鎌倉プロバスクラブ卓話

オペラあれこれ

小川恭助

2009/10/11

鎌倉プリンスホテル

今月の卓話者の都合で私がピンチヒッターで話すことになりました。

今日は私の好きな音楽の話しをしようかとDVDを持参しました。同じ演目でも演出によって全く感じが違ってしまうことを実感してもらいたいと思います。

今年は不況の影響のためか日本で上演される有名オペラの数が極端に減っております。めぼしいものはミラノのスカラ座の引越し公演でしょうか。引越し公演は毎年2-3回はあったのですが、今年はこれだけです。演目はアイーダとドンカルロです。一番高い席が6万7,000円です。一番安くて1万5,000円です。チケットはあまり売れなかったようです。引越し公演では総勢400人がやってまいります。1人当たり100万円かかるとして4億円の人件費に大道具が1億円かかる勘定となります。9公演で5億円稼げるとしても赤字ということになります。キャノンなどのスポンサーが赤字を埋めることになるのでしょう。ザルツブルグ音楽祭の入場券は2万5,000円ですから日本の公演は大分高いという感じです。コロナ劇場でドンジョバンニを観た時は土間で7,000-8,000円でした。歌舞伎座は1万8,000円です。来年4月プラシッド・ドミンゴが来ますが5万2,500円です。年末にはN饗がクルト・マズア指揮で少年合唱団と競演し第9を演奏しますがこれが1万3,000円です。クルト・マズアは1989年10月9日の「月曜デモ」に際して、東ドイツ当局へ武力行使を避け、平和的解決を要望するメッセージを出したことで、国際的に音楽外の分野からも注目を集め、統一ドイツの大統領候補にも挙げられた方です。

以上でお分かりのように特にオペラは金がかかるため、最近はローコストの演出がなされるようになりました。

まずベルディーの「椿姫」(La Traviata)の伝統的な演出をお見せしたいと思います。2002年にジュゼッペ・ヴェルディ劇場で上演されたもので演出はフランコ・ゼッフィレッィ、指揮プラシッド・ドミンゴです。

これはちょうど「乾杯の歌」の場面です。舞台と衣装をご覧ください。ヴィオレッタを演ずるステファニー・ボンファデッリは肺病で死にそうな感じです。

次は「闘牛士の合唱」の場面です。闘牛士は本職を連れてきています。

同じ「椿姫」ですが2005年ザルツブルグ祝祭大劇場で上演されたものです。現代版の「乾杯の歌」の場面です。ヴィオレッタを演ずる今売り出し中のアンナ・ネトレプコは肺病で死にそうもありません。舞台には赤い長椅子だけです。

次は新しい「闘牛士の合唱」の場面です。舞台装置だけでなくストーリーまで変えてしまうこともあります。

劇場公演よりDVDを媒体にするようになりますと歌い手に求められるものは歌唱力だけでなく度胸と容姿が重要になってきました。度胸とは濡れ場を演じる度胸という意味です。DVDはアップで撮影されますから見た目もよくなくてはならないのです。1960年代の名ソプラノはDVDにすると観るに耐えないものとなります。アンナ・ネトレプコは美声で、美貌で大胆ということで売れっ子になりました。

次は2005年のザルツブルグ音楽祭でのモーツアルトのドン・ジョバンニを観てもらいましょう。下着メーカーとタイアップした演出で話題になったものです。恋人を裏切りながら不倫したいとあからさまに歌う場面です。

かなり色っぽい場面を観てみましょう。退廃的な踊りが話題になった場面です。舞台装置は鏡で衣装は裸ですから衣装代も不要です。ザルツブルグ音楽祭という権威あるものでもやくざが出てきたりでかなり変わっております。

サントリーホールで行われたフィガロの結婚は歌手は指揮者をみることができませんのでモニターを見て歌っています。

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November 9, 2009


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