清水 満のデンマーク報告2(2003年9月)
シルケボーの湖畔
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 9月3日と4日は協会にはおなじみのクリスチャンを訪ね、彼の学校が行っているキャンプに参加しました。現在、クリスチャンはホルセンス(Horsens)のカトリック系の私立学校の教員をしており、9月1日から5日まで、全校挙げてのキャンプ週間です。日本の学校なら手間暇や効率を考えて、学年単位でやるところですが、600人もの生徒が一斉にキャンプをするというのはなかなかすごいことです。教員もたいへんだと思いますが、生徒に自覚があるから大勢でもそれほど問題が起きないのでしょう。

クリスチャンと生徒たち

 4日の夕べは家族も夕食の用意をしてきて、子どもと父母などの家族を合わせて2000人ほどの人が集まり、フェスティヴァルをします。みなで歌った後は道化師とジャグラーの大道芸(これはプロに依頼したもの)、そして教員バンドによるエルビス・プレスリーナンバーのロック演奏、生徒のバンド演奏にダンスなど、夜が更けるまで続きました。校長のダン自らリードギターで見事なロックの演奏を聴かせ、日本での校長のイメージを打ち破るものです。

子どもとその親たち

歌を歌う

エルビスになりきって演奏
(右端が校長のダン)

 私は飛び入りで来たにすぎないのですが、クリスチャンが教員にいってたらしく歓迎されて、夜は教員の打ち上げパーティにも呼ばれて、懇談を楽しみました。デンマークの教員は概してオープンで、前にもお茶会などに出たときにも気配りを感じ、いい経験をもってますが、ここでも、まるで自分もスタッフの一員のような扱いを受け、この学校のオープンさを実感しました。
 
 9月8日はグルントヴィの誕生日で、本家本元のヴァートフ(Vartov)では記念行事が行われました。グルントヴィ像の前で歌を歌い、内務大臣のスピーチがあり、その後講演会や出版物のレセプション、夜はグルントヴィの新発見の賛美歌のお披露目コンサートなどがあり、一日中にぎわっていました。誰でも無料で参加でき、しかも食事もお茶もワイン、ビールもタダです。飲み食いと講演などがいっしょになっているのはさすがにグルントヴィ運動・ホイスコーレ運動という感じです。

グルントヴィ像の前でモーニング・ソング

デンマーク・デザインの椅子にVartovのパンフ

 夕食のポーク・ステーキにかぶりついていたら、隣のデンマーク人が「私には日本人のいい友人がいるよ」と話しかけてきました。今日の会合でずっとピアノ伴奏を弾いていた人でした。話してみると何と瀬棚フォルケホイスコーレの河村正人さんがその友人で、世間は狭いなと盛り上がりました。彼の名前はラース・トフダール(Lars Toftdahl)さんで、河村さんが若き頃デンマークの農業学校に学んだときの校長の息子だった人です。校長宅によく河村さんは招かれ、家族同様の扱いを受けたそうで、ラースは河村さんといっしょに演奏会をしたとのこと。「マサトはとてもバイオリンが上手だったよ。ヴィバルディの四季を弾いてくれたことは忘れられない」といってました。共通の友人をもつということですっかり意気投合し、その後のコンサートもいっしょに行って盛り上がってました。

河村さんの友人のラース

 翌日9日は、いよいよ本番のダイアログ・セミナー「Image of Grundtvig in Asia」です。まずはインドからのアショーカ(Jadavpur 大学教授、グルントヴィ研究センター長)とフィリピンからのエディシオ(生のための財団理事長)が、それぞれホイスコーレ協会の事務局長のトーヴェ、オーフス大学グルントヴィ研究所のキム・アルネと対話する形で講演をしました。インドとフィリピンの現状というよりは、ナショナリズムをどう考えていくかという話題になり、それぞれの立場から議論を深めました。

ダイアログ・セミナーの様子

手前がエディシオ、右端がアショーカ

 私はグルントヴィ・アカデミーのヘンリクの質問を受ける形で、日本のホイスコーレ運動について語りました。ヘンリク自身が牧師だったので、日本のキリスト者によるホイスコーレ運動に関心をもち、内村鑑三から始まって、三愛教育運動に至る概説を報告しました。英語が今ひとつなので、スライドを使って説明したのがよかったらしく、この日一番受けたプレゼンテーションになりました。9月と10月の二ヶ月デンマーク中で行われている「イメージ・オブ・アジア」の企画の一つですので、欧米人のもつ典型的な「イメージ・オブ・ジャパニーズ」ということで、わざとスーツにネクタイ姿という皮肉をかましたのですが、これはわかってくれたかな?

 終わってからのパーティでも質問をいろいろ受けて、ろくに食事もとる暇がなく、あわただしいまま、次の講演の場所であるオーデンセに夜遅い列車で向かうのでした。

 

スライドで説明

清水 満のデンマーク報告1>