---い---

●イカリソウ ●イチイ ●イチハツ
●イチョウ ●イヌサフラン イヌホオズキ
●イラクサ ●インドジャボク

(←フレームがでていないときはこちらをクリックしてください)


 イカリソウ

野辺の花

植物界のバイアグラ?!

中国は四川の北部に淫羊という動物がいて、1日に100回も交尾する。それは『霍』という草を食うからだ。そこでこの草を「淫羊霍<いんようかく>」と名付けた。

昭和の初期になって、東北大医学部でこの『いんようかく(イカリソウ)』の茎葉からフラボノール配糖体のイカリインという物質を取り出し、動物実験を行った結果、イカリインを与えた雄動物の精液分泌が増量することがわかり、科学的な裏づけがなされた。

毒・害

薬・効
毒草ではありませんが、心臓の弱い人は使用しないほうがいいでしょう。

キャプション
フラボノール配糖体のイカリイン。根と茎にはアルカロイドのマグノフロリンを含む。

<強壮・強精に、イカリソウ酒を>
イカリソウ(刻む)100g
グラニュー糖100g
ホワイトリカー 一升
以上をあわせて、2〜4ヶ月してからイカリソウをこし、1日2回、1回20mlをなるべく昼間に飲む。

・本州の日本海側に多い多年草。おためしになります? 


 イチイ(アララギ)


イチイの実


近縁種の『キャラボク』は
植栽としてお馴染み

妖婆 三
「竜のうろこと狼のきば、
 魔女のミイラと大海原の
 人食いフカののどと胃袋
 闇夜にあつめた
毒ニンジン
 神をののしるジューの肝臓
 山羊の胆のう、月食の夜に
 木からおとしたイチイの小枝
 トルコ、タタールの鼻と唇
 娼婦に溝に生みおとされて
 首しめられた赤子の指も
 みんな濃くしろ、この雑炊を。
 も一つおまけに、虎のはらわた、
 釜の中身に味をきかせろ。」

三人
「ふえろ、ふくれろ、苦労苦しみ、
 燃えろ穴の火、煮えろ大釜」

           (釜の中をかきまわす)

妖婆 二
「冷やせ大釜、ヒヒの血そそげ、
 これでききめはもう大丈夫。」

シェークスピア「マクベス」福田恒存訳

-------------
ついでに『ハムレット』でデンマーク王の耳に注ぎ込んで彼を殺した“ヘボナの毒汁”というのもイチイの毒だといわれている。

毒・害

薬・効

<葉・種子
タキシンをふくむ。これは英語の毒素(toxin)の語源といっしょで、つまりは『イチイ=毒』なのである。

症状:心臓マヒ、一瞬のうちに心臓停止する。鳥はこのイチイの実を食べるが種は糞とともに体外に排出する。これを見た人間が食べられるのだろうと種ごと飲み込んでしまうと4、5粒で死にいたる。子供の事故が多い。

キャプション
イチイから成分を抽出してつくった『タクソール』というガン治療薬がアメリカで認可された。

 この木はネバリがあってち密、木目が通り、加工しやすく美しいことから、日本では、有用な木材として大事にされてきた。いちい=一位(官位)、のことで、一位や従一位の身分の者がつかう笏などが作られたために高貴な木(一番優れた木)という意味になっている。加工される木の部分に毒はない。
また歌人・斎藤茂吉らの「アララギ派」はこの木をシンボルとしている。
日本と西洋でこんなにもとらえかたの違うのも珍しい。

『一位の実含みて吐きて旅遠し』
          富安風生


 イチハツ

  いちはつの花咲いでて

     わが目には今年ばかりの春行かんとす

正岡子規    

毒・害

薬・効

<根・花葉
根にはテクトリジン、花や葉にはエンビニンといった配糖体を含む。

症状:多量に使用すると胃腸障害を起こす。嘔吐、激しい下痢。しょうぶ湯などにつかう菖蒲やセキショウと混同して間違った使用による中毒がある。菖蒲・セキショウはサトイモ科、イチハツはアヤメ科。アヤメの仲間のうちでは一番最初に咲だすことからこの名がある。

キャプション

・漢方で鳶尾根といわれるもの。食あたりの下剤として使用

・健胃剤として利用


 イチョウ(銀杏)

槇山の里の庄屋、服部五右衛門は強慾で、年貢の取り立ての厳しさで村人に恐れられていた。
 あるひどい不作の年、平六という男が総代として、年貢を猶予してくれるように頼みにいった。が、五右衛門は平六をとらえ、庭のイチョウの木に逆さ吊りにして松葉いぶしにかけたのだった。平六は苦しみ悶え、「ひと思いに殺せ、7代まで祟ってやるぞ!」と叫んで息絶えた。
のち、五右衛門は乱心し、イチョウの枝で首を吊って死ぬ。服部の家も呪い通り7代で絶えた。
 しかし、その後も雨が降るさびしい夜、このイチョウはものすごい声で笑った。聞いた人は震えが止まらず熱を出して寝込んでしまう。村びとは平六イチョウと呼び、根元に小さな祠を作って亡霊を祀った。

高知の昔話より 

毒・害

薬・効

<種子
根外種皮…フェノール化合物(ギンナン酸、ビロボール)
仁…ヒスチジン

症状:ぎんなんの果肉がかぶれを起すのは有名だろう。ひどい人は水泡を生じてただれることがある。可食部分は、ヒスチジンがふくまれているために短時間で大量に摂取すると嘔吐・下痢をおこし、重症の場合は呼吸困難、死亡もある。一度に30個以上食べないこと。子どもの事故が多いが、大人の事故がないわけではない。

・葉が高血圧等の治療になるというので、イチョウエキス、イチョウの葉茶などなどが出回っている。

・神社などで多くみかけるのは、火事になったときイチョウが水を吹き出すという言い伝えがあるためとか。また葉を乾かしたものはしおり兼用の防虫(教典等を喰う虫よけ)となるためとか。

・イチョウの葉っぱの形から「雄木ははかま、雌木はスカート」と教わったが、根拠はあるのだろうか?


 イヌホオズキ 


花は1cmにも満たない
小さいもの


よく似たヒヨドリジョウゴと違い実は黒くなる。

台湾の山地にいったときのことです。山の人々が一生懸命にこの植物を摘んでいました。てっきり薬にするのだと思って尋ねてみますと、食用にするとのことです。毒草なのでたいへんだと思いましたが、このへんでは大切な野菜だというのです。やわらかい茎や葉をスープに入れた料理は、これまでに味わったことのないおいしいものでした。料理する時によくゆでこぼすのがコツなのだそうです。

カラーブックス『毒のある植物・食用や嗜好品になる有毒植物』

-------------
群馬、埼玉の農村地帯でごく普通に目にする事ができるのは、救荒作物としての用途も多かったからだろうか。ベラドンナなどのナス科有毒植物とほとんど同じような毒を持つこれが知らない間に庭にはえてきたりするのでちょっとどきどきする。

毒・害

薬・効

<全草
アルカロイドのアトロピン、ソラニン、サポニン。

症状:嘔吐、下痢、運動中枢、呼吸中枢のマヒ。茹でこぼすと毒素が弱まるらしいが、不用意な使用はやめたほうがいい。

キャプション

・漢方薬の『リュウキ』 全草を乾燥させ、利尿解熱に利用。

・竜葵酒はこの乾燥させたものをお酒につけた薬用酒である。


 イラクサ(ネトル)


同じ仲間のカラムシ

太陽が牡羊座の位置にある時(=3/21〜4/20ごろ)、病気予防のため、雌のイラクサ(=大きなイラクサ)を食べるとよい。

『古代ローマ人の調理ノート』/原典:アピキウス

-------------
ネトルは冬の保存食が終わる頃に食べる最初の新鮮な青野菜。つまり、古代ローマ版春の七草といったところであろうか。
イラクサの毒はその草全体をおおう刺毛のみにある。しかも火を通せば問題はない。刺の困難を除き薬効を摂取するさまは、まさしく冬の厳しさを乗り越え春の喜びを手にする姿を具現しているともいえるかもしれない。

毒・害

薬・効

<刺毛のみ
蟻酸、ヒストニン

症状:刺にふれた場合、神経に障る痛み、皮膚にぷつぷつと刺し跡が残り赤く腫れる。触ると痛い草=イタクサ、からその名がきている。

・貧血、花粉症などに効果ありとして、ネトル(乾燥葉)のハーブティはおなじみ。

・同じ種類のミヤマイラクサは東北地方ではアイコと呼ばれ、人気の春の山菜である。茹でて酢醤油がおいしい。(アイコのアイは刺すの意)


 インドジャボク(印度蛇木)


使用部位は根っこ。
蛇のようにくねくねしているという。

ある日、ある製薬会社から精神病に効果があるという薬が病院にもたらされた。本当に効くかどうかを確かめてほしいという依頼であった。実は精神病に効く薬の治験依頼はそれまでになんどもあった。しかし本当に効果があった薬は1つもなかった。(略)「精神病に効く薬なんてありえない」という、薬にたいする不信感がほとんどの精神科医の胸を占めていた。 
 ところが、この新しい薬は効いた。この病院のなかでも特に騒がしい患者の多い病棟で、この薬は患者たちをすっかりおとなしくしてしまった。この薬を服用したおかげで、8年ぶりに外に出て青空の下を歩く事ができたと泣いて喜んだ患者もいた。

山崎幹夫『薬の話』

-------------
この新しい薬の正体がインドジャボクの成分レセルピンだった。

毒・害

薬・効
  

・子どもが蛇に噛まれた時の薬として。

・インドの伝承医学『アーユルヴェーダー』によると、乾燥した根を粉にして精神病の治療や、不眠症、高血圧などに使用。

・1952年には有効成分としてレセルピンが単離された。