<<裏庭の動物たち>>

裏庭には妖しげな植物を好む妖しげな動物がしばしばやってくるのでございます。そういったものを愛でるのも、ひとつの楽しみでございます。

イモリ ガマガエル


イモリ

「妻と結婚してからもう40年にもなるが家内め息子も娘もてんで生みおらんのだ。ところが世間の衆はあれがわしの子をみごもらんのは『あんたの種が薄いからだ』っておっしゃるのだ。それでわしの種を濃くするものがないかとおもって捜しまわったが、どうにもみつからんのでなあ」

「大旦那様。手前、そのお種を濃くする薬ってえのをもちあわせてますんで」(中略)

そこで親分は、ハシーシュ売りのところへでかけていき、精製アヘンを約75g、さらにクベナ、シナモン、グローブ、しょうずく、しょうが、白胡椒、イモリ、などを若干づつ仕入れていきました。それからこれらをすべてつき砕いて上等のオリーブオイルで煎じました。それから約100gのローズマリーと杯に1杯のコエンドロの実を買ってきて、柔らかにしたうえ、すべてをはちみつでこねあわせて練り薬を作りました。

「これが種を濃くするお薬ですじゃ。でもこれを服用する前に、羊肉や、家鳩の肉にたっぷりと辛味薬味をきかせたものをめしあがることですな」

アラビアン・ナイト「ほくろのアラディン物語」

毒・害

薬・効

<イモリの分泌物>
フグ毒と同じテトロドトキシン。成体の皮膚から毒を含む分泌物を出すので他の動物にたべられることはめったにない。

症状:目に入った場合、激痛を感じる。水でよく洗い流すこと。

「惚れ薬」として調合される催淫剤には必ず入っていた。
日本でも古来より、イモリの黒焼きなど、強壮剤として利用されてきた。今でも山間の温泉地などにいくと、宿で同じ仲間のサンショウウオの串刺しなど干物のようになったのを供されることがある。


 ガマガエル

幻の逸品となるか?

元祖『がまの油』
れっきとした医薬品
他の“がまの油”とは違う

ところが、1999年末この元祖『ガマの油』の製造元が倒産してしまい、消滅の危機にさらされている。

ご用とお急ぎでない方はゆっくりと聞いておいで。

遠出山越え笠のうち、聞かざる時は物の白黒出方善悪がとんと分からない、山寺の鐘がゴーンゴーンと鳴ると言いども童子来って鐘にしゅもくを当てざればとんとカネの音色がわからない。

サテお立ち会い 

手前ここに取りいだしたるは筑波山名物ガマの油、ガマと申してもただのガマとガマが違う、これより北、北は筑波山のふもとは、おんばこと云う露草をくろうて育った四六のガマ、四六五六はどこで見分ける。

前足の指が四本、後足の指が六本合わせて四六のガマ、山中深く分け入って捕いましたるこのガマを四面鏡ばりの箱に入れるときは、ガマはおのが姿の鏡に映るを見て驚き、タラーリタラーリと油汗を流す、これをすきとり柳の小枝にて三七二十一日間、トローリトローリと煮つめましたるがこのガマの油。

この油の効能は、ひびにあかぎれ、しもやけの妙薬、まだある、大の男の七転八倒する虫歯の痛みもぴたりと止まる、まだある出痔いぼ痔、はしり痔、はれもの一切、

そればかりか刃物の切れ味を止める。
取り出したるは夏なお寒き氷のやいば、1枚の紙が2枚、2枚の紙が4枚、4枚の紙が8枚、8枚の紙が16枚、16枚が30と2枚、32枚が64枚、64枚が一束と28枚、ほれこの通り、ふっとちらせば比良の暮雪は雪降りのすがた。

これなる名刀も一たびこのガマの油をつける時はたちまち切れ味が止まる、おしてもひいても切れはせぬ。と云うてもなまくらになったのではない、この様にきれいにふきとるときは元の切れ味となる。

サーテお立ち合い

この様にガマの油の効能が分ったら遠慮は無用だ、どしどし買って行きやがれ!

山田屋薬局「陣中膏」添え書き

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四六のガマは実在する。『おんばこそう』というのはムラサキオモトだとか、オオバコだとか、霊芝だとか、説はさまざまである。

毒・害

薬・効

<ガマの分泌物
レジブホゲニン。ガマの目のうしろにある毒腺から刺激を与えられると分泌されるもの。
最近の研究では、その中に「5-ヒドロキシーNN-ジメチルトリプトアミン(=ブフォテニン)」とよばれるLSDの構造と良く似た物質が含まれているのがわかったらしい。

症状:急速な衰弱と心臓停止にいたる呼吸停止。痙攣、嘔吐。傷口の上におかれると痛烈な痛みをひき起こす。普通の肌につけてもぴりぴりとした刺激を感じる。『矢毒ガエル』などというものも世界には存在する。幼い時、「ガマガエルにさわると手にイボができる」と聞いていたこともあながちうそとはいえないようだ。

ではなぜガマの油はキズ薬なのか?

米国の生理学者、小児科医のマイケル・ザスロフ博士は腹部の手術を受けたアフリカ蛙の傷口が化膿せずに治る事に気付いて蛙の皮膚から分泌されるオリゴぺプチドが抗菌性を持つ事を見出して、抗生物質マガイニンを発見した。
また、かき混ぜる際に使用している柳の枝には痛みの緩和に有効なサリチル酸が含まれおり、これより鎮痛剤アスピリンが発見されている。
ゆえに“ガマの油”は傷口の化膿を止め、痛みを緩和する成分を含むのだ。

漢方にはガマの耳下分泌物をもとに作られた『蟾酥(せんそ)』という薬があり、強心や各種炎症、おでき、歯痛、痔に外用する。

冬眠中に「ガマの油」搾取 ロシア極東で大量密輸を摘発

ロシア極東・沿海地方の税関でこのほど、トラックの積み荷から49キロにのぼるカエルの油が押収された。当局は中国市場を狙った「ガマの油密輸犯」の組織的犯罪とみて捜査している。

イタル・タス通信によれば、これほど大量のカエルの油が国内で摘発されたのは初めて。専門家は約10万匹のカエルから搾り取られたとみている。おもにタイガ(針葉樹林帯)の沼地や樹木で生息するツチガエルらしい。

同地方では、中国の業者の注文に応じ、カエル捕りで生計を立てるロシア人が少なくない。別の希少種のカエルの油なら、1キロあたり数千ドルの高値で取引されることもあるという。中国で薬などに用いられる。

冬眠中のカエルに電気ショックを与えて大量に捕獲するという乱暴なやり方で、同地方の行政当局は「タイガの自然は取り返しのつかない損害を被りつつある」と警告している。

(2004/03/30 asahi.comの記事より)

死んだガマの蘇生法→「オオバコの項