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クサノオウ クマツヅラ ●クララ ●グラリオサ
クリスマスローズ ●クロバナロウバイ ●クワズイモ

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 クサノオウ

駐車場に生えている

クサノオウ …… この草をモグラの心臓と一緒に病人の枕元に置くと、もしその病人が死ぬべき運命だとすれば、大声で歌い出し、もしその病人が快癒すべき運命だとすれば、涙をこぼす。

アルベルツス「植物および宝石の不思議な効力」

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この、どこの空き地にでもさいている雑草が、そんなにおそろしい毒草だとは知らなかった。それというもの毒の強さが、西洋のものと東洋のものとではだいぶ違うらしいのだ。日本ではせいぜい皮膚病に有効な民間薬草でしかないが、西欧では古代より有毒植物として知られており、「ヘレスリンを含有し、強力な局所刺激作用を有し、中枢麻痺症状を呈し、呼吸麻痺により死にいたる」という記述がある。

毒・害

薬・効

<全草、特に草の汁
何種類かのアルカロイドを含む。ヘレリスリン、ヘリドニン、ケリジメリン等

症状:ケシ毒と同様、中枢神経系に対して弱い麻痺や痲酔の作用がある。阿片がわりにも使用された。日本のものはこのヘレリスリンが少ないので毒性が注目されなかったようだ。草の汁が黄色いことから『草の黄(くさのおう)』となづけられたらしい。

草の黄色い汁が胃癌に効くと騒がれた。
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ゆでて水にさらし、食用にする。


 クマツヅラ(バーベイン、バーベナ、馬鞭草)

畑のわきで雑草化している
本当にこれ? という感じ

愛の魔力をあらわす植物

手の中で磨りつぶすと温まって、熱をおびてくるような植物(クマツヅラ)をわたしは知っている。もし君がその手で他人の手を握るならば、君に対する愛情が、その人の手に伝わって、何日ものあいだ、その人は夢中で君を恋い焦がれるようになる。そんな特質をもっている植物なのだ。私が子犬の脚を握ってみたら、子犬はしつこくわたしを追い回し、一晩中寝室の前できゃんきゃん鳴きわめき、とうとうドアをあけてやるまで鳴きやまなかったほどだ。

著者わからず

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リンゴも愛の呪いにつかわれる植物として有名だが、リンゴを使う際には呪文がいる。しかしクマツヅラには呪文がいらない。手の中でもみ、すりつぶすだけだ。

毒・害

薬・効
この草は毒草ではありませんが、園芸種のバーベナと間違えないようにしてください。
配糖体のベルベナリン、ベルベニン、βーカロチンなど。
・十字架にはりつけられたのキリストのキズの出血をとめたという言い伝えがある。『十字架のハーブ』『聖なるハーブ』ともいわれる。
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ハーブティは通経時の痛みをとる。入浴剤としても婦人特有の病に効果あり。


 クララ(苦参、眩草)

豆サヤができている

◯道中の宿屋で蚤を避ける方法
苦参という草を、生のままで敷布団の上へ置いておけば蚤は寄ってこない。この草は野山に多く生えているので、歩く途中で心がけて手折ってきて敷けばよい。苦参とは次の図のような草だ。よく見ておぼえておくこと。(図は略)

八隅蘆庵「旅行用心集(現代訳)」

毒・害

薬・効

<特に根、種
根にマトリン、種にシチシン等のアルカロイドを含む。

症状:クララという名は「目がくらむほど苦い」、というところからきているらしい。口に入れた場合、嘔吐、腹痛、視覚聴覚異常、意識不明、痙攣。ただ、このめまいや幻覚作用をわざと利用した例も。

・クララの毒性を利用して、害虫駆除に古くから使用された。現在でも自然農薬、漢方農薬として開発されている。
(葉や茎を煎じた汁を、家畜の皮膚にぬってノミ、寄生虫を防ぐなど)

・漢方薬の苦参湯は、‘しゃく’や‘さしこみ’といった急性の症状に応急薬として使用された。

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・コウゾ、ミツマタが紙の主原料として定着するまでは、クララ(苦参)の繊維を紙の原料として使用いた時があった。

植物保護液から禁止成分検出 有機農業に使用、販売停止

 散布用として有機農業などに使われていた植物保護液から、毒性が強く国内では農薬取締法で使用が認められていない成分が検出されたことが22日、農林水産省などの調べで分かった。
 保護液は「アグリクール」で、マメ科の多年草「クララ」を主原料に三好商事(三重県伊賀市)が製造、代理店を通じ約12年前から販売を開始。今月、農水省の立ち入り検査を受け販売停止を言い渡されたという。

(2007/11/22 共同通信 より)


グラリオサ(ユリグルマ)

インド、マレー地方の人々は(グラリオサの)根を粉にし、膏薬にして陰茎や膣、臍などにはり付けて催淫薬にしていました。

 根を乾燥させたものを粉にしておき、必要な時にそのつどごま油等で練って和紙や布に広げハップ剤を作ってはりつけ使用します。
 あるいは、粉を熱湯でといて薬液とし、それをガーゼに浸し少しさましてからはってしばらく置くと効果が現れます。

橋本竹二郎『使ってわかる媚薬百科』

毒・害

薬・効

<主に根茎
根にアルカロイドのコルヒチンを含む。

症状:死に至る激しい下痢、嘔吐。下血等。コルヒチン6mgで致死量。中毒症状はコレラに似る。

コルヒチンはイヌサフランにもふくまれていることで知られているが、細胞分裂の際に紡錘糸を作らせないようにする。これを利用して作られたのが種無しすいかである。

・自殺用の薬草としておなじみ

・媚薬としての使用は危険である。

 

・インド、東南アジアでは蛇の解毒剤として。また、殺鼠剤としての利用も

・通風の薬として有効。


 クリスマスローズ

遠くから蹄の音が聞こえたとき、頭(かしら)は最初の合図を出した。相手はせいぜい、ひとりかふたりだ。手下たちは弦をはった弓に矢をつがえ、ねらいを定めながら、弓矢を持ち上げて構えた。矢には非の打ちどころなく羽根がつけられ、鋭い先端には、あの女がクリスマスローズやほかのものから作ったねばねばの軟膏がたっぷり塗ってある。オオカミやキツネを殺せる軟膏だという。自分を矢尻で傷つけないように気をつけて、とあの女はいった。皮膚につけるだけでもだめよ、と。(略)

「いまだ!」彼は叫んだ。4本の弓が矢を放った。(略)

頭(かしら)が次の矢をつがえて、道にへわずかに走り出たとき、馬が1頭逃げていった。一人の男が3本の矢を受けて、地面で身もだえしている。クリスマスローズは素早く確実に効く。間違いない。

カレン・ハーパー『女王探偵エリザベス一世』



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クリスマスローズという英名は、12月ごろに咲く白花のニゲル種Hellebrusu.niger につけられた名前。普通園芸店で売られている白・ピンク・紫といったクリスマスローズは、オリエンタリス(H.orientalis)交配園芸品種で、英名はレンテンローズという。厳密にはこの両者は区別される。ニゲル種と違い、オリエンタリス種は2月下旬から4月にかけて開花する。

◆古代には有毒植物を採取するときにはいろいろのしきたりがあった模様(参・マンドラゴラ
「ヘレボール(クリスマスローズの仲間)の根を抜くとき、すぐに頭が重くなるので、前もってにんにくを食べ新しいぶどう酒を飲んでかからねばならない。とくに黒いヘレボール(ヘレボルス・ニゲル)の根を掘るときには言い伝えによると、その周囲に刀で1回円を描き、東に向って祈りを唱えながら、鷲が襲ってくるのを警戒しなくてはならない。もし堀りとった根に鷲が近づくとその根を切ったものは1年以内に死ぬといわれているから」

毒・害

薬・効

<全草、特に根
根にヘレブリンやシピリチリン、プロトアネモニンを大量に含む。

症状:嘔吐、皮膚炎、心臓麻痺。多量の摂取は即死。クリスマスのころに咲くのでこの英名がある。学名の「ヘレボルス・ニゲル」はギリシャ語で“食べると死にいたらしめる黒いもの”という意味らしい。
(このクリスマスローズこそがホメロスにおける伝説の
モーリュという植物であるという節が有る)

強壮・強心剤として、根をブランデー等につけた薬用酒を服用。


・狂気を直す薬草
・堕胎薬
・性病を直す
などの効果も昔からつたえられている。


そのつつましやかな花姿からか、昨今ガーデンの一員として人気の植物になった。


 クロバナロウバイ


Botanical garden より

ジョージはなにやらほっとしたように説明した。「スウェインは世に知られていない秘密の魔法を勉強した。そういうものがあったんですな、いまみたいなつまらない懐疑主義がはびこる以前は。実は彼はどうしても若い女たちの性格を変えたいと願っていた。つむじ曲がりで怒りっぽい彼女らを、どうにかしてやさしく、素直な、女らしい女に変身させたかった」
「やっぱり」わたしも同感だった。
「それにはぜひとも精霊たち、悪魔たちの力を借りる必要がある。そこで黒花蝋梅科のある植物を燃やして、世の中から半分忘れられてしまった不思議な力を呼び起こす術を完成させた」
「なるほど。それで、ビターナットさん。うまくいったんですか、その魔法は」
「ジョージと呼んで下さい。ええ、もちろんうまくいった。・・・」

アイザック・アシモフ『小悪魔アザゼル18の物語』

毒・害

薬・効

<全草
カリカンチン

症状:中枢神経のマヒ。痙攣。ストリキニーネ(→マチンの項参照)と似た症状がでる。同じ科でおなじみ蝋梅が「咳」や「解熱」に効果があるので、「色が違うだけだ」ということでの誤飲があったらしい。蝋梅は中国が原産といわれているが、クロバナロウバイは北米原産。

とくに毒草ということを意識せずに園芸の人気樹木として一般的に植えられている。いちごのような甘いかおりが好まれる。


 クワズイモ(海芋)

観葉植物販売パンフレットより

蜀(四川省)の山谷に生える。草は靡蕪(センキュウ)に似ている。昔、人が薬を採っていて誤ってこの草を研ぐと、刀はたちまち黄色く軟らかになって金になった。この汁を取って鉄にしたたらせると鉄は金になる。大毒があるので、人が誤ってこれを食べると紫水(不明)と化する。

『本草綱目(草部毒草類海芋)』

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『和漢三才図会』では、この「金になる」という記述に対して「ただ色が変わるだけだ」と冷静である。日本では錬金術はブームにならなかったらしい(^^ゞ

毒・害

薬・効

<全草
シュウ酸カルシウム

症状:なまのまま口にすると強烈な刺激を受け、吐き出さずにはいられない。敏感な人は皮膚が赤くかぶれたり痒くなったりする。これは他のサトイモ科の植物もいっしょである。

・太ったイモ状の茎はデンプンが多く、良く煮ると食べることができるらしい。

・いわゆる芋殻を良く焼いて傷口に当てる。

・日本でも南九州、沖縄で自生しているものをみることができる。観葉植物として人気。

毒・害 食べられないから「クワズイモ」…食べて中毒

 鹿児島県生活衛生課は2004年12月3日、食用にできないため「クワズイモ」と呼ばれる植物を食べた60代の男女4人に、唇のしびれや胃痛などの食中毒症状が出たと発表した。
 同課によると、4人は2日夜、同県姶良郡内の飲食店で開かれた宴会に参加。刺し身のつまとして一般的に食べられる「ずいき」(サトイモの茎)と間違って出されたクワズイモを口にし、まもなく発症したという。
 クワズイモはサトイモ科の常緑多年草で、国内では四国と九州に分布する。汁に触れるとかぶれやすい。
 見た目が
ずいきと似ており、同課は「食べる茎の部分だけだと、ほぼ判別は不可能」としている。今後、提供された経緯などを調べる。

ZAKZAK 2004/12/04