福島原発事故による環境汚染の現状と今 後の問題点

3年間の研究から見えてきたこと

2014/3/14 

村 松康行

学習院大理学部の日本で初めて14C年代測定を行った木越邦彦先生の弟子の松村博士のお話しをうかがった。木越邦彦先生は戦中に仁 科博士が原爆を開発しようとしたときウラン分析を担当した学者である。戦後は14C年代測定の権威となった。木越先生は試料中の14C の数そのものを直接数える加速器質量分析法(AMS法)を開発した。AMS法では14Cの崩壊を待つ必要がないので測定時間が短く て済み、しかも試料中大量にある14Cの数を直接測定するので効率が良く、試料量がβ線計数法の約1000分の1で測定できる。こ のため、今までは採取できる量が少なくて測定ができなかった試料や、貴重な文化財など破壊することを最小限にしたい試料の測定ができるようになった。

村松康行氏はこの手法をつかって福島事故時放出された131Iの汚染マップ再構築に取り組んでいる。131I の半減期は8日で、すぐ消えてしまって測定値は少ない。そこでβ崩壊する半減期が15.5x106年の極微量ある129I をAMS法で測定してマップ作製し、今後の甲状腺発病予測をしようというわけ。着々と成果が出つつある。これによると福島第一の南側にも結構ヨウ素はまき ちらされているようだ。



左は再構築された131Iの汚染マップ


129Iは宇宙線と大気中のキセノンとの反応などで極少量ながら自然界でも生成されており、地球化学的試料の年代測定にも利用が可 能。米国、ドイツ、日本などにおいて再処理施設周辺の土壌中の129Iレベルが高い傾向にあることが知られている。これは大気中に 放出された129Iが植物に沈着したり、降雨にとけ込み土壌に加わったものである。ヨウ素は土壌に吸着されやすく、時間と共に蓄積する傾向にある。129I のレベルが高いといっても現状では安全性に問題はない。しかし、長期間を考えた場合、土壌環境を中心に、分析データを増やし、またヨウ素の吸着・溶解等の 特性を調べる必要があるという。また、六ヶ所村の大型再処理施設が稼働する前に周辺環境試料のバックグラウンド値をとっておく必要もある。

村松康行氏は、以前は地殻を構成する多数の試料 (マントル物質、火成岩、堆積岩、土壌、生物等)について精度の高い分析を行い、ヨウ素の地球化学的分布について基礎的なデータを提供している。また、わ が国の房総半島の地下から大量のヨウ素が産出(世界の3割以上を生産)して いることに着目して、129Iを用いた放射能年代測定 を実施し、その結果ヨウ素の平均年代は約5000万年前と古いことを見出した。この結果は、堆積物中の海藻から溶けだしたとする従来のヨウ素の起源説では 説明できない。この結果に基づいて、博士はプレートの沈み込みに伴い前孤域にヨウ素が濃縮したとする新説を提唱している。

さて茸にセシウム濃度が高いのは菌糸が汚染された落ち葉の表層に根をはるためと考えられるという。そういう意味で米は根を深く張るので少ない。山菜のコシ アブラも根が浅く広がっている。新茶の芽の汚染は古い葉で吸収されたものが枝経由で移動するため。

日本の家屋は木造のため、ラドンが少なく、放射線にさらされるレベルは低い。その代わり医療被ばくが高い。

鎌 倉プロバスクラブへ

March 16, 2014

Rev. March 20, 2014


トッ プページへ