などの大都会の様子が報道されるために、ヨーロッパの人々は、物質的には豊かだが、精神的にゆとりがない生活を送っている日本人というイメージをもっています。豊かな自然と伝統文化、暖かい人情とゆったりと流れる時間にふれて、デンマークの人々が日本と日本人のイメージを変えることは間違いありません。

 

 

生涯教育と国際交流の新しいスタイル

 

 わが国でも公民館運動から、宿泊施設をもつ生涯学習施設へと生涯教育が変化しつつあります。また地方を旅をしながら学ぶという農村ツーリズムやエコロジーツーリズムなども徐々に盛んになってきています。すでに150年前から合宿型の生涯教育の伝統をもつリュ・ホイスコーレの「旅するホイスコーレ(民衆大学)日本篇」は、そのような新しい生涯教育のヒントを与えるものになることでしょう。

 

 また福祉や環境政策、教育の先進地デンマークを始めとして、多くの日本人が北欧やヨーロッパに視察に行きます。しかし、彼らが日本に来て学ぶという機会は多くはありません。文化一般にみられるわが国の輸入超過は、国際交流においても同様で、こと欧米に限っては、一方的に学びにいくというスタイルが目立ちます。そういう意味では、相互に訪れ相互に学びあう対等な関係とはいいがたいものがあり、国際交流ならぬ国際一方通行になりがちです。

 

 しかし、今回は地域の日本人が主人公となり、デンマークから訪れる人々におらが里のこと、日本の文化や社会を語ります。日本もデンマークから多くのことを学んでいますが、デンマークもまた日本から多くのことを学ぶのです。語の厳密な意味で国際「交流」にふさわしい内容だと思います。このような対等な相互の交流の新しいスタイルがここ清和村で実現するのです。

 

清和文楽館

清和文楽館

 

 

 

参加者について

 

・デンマーク人参加者 23名(男12名、女11名)うち引率教員2名。

・最年少28歳 最高齢80歳(20代1人 30代3人 50代5人 60代7人 70代5人、80代1人)

・ほとんどが退職者。現役者はソーシャル・ワーカー、教員、技術者、医者など。

 

 

 

プログラム

 

以下のプログラムはデンマーク側の要望を入れてつくられました。

・わずかな期間で、いちおうの日本の地方の社会や文化のエッセンスが清和村を中心に理解できるように工夫されています。

・25日以降は清和村を離れて、阿蘇と長崎を旅し、その後はホームステイをして、交流をします。

 

 

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