第2回フレネ教育国際集会(RIDEF JAPAN1998)に参加して

坂本 卓二(東京都三鷹市)


 7月22日から10日間、世界のフレネ教育に賛同する教師、研究者、父母、子ども30ヶ国353入(うち外国人171人)「学びの地平を拓こう」と埼玉県の自由の森学園に集まり、活発に実践発表や意見交換など交流をしました。FIMEM(現代学校運動連盟)の RlDEF 98 JAPAN 実行委員会が主催したものです。
 フレネ教育は、学校と生活とが切り離されていることへの批判から、教え込みと暗記を主とする伝統的な教育の克服を目指した、子どもを主体とする自由教育であり、何よりもフレネ(1896〜1966)自身の体験を土台に公立学校の現場から生まれた学習技術です。


 フレネ教育は、自らの生活に根ざした子どもの作文の発表と討論(自由作文)からスタートします。ここで共同の研究テーマが決まり、教科書よりも子どもの表現が優先されます。共同修正された作文が子どもの手により印刷(学校印刷)され、人々と共有するためのテクストとして活用されます。表現とコミュニケーションとを組み合わせることで子どもの世界は広がり、他の地方の学校との交換(学校間通信)を通して、生活をみる目が相対化され、共同研究への動機づけとなります。


 一方では、子どものレベルとリズムに応じて学習を個別化し、自分にあった学習プランに基づいて自ら間違いを発見する過程(学習の個別化と自律)を学ぶ。こうして子どもたちは、自分のクラスの助け合いと自治の原則で学級共同組合を組織する。こうした教育技術で『自立し共同する市民」を育成しようとする教育改革運動です。


 国際集会では、このフレネ教育の実践と研究がアトリエ(作業所)を中心に報告されました。全期を通しての参加者の共同作業のロングアトリエは、「フレネ教育入門(フランス)」、「学校とゴミとエコロジー(日本、スウェーデン)」、「子どもアトリエ、ブラジル南部の民族(ブラジル)」、「和紙作り、紙を使って(日本)」など16コースが、また、自由交流としてのショートアトリエでは「ベルギーのフレネ教育(ベルギー)」、「子どもによる郷土研究_地中海地方の調査から(フランス)」、「隠喩的思考法(ポーランド)」、「コミュニテイによる教育(メキシコ)」など約50コースが用意されました。


 この他に各国からの展示、FIMEM総会、遠足、パーティ、自由交流など、フランス語を中心に、日本語、英語、ドイツ語、スペイン語など、通訳の方に大変ご苦労をおかけしましたが、参加者にとっては自由で楽しく有意義な会でした。記念シンポジウムは村田栄一さんを司会に、セネガル、ルーマニア、フランス、ブラジル、FIMEMからの報告をきき、個人の表現力とコミュニケイション能力がフレネ教育で果たす役割を世界の教師たちと一緒に考えました。


 最後に、私の感動したことを報告します。それは、塩瀬治さんのベルリンやハノーヴアーにおける環境教育をモデルに、ビオトープ(動植物の生息空間)をつくった自由の森学園の実践です。自然の復元作業を通して白然との共生を認識し、意識的に共感、公平、柔軟性、理解力、倫理的思考、行動力が、子どものなかにどのように育っていったかの報告です、教育の今回的課題の一つの解決法を見出した思いです。


 エストニアのメリカ・サッシさんのお話は印象的でした。エストニア独立の切っ掛けとなった大合唱や三都をむすぶ人間の鎖を、自国の氏族文化や言語の保存、尊厳と豊かさの連帯のために、市民リーダーを交えて学校教育に生かしていること。同時に、全人口の30%にもなる40万人もの残留ロシア人の国籍や言語問題を解決しなければならないこと。新しい国づくりを希望と自信にみちた美しいまなざしで、ちょっと誇らしげに話されました。

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