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1170

ソーラーセル(太陽電池)の方式

2007/12/06

ソーラーセル(太陽電池)はphotovoltaic cell PVとも呼ばれ、半導体の光起電力効果を原理とするもので太陽光を直接電子の流れに変換できる。

結晶シリコン型:ソーラーセルの第一世代は表-10のように高純度シリコン ・ウェィファーの上に不純物を ドーピングすることによってp型、n型不純物半導体を形成する光ー電子変換デバイスです。電子がバンドギャップ(禁制帯)を越えて遷移するにはバンドギャップに波数も合わせる必要のある間接遷移型の光ー電子変換デバイスです。情報処理に使われる電子デバイスと同じく製造装置には真空装置を使います。 間接遷移型のため光吸収係数が低く、厚いシリコン層を必要とするという欠点がありました。このため高価で現時点で大量に市販されているセル単価は470円/W(シャープ)程度です。ドイツの急激な需要の伸びにより 、シリコン価格が高騰してしまいまい、苦境に陥りました。 結晶シリコンは温度が上昇することで出力が低下します。これは高温において禁制帯幅(シリコンでは1.2eV)が減少することで出力電圧が低下するためです。

薄膜型:シリコン価格高騰に対応するため、第二世代としてガラス基盤上に100オングストローム程度のシリコンの薄膜を形成する薄膜型が開発されました。薄膜は真空蒸着法、化学気相成長法(CVD)、スパッタリング法などを使っています。スパッタリング法は真空中にアルゴンガスを入れて基盤とシリコン・ターゲット間に直流高電圧を印加し 、イオン化したアルゴンをターゲットに衝突させて弾き飛ばしたシリコンを基盤に生膜させるものです。高純度シリコンの使用量は1/100になり、価格も250円/W程度に下がりました。サンヨーは150円/Wを目標に開発をすすめております。 しかし真空装置をセルの製造使うことが価格低下の妨げになっております。 アモルファスシリコンでは高温において電圧低下の影響が少ないため、モジュールが高温になる地域では有利になります。

金属化合物型1970年中ころ(Copper Indium Selenide;CIS、カルコバライト系)薄膜ソーラーセルが発明されました。化合物系は電子がバンドギャップを越えて遷移するとき波数を合わせる必要のない直接遷移型半導体 です。間接遷移型のシリコンに比較して1桁以上も光吸収係数が大きく、薄膜化に適しておりました。2005年にDr. Jehad AbuShamaによって銅-インジウム-セレンと銅-ガリウム-セレンの固溶体である(Copper Indium Gallium Selenide;CIGS)金属化合物型半導体が提案されました。CIGSは物質で2成分の濃度を変えることができます。 禁制帯幅を自由に変えられることから将来の多接合型への展開も期待される。これがCIGS薄膜の第三世代のソーラーセルといわれるものです。本法の弱点はインジウムの資源量という説もありますが資源は豊富との見解もあり分かりません。ホンダ ・エンジニアリングはCIGSソーラーセルを2007に市販開始しましたが半導体素子やハードディスクは真空装置の中で製造するものという固定観念に執着してコストダウンに成功しませんでした。しかしシリコンバレーの連中は自由な発想で旧式ハードディスク製造法を転用して溶液塗布による薄膜製造という発想でコストダウンに成功しました。昭和シェル もNEDOの委託研究で開発した製造法ですから真空装置を使いコストダウンは困難と想像されます。

図-23 CGISナノ粒子型ソーラーセルの構造

2008年にサンノゼのベンチャーであるマノソーラー社(Manosolar Inc.)はCIGS製品を110円/W(1$/W)という価格でドイツ国内で製造し、ドイツマーケット向けに出荷を開始しました。現時点ではこれが最も安価なソーラーセルです。2009年までの製品は売却済みとのことです。 マノソーラー社が開発した製法はCIGSのナノ粒子を溶液に分散させたインクを輪転機の要領で基盤・電極・光反射板を兼ねる 金属フォイル上に塗布して薄膜を形成し、その上に電極となる透明電気伝導性薄膜をコートするという安価な製法です。そして品質のばらつきは電気性能が異なるセルを選別してマッチングさせてパネルを構成す るという方法で対応しました。運転温度は-40oC-+80oC、寿命も25年保証です。製造担当役員はIBM出身です。 デュポンや三井物産が出資者に入っています。周辺機器が30%として143,000円/kWの建設単価となります。そうするとセルの発電単価は13.6円となります。LNG火力発電装置をバックアップとするインフラコスト3.2円を加えても複合単価は16.8円となり、風力と同程度になります。今後急速に普及するものと考えられます。

色素増感型1991年にスイス連邦工科大学(EPFL、 École Polytechnique Fédérale de Lausanne)のグレッツェル教授(Michael Grätzel and Brian O'Regan)らが提案し、特許を取得した次世代ソーラーセルでDye-Sensitized Solar Cell, DSCと呼ばれています。別名湿式太陽電池グレッツェル電池とも呼ばれます。透明な導電性ガラス板に半導体である二酸化チタン、酸化亜鉛粉末を焼付け、この粒子に色素を吸着させた太陽電池。ヨウ素溶液を介して透明な導電性ガラス板を対極にする電気化学的なセル構造を持つのが特徴です。電解質溶液の酸化還元反応を伴うことから“光合成”に例えられます。 永年研究されていますが、未だに実用化には成功しておりません。

有機薄膜型:有機半導体のp-n接合の光起電力効果を原理とする次世代ソーラーセルでいまだ4%程度の低効率です。まだ研究途上で驚きのニュースが期待できそうです。

量子ドット型:量子効果を用いた太陽電池が検討されています。大きさが数nm〜数10nm程度の量子ドット構造を規則的に並べ、この量子ドットの間隔を調整することで、1基の半導体のバンドギャップ中に複数のミニバンドを形成できます。これにより、単接合の太陽電池であっても、異なる波長の光をそれぞれ効率よく電力に変換することが可能になり、変換効率の理論限界は60%以上に拡大します。ただ現在の一般的な半導体プロセスよりもさらに微細な加工プロセスの開発が必要となります。米国などで開発が進められているとのことです。ただ製造コストは高くなりそうですね。

システム価格:

2,000,000円/kW @ 1994  

680,000円/kW @ 2006  (発電単価 70円/kWh 相当)

電力会社の電力購入価格:

84円/kWh ドイツ

20円/kWh 日本

Rev. April 29, 2008


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