言語録

シリアル番号 日付

1387

2010/11/29


名言 独裁とは繰り返し語ること、あるいは繰り返し語る立場に身を置くことである
言った人、出典 「ドグマ人類学」を提唱しているフランスの法制史家にして精神分析家ピエール・ルジャンドル(Pierre Legendre 1930年-)
引用した人、他 今日の朝日の書評に佐々木中著の「切りとれ、あの祈る手を」があった。結構おもしろそうなので買って読んだ。さて佐々木中はフランスで「ドグマ人類学」を提唱するルジャンドルの研究家である。ルジャンドルの新しい著作『世界の領有 マネージメントの帝国』の紹介があった。

『世界の領有』は、教皇グレゴリウス7世が打ち出した回勅 Dictatus Papae を貫く基本理念である。地上におけるキリストの代理人としての教皇の地位を確定し、カトリック内部におけるその決定の絶対性と同時に、世俗権力に対する優位をも述べたこの回勅に対する驚きは、あたかも「世界を鋳直す」がごとし、という表現のうちに書き留められた。

dictatus は動詞 dictare から派生した名詞であり、dictare は「繰り返しいうこと」、そのようにして「命じる」ことである。語形の類似のとおり、「独裁」(dictature )の由来にほかならない。

独裁とは繰り返し語ること、あるいは繰り返し語る立場に身を置くことである。本当にそうなのだ。教皇は領土をもたない。つまり、かれは本当には何ももっていないのだが、しかし、だからこそ、「世界」 、本当にはどこにもない「世界」を領有するのだった。言葉をつうじて。それがまた、真の意味での「支配/帝国(imperium)」ということである。そのうえで、マネージメントの支配は教権の支配と同じことをしている、とルジャンドルはいう。

 

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