ダニとの対話 ー ウガンダの債務問題について語る
ダニ
ダニ・ナブデラ
(左端、2000年8月唐津ホイスコーレにて)
 以下の談話の記録は債務と貧困を考えるジュビリー九州(JKDWP)によるものです。

日時:2000年8月20日 19:00-21:30ごろ
場所:博多シティホテル1Fレストラン
参加者(敬称略):
(ゲスト)
ダニ・W・ナブデレ=AWE(世界教育機構副代表)、国際ジュビリー連合共同代表、ウガンダ出身
オーベ・コースゴール=AWE代表、デンマーク出身
(ジュビリー福岡)
川口英治、鈴木利明、菅原行奈、エンリ・マギー、寺嶋悠、大倉純子
(日本グルントヴィ協会)清水 満、

★各人の自己紹介のあと★

ダニさん「私はダニです。ジュビリー2000連合の共同代表ですが、ウガンダ債務ネットワークと密接に連絡して活動しています。草の根レベルで活動する"Learn as you work"(「働くように学ぶ?働きながら学ぶ?」)民衆教育研究所というNGOの所長でもありますし、世界教育機構の副会長も務めています。アフリカ研究所の代表もしています。私のふるさと、ウガンダのバリのイスラム大学の教授もしています、私はモスリムではありませんが。」

大倉「文部大臣もされていたときの事をはなしてくれませんか?」

ダ「それはずっと前のことです。1980年には"文化・地域共同体発展"省の大臣と法務大臣を兼任していました。私は高裁の弁護士です。」

寺嶋「政治亡命をしたんですか?」

ダ「はい、政情不安から。1971年にアミンが政権を奪ったのち、タンザニアに亡命しました。約9年間そこにいました。そして国に戻り大臣を務めました。その前はウガンダで一年、監獄に入っていました。というのは、1960年代私は「ウガンダ・ベトナム連帯委員会」の議長でしたから。私たちはアメリカの政策に反対して、ベトナムの困難な状況を支援したのです。1979年まで議長を務めました。私たちの組織は非合法の宣告を受けました。」

(川口さんが外国人労働者と共に労働組合を作っていると聞いて)
ダ「その人達はどのような問題を抱えているのですか?」

川口「日本の労働者と比べて労働条件において差別があります。大きな問題は外国人が安心して働けないこと。」

ダ「雇用が安定してないのですね」

川「それが一番大きな問題です。」

菅原「3K労働を外国人労働者が担ってます。しかも賃金が安い。」

ダ「日本には最低賃金はないのか?」

川「あるけど、同じ仕事をしている日本人の半分の額しかもらえない。入管の関係があるので最低賃金はもらっているが(-これはビザがある人の場合?大倉)」

菅原「建築現場では賃金未払いとか、けがしても補償がないという問題がある。」

川「ペルー人労働者の状況がそうだ。フジモリが大統領になって、たくさんペルー人が入ってきて、トヨタの工場などで働いている。日本人と同じ仕事をしても賃金が安い。」

ダ「それがさっき(菅原さんが)日本の労働組合が国際化されていないといった理由ですか?」

菅「そのような問題を自分たちの組合の問題と捉えてない。日本の労働組合は自分たちの生活を守ろうとするけど、それは同時に外国の人々を踏みつけにしていることにもなるんじゃないかなーと感じてる。」

ダニ「労働組合はそれぞれ政党と繋がりはないのですか?」

川「以前はそうだったけど、今はそうでもない。共産党と一緒に動いてる組合もある。」

ダ「その組合はどんな産業ですか」

川「色々です」
(ダニさんに日本の労働組合は産別ではなくて、企業別労働組合であることを説明する)

川「企業別組合っていうのが、日本の労働組合が社会問題に取り組めない一番大きな原因 だと思う。」

オベ「私は債務問題に関わってこなかったが、AWEのテーマと社会問題は密接に関係している。AWEは一年半前、ウガンダのカンパラでセミナーを行い、そのテーマは成人教育と紛争解決(例えば、牛を飼ってる農民達と畑を耕している農民たちの水や草を巡る争いにどのような対話による解決が可能か)であった。ケニア支部で行われた会議はコミュニティと貧困についての会議だった。」

ダニ「私の息子はペプシコーラで労働組合の代表をしています。半年前、息子に債務帳消しについて話したら、彼はそのことを組合で討議し、UDN(ウガンダ債務ネットワーク)を支援することを決めました。今ではUDNのもっとも活発なグループの一つです。

  労働者は今、一生懸命債務を返しているのだから、債務が帳消しになったときには、労働者に恩恵が行くべきです。グローバリゼーションはもちろんウガンダにも影響を与えている。多くの人が失業し、貧困に陥っている。労働組合は、そのような失業した人にも保護を与えるべきだ。そして、帳消しの恩恵はそれら貧しい人々に行くべきです。

  ウガンダは世界の貧しい国々のリストがあれば、その下から9番目か10番目位の国だろう。IMF/世界銀行はウガンダの急速な経済成長を「奇跡の経済」と呼んで世界に喧伝しました。年に10%の経済成長を遂げた。IMFは必要な金をいくらでも貸してくれた。それが全部債務になった。現在ウガンダの債務額は40億ドル。構造調整政策(SAPs)で経済システムがすっかり変えられてしまった。

 ウガンダはもともと国民のほとんどが小農民です。だれより貧しい人々が影響を受けた。急激な経済成長は、結局急激な貧困化だった。私は農村で活動していたからよく分かる。特に女性と子どもがもっともひどい影響を受ける。債務帳消しは正しい事です。UDNは債務帳消しで浮いたお金を全額貧困撲滅のために使うよう、主張しています。」

寺嶋「AIDSの問題は深刻ですか?」

ダニ「深刻です。しかし、政府がすべての情報をオープンにするようになって、みんな情報を得てオープンに教え合ったりするようになったので、少しよくなっている。しかし、相変わらず多い。

  ウガンダはHIPCsの中で、一番最初に削減を受けました。その第一段階として三年前に65万ドル(私の資料では1998年に6億5千万ドル)の帳消しを受けました。わずかな額だったが、大きな歓びでした。一家族の中で4人まで、無償で初等教育が受けられるようになりました。

  その後、世銀/IMFは拡大イニシアティヴを設定し、そこでもウガンダが最初の債務削減の対象になるはずでした。2ヶ月以内に19%の削減を約束されました。その時、他の国々が文句を言い始めました。特にドイツの議員が不満を言って、カンパラに来ました。500万ドルの大統領専用機を買おうとしていることを持ち出したのです。」

寺嶋「その飛行機は債務削減で浮いたお金で購入されたのですか」

ダニ「違います。その飛行機は普通の飛行機で、政府は工場に戻して新しいものと入れ替えようとしたら、工場からさらにお金を要求されたのです。でもそのお金の出所は違います。しかしドイツは、たとえ、削減のお金が使われたのではないにしても間違っている、債務削減を受けながら飛行機を買うのか、飛行機が買えるなら債務削減を受ける必要はないじゃないかといったのです。

 その他の国々はコンゴで紛争に関わっていることを言い出しました。ウガンダは1万人位の兵士を派遣をしているが、かれらがなんのためにコンゴで闘っているか、その理由ははっきりしていません。この戦争は議会の承認を受けていないのです。ウガンダの憲法は戦争を始めるには議会の承認を必要としています。だから、彼らが何のためにコンゴにいるのかは明白じゃない。明らかなのは、彼らはコンゴの経済に寄生している(?かき乱している?根を生やしている?)ことです。

 大統領とその兄弟と兵士、軍人たちはダイヤモンドと金を得ている。その地域はダイヤモンドと金の産地なのです。米国の議会も英国の議会も承知していた事です。三年間、ウガンダ兵士がコンゴにいても何も言わなかった。ところが、最近状況が変化して、アメリカやイギリスが「コンゴから出て行け、出て行け」と言い出した。しかし、英米が主に出て行けといっているのはジンバブエ軍の事です。ジンバブエ軍はコンゴ現政権をサポートするために滞在しているのです。 ダイアモンドはウガンダやルワンダによって奪い取られています。しかし、アメリカやイギリスは承知しているのです。

 ダイアモンドがとれる地域には、ルワンダの軍隊もいて一緒に活動しています。時には彼らは互いに戦争しているが、一緒に働くこともあります。彼らはダイヤモンドがたくさんとれるコンゴの地域をコントロールしているのです。

 2ヶ月前、デンマークの新聞に"ウガンダはダイアモンドや金を搾取していて、その金(きん)を兵士の給料を払うのに使っている。ウガンダ国内では予算の中で、軍事費はそれほど多くない。実は多額のお金を軍隊に使っていて、そのお金はコンゴから奪った金(きん)によって賄われている"という記事が載っていました。

  だから、表面的にはウガンダが戦争に支出しているお金はそんなに多くない。しかし、実際は一日に百万ドルを戦争に使っているのです。この金(かね)は予算から出たものではないので、ウガンダの防衛予算は比較的低くみえます。戦争で得られたお金で、戦争それ自体を賄っているのです。

  世界銀行は何が起こっているのか、よく知っていて、ウガンダが戦争に多額の金をつぎ込んでいることやコンゴのダイヤモンドや金を奪っていることについては何も言って来ませんでした。しかし、ヨーロッパの国々の間で意見の対立がおこり、フランスやベルギーがウガンダ軍がコンゴにいる事を問題にし始めたので、「ウガンダ軍は出て行くべきだ」という話になりました。しかし、アメリカやイギリスがまだ、ウガンダ軍やルワンダ軍がコンゴにいることを承認しているので、それほどのプレッシャーがかけられている訳ではありません。」

大倉「戦争が存在すること自体問題とは思いませんか」

ダニ「問題です。だから。この話をしているのです。戦争は様々な問題を隠蔽するために利用されています。私はあなた達が債務帳消しのために闘っているからこそ、この問題の背後にあるものを知って欲しいのです。そして、それをあなたのキャンペーンの中で、表に引き出すべきです。

  私たちはウガンダ政府とも闘っている。私たちは債務帳消しを求めているが、戦争をしていては、貧しい人々を助けることにならない。もし債務が帳消しになっても、それが貧しい人のために使われるか分からないからです。間接的の兵隊への支払いに使われてしまうかもしれない。

 しかし私たちウガンダ債務ネットワークは、これらの問題に関わらず、債務帳消しの遅れを非難します。UDNはその声明の中でこういっています。
"たとえ、大統領が専用機を買うというのが本当であっても、コンゴで戦争が行われているというのが真実であっても、債務帳消しは必要である。なぜなら、帳消しで浮いたお金は貧困の根絶と貧しい人々のために使われるからである。債務帳消しがなにより優先して行われなければならない。そうすれば、そのお金を貧困対策プログラムに使うことができる。"

  これは正しいアプローチだと思う。そして、あなた達は債務帳消しキャンペーンの支援者として、帳消しで浮いたすべてのお金がどのように使われたのかをいつも明らかにしておかなければなりません。そして、国の債務が帳消しにされたなら、再び債務地獄への道を歩まないということもはっきりさせておかなくてはなりません。と、いうのは、債務帳消し後の結果として、結局再び借金を重ねる状況を作り出してしまう事が往々にあるからです。

  ジュビリー2000国際連合はガーナの支部で"すべてのアフリカの国々は新しい債務を作り出してはならない。債務帳消しが新たな債務を生むのなら意味がない。資金を得るのには別の方法を探るべきである"(との意見が多数を占めた?--ちょっと不明:大倉)</p>

  私はあなた達にUDNと緊密な関係を確立することを提案します。そして、債務問題を詳細に見て下さい。注意深く、何が起こっているのかを見てください、帳消しの過程の中で、お金がどう使われているのかを、ここからもモニターして下さい。そして私はUDNに、私があなた達に会ったこと、そして、あなた達の債務帳消しの主張を、彼らがサポートする事にその場で同意した事を報告します。彼らはモニターすることに関心を持っています。削減された債務が、どのように貧困削減計画に使われているかを。あなた達も削減されたお金の使い道に興味を持って下さい。そして、債務問題についての将来の方向性についても、広くUDNと対話する事を勧めます。将来に渡り、どうやって再び債務が累積していくのを防ぐのか、というのは、債務はあっという間に積もって山になってしまうからです。これは、貧しい人々を苦しめることになります。

 この問題をどのように考えるか、これはまだジュビリー2000でも議論の途中です。あなた達とUDNが現在どのような関係を持っているのかは分かりませんが、やってみて下さい。UDNの人達はとてもいい人達です。ジエもカミヤも。カミヤは沖縄に行きました。ウエブサイトのURLが差し上げた資料にあります。」

「ダニとの対話その2」へつづく

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