鎌倉プロバスクラブ卓話

’08北京オリンピック水泳水着問題

山重美登士

2008/7/8

鎌倉プリンスホテル

法政大学水泳部の顧問をしています。相手はいつも18才程度で変らないのですが私だけ年取ってもうじき還暦です。水泳連盟でオリンピックの選手選考にかかわっています。

今日のテーマはスピード社のレーザーレーサーという水着問題です。6月10日に選択の自由化をミズノ、デサント、アシックスのオフィシャル3社にOKしてもらって沈静化しました。

レーザーレーサーの技術的な仕組みはわかりませんが、たいしたものであることは事実です。ご婦人の靴下と同じくらいの厚さの素材ですが、まったく伸縮性がありません。したがって着用するときには筒のなかに体を押し込むようにします。男の子はなんとか自分で着られますが、女の子は3人がかりで30-40分かかります。なれても10-15分はかかります。体が5センチ位縮じむといいます。北島の言によればサポート効果で曲がった膝を伸ばさずとも伸びてくれるため、水着が泳いでくれているという感じさそうです。そのため、疲労がすくなくてスタミナが残るのだそうです。普通の人はスピード社の水着を着ると泳げませんが、鍛えた選手は泳げるのです。水着が筒となって背骨を伸ばしてくれるので背泳には理想的です。記録をみれば歴然です。それくらい革新的な水着です。

さてオフィシャル3社は毎年、選手・役員も含め一人1回10万円、50人分相当のウェア、靴、バッグを年10回程度、提供してくれているのです。連盟としては実質5,000万円の費用をオフィシャル3社に負担してもらっていることになります。スピード社の水着を採用すればこのギブアンドテークが成立しません。そこでオフィシャル3社と連盟の役員が会合をもって今回の北京オリンピックだけ例外としてくれるように要請しました。M社だけすこし手間取りましたが、結局、受け入れられました。オフィシャル3社とは違約金契約などは存在していません。

スピード社は4年かけて開発したそうですが、ドイツのアディダスや米国のメーカーはスピード社を超える水着を開発中だそうです。オフィシャル3社が今後どのくらい肉薄できるかはまだ不明です。ミズノはスピード社の日本の代理店だったのですが、レーザーレーサーの開発に関してはまったく知らされておらず、代理店契約は切れていました。FINAルールではコーティングは禁止されていましたので日本メーカーはこれに従っていました。しかしスピード社はFINAに働きかけてルールを変えさせました。この変更は質問すれば秘密ではないのですが、公表されないため、日本メーカーは遅れをとったということです。一着7万円ですが、破れたら使い物になりませんので費用がかかります。スピード社はレンタルしてくれますので誰でも使えます。

メダル予想をしますとアテネでは12個でしたが、北京では10個でしょうか?もっと出るかもしれません。

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August 20, 2008

Rev. June 3, 2009


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