いつもどおりわきあいあいの前夜祭

　ロシアの原子力潜水艦沈没のニュースが世界中に報じられている頃、九州南部には大雨警報が出ていた。雷雨に追われるように出水を出た私たち家族は、久しぶりの旅行に浮き立っていた。その頃、鹿児島から駆けつけた橋爪さんは、豪雨によるJRの列車の遅れに気を揉みながら車中にあった。そして、これからの出来事よりも次のスウェーデン行きに心が動いていた。時間と空間を超越した大学人橋爪の、いつものような風景だ…また、出水から参加した宮田ファミリーは豪雨の中を脱出して、ようやくの思いで車の安全を確信していた。

　そうだ、今日はせっかくの楽しい家族旅行なのだ。朝4時に起こされたけどゆっくり行っても充分間に合うだろう。そして、雷雨に追われるように出水を発った私と私の家族は、途中八女の100円ショップで買い物をしたり、フィリッピン帰りの菅原さんレナさんと合流後、海水浴に行くなどして楽しい一日を過ごしていた。まだ北部には雨雲はない。いったいどんなことが待ち受けているか、期待に胸がふくらむ。小学校のプール当番も奉仕作業もキャンセルして、3日も前に鹿児島を後にした。あたかもこれから引き起こされるであろう、嵐のような唐津ホイスコーレを目前にして･･･子どものようにはしゃいでいた。つまり誰もが、いつものように、屈託なく日常のひとこまを刻んでいた。

　ふたたびその頃、唐津は晴れだった。が、坂本さん達は、ウガンダから参加するダニ・ナブデレ教授が間に合わないかも知れないことや、会場の設営に手抜かりがないかと眠れない夜を過ごし疲れていた!!。ひょっとしたら清水満氏くらいは気を揉んでいたかも知れないが・・・。みんなを出迎えに唐津駅まで行った坂本さん達は、肝心の橋爪先生が到着していない事にうろたえた。前夜祭の準備は追っている。スケジュ一ルに余裕はない。ようやく30分遅れて到着したゲストを迎えて前夜祭の会場へ向かった。

　前夜祭の鎮西町波戸岬の少年自然の家では、唐津駅で橋爪さんを待つために30分も時間をロスした怒りに燃えていた。九州のグルントヴィ協会員はいつも熱いゼ！

　驚くほど奇麗な玄海原発の補助金施設は、グルントヴィ協会のくだけた雰囲気とは対照的に、細々と規則のうるさい役人の施設であった。さすがの坂本さんも辟易しながら、それでもトータルコーディネ一トの役回りをこなして、「宿泊費が400円だから･･ね」と笑ってみせた。やっぱりさすがだぜMOTOさんは！。

　部屋割りや施設の案内や今後のスケジュールの説明に坂本さん達が混乱している時、そんなことにまったく無頓着な福田一家と宮田一家が、ヤクザの如く悠然と遅れて合流した。フィリッピン女性(レナさん)を連れた菅原牧師などは、まさにマフィヤそのものだ。

　品位の高い協会員達は次なるセミナーの「養神館合気道」の会場へ向かう。6名の武道家の実演と講義を聞く。合気道の達人の岩本氏の熱気こもる演舞に酔い、またしても宮田ファミリ一が夫婦喧嘩のバリエーションアップにと実技指導をかって出る。

　岩本氏曰く、合気道も勉強です。こうして力の方向やベクトルなどを考えてみますとこれも物理の勉強にもなっているのです…云々。超人橋爪の目がキラリと光る。なに物理だと･･ムムやるな。達人恐るべし！

　熱気冷めやらぬ会場は続いて清水先生の「イドラット・フォルスク」に移る。デンマークの楽しいゲームにしばし時を忘れて遊ぶ。思い思いに違った人と手をつなぎ、その手がほどけないようにほぐしていく「知恵の輪」では、ほぐれた輪がいくつかに分かれたり、ほぐしてみると右手と左手が2人だけの両手だったリと、笑いと驚きのゲームだ。また、怒りや愛を各自の体で自由に表現するゲーム、それぞれが好きな役を決めその役の交替でイス取りゲームのように遊ぶゲーム、一本のロープをみんながもって鬼ならぬ牛役の人を囲んで逃げ回るゲームなど、競技を常とする日本のゲームではなく誰でもが楽しめる優劣を競わない遊びに時間を忘れていた。こうして心と体がほぐれたところで入浴タイム。いよいよお待たせの、李陽雨さんのコンサートヘつづく。