鎌倉プロバスクラブ 卓話

日本の常識、世界の非常識

堀清弘

2019/03/8

鎌倉プリンスホテル

日本の若者は諸外国に 比べ将来に希望をみいだせていない。つらつら考えるに日本の労働分配率は諸外国に比べて極端に低い。若者は長時間労働し、休暇も採らずに働いてもだから若 者はビンボーなままで、消費に回せる収入が毎年減りつつある。安倍首相のトリクルダウン論はウソ八百。

日本の企業の労働分配率が低いのは戦後進駐軍に労働組合を作れといわれて急遽企業内組合を作り、年功序列、終身雇用制度を作ったつけがまわったからだ。低 成長時代にはこれが資本主義的搾取の道具となっている。最低賃金と生活保護所得がOECD諸国中最低である。にもかかわらず日本企業の配当性向は低く、時 価拡大より企業の継続が第一であるため、株式運用資産形成が難しくなっている。定年後の就労者の7−8割が生計維持目的で欧米の3割とくらべて高い。高齢 者就労もも高い。

英国や米国に住んだ経験からいうと日本の宅地は碁盤目に沿って住宅を詰め込み過ぎで空隙率が少なく密集していて低品位である。これでは人々は人間としての 幸福感は得られない。次世代に良質な環境を残そうという見識がなく、ただただ貧しい発想である。英国にはアメニティ・アクトという法律があり、市場価格で は評価できないものをふくむ自然、歴史的文化財、街並み、風景、徒歩圏を重視する姿勢、地域文化、コミュニティの連帯、人情、地域的公共サービス、交通の 便利さなど生活環境の維持を義務つけている。自宅の庭にある樹木ですら町の調和を考えて許可なく伐採することとはできない。直線状の街並みに曲線をいれ、 ゆったりと建物を配置するマレーシアの街作りのほうが優れている。なぜそうなのか?日本は英国の植民地にならなかったので彼らに考え方や価値観を学んでい ないため、いつまでたっても唐の長安が街づくりのモデルのためだろう。

明治以降日本は独立して機能する都市をつくっていない、ただ裾野が広がっただけだ。たとえば日本では多摩ニュータウンなどをつくったが、都心への通勤者の ベッドタウン提供が目的で街の内部に職場がないから、親から家を引き継いでも近くに職を得られず、家は一代限りで空家になり、過疎化し、発展しない。英国 の産業政策は地域雇用政策である。

米国でもほとんどの住宅は木造だが、中古市場があり、中古住宅にも価格がつくので若者はローンを組んで購入できる。しかし日本では中古住宅に価格はつか ず、それを抵当にして銀行から金を貸りられないので若者は家をもてない。これは日本政府が経済はフローとみていてストックとは考えないで制度設計したため だ。政府はフローを増すために常に新しい家を作らせようと制度を作ったからだ。しかし若者への労働分配率は低く、この政策は破綻した。若者に金がまわらな いので若者は自分の家ももてず、子供ももてず、人口はますます減り、未来に希望を見いだせない恐ろしい社会になりつつある。

挙句の果てに社会の寛容さと非腐敗度が低い。

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March 9,  2019


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