メモ

シリアル番号 表題 日付

140

アレルギー

94/08/06

●脊椎動物になって生物は微生物感染から身をまもるために抗体(免疫グロブリン)を作る能力を獲得した。抗体はB細胞というリンパ球が産生するY型の糖タ ンパク質である。これは微生物の細胞膜にある特定のタンパクを認識して結合して、白血球やマクロファージなどに微生物を認識・貪食させるための標識とな る。抗体にはIgG、IgM、IgA、IgD、IgEなど各種ある。このうちIgGは血漿中に70-75%含まれ最も多く、IgEは0.001%以下であ る。

●ヒトの免疫システムが完成したのは2億年前。ほ乳類にはは虫類のようなウロコや固い皮膚がなく、寄生虫など外敵の攻撃を受けやすかった。しかし新しい免疫システムを獲得したほ乳類は、IgEと呼ばれる抗体で外敵を撃退する仕組みを構築した。

●IgE系を獲得する前は細菌に対抗するためのIgG抗体を作る免疫系をもっているだけだった。

●最近花粉症・ぜんそく・アトピー・ヘイフィーバーなどのアレルギー疾患が増えている。急増の原因は花粉・ダニの増加、大気汚染と考えられてきたが、これは原因でなない。これはIgE系が過剰反応するために発症するのだ。

●IgE系が過剰反応するようになる環境

細菌感染はIgE系獲得前の古いIgG系をよく成熟させ、IgE抗体の生産を抑制する。しかし衛生状態の改善と抗生物質の普及によって、子供の鼻や咽の感 染症の原因となる雑菌が上気道から駆逐されたため、そのようなチャンスは失われた。昔は青洟にいた緑膿菌を含む多数の細菌が免疫系を刺激してIgG抗体を 作るように成熟したので免疫系がIgE抗体だけを(アレルギーの原因)を作るようにならなかった。

南ドイツで、農家と非農家の子供の家のホコリを集め、家畜の糞尿を分解するグラム陰性菌である微生物の細胞表面にある生理活性 物質である「エンドトキシン」と呼ばれる細菌成分の量を調べたところ、それが多い農家の子ほど花粉症とぜんそくを発症していなかった。 エンドトキシンは血液中に入ると発熱するのでパイロジェンとも呼ばれるが、細胞壁を構成するリポポリサッカライド(リン脂質と多糖類の高分子複合体)である。生 後1年以内の乳幼児期にエンドトキシンの曝露が少ないと、IgG抗体を作る免疫システムが成熟できず、IgE抗体を作る免疫細胞だらけになってしまいアレ ルギー体質になる。農家のエンドトキシンの最大の発生源は家畜の糞。糞に触れることのない清潔な社会がアレルギーを生んだとも言える。我々の先祖は家畜と ともに生きてきた。家畜の糞尿を分解する微生物が死ぬとエンドトキシンというタンパク質を含む細胞膜(脂質)が乾燥して空気中に漂いでる。当然赤ん坊はこ れを吸い込む。すると我々の免疫システムはこれを認知し、エンドトキシンの特異な形状に対応する抗体を作って将来その細菌が生きたまま胎内にはいっても やっつけられるように準備する。しかし急速な都市化とともに最近の乳幼児はそのような暴露のチャンスがなかった。そうすると免疫システムはIgEと呼ばれ る免疫物質を作る免疫細胞だけになってしまう。

ー2008年11月23日(日) 午後9時〜9時49分総合テレビNHK特集「病の起源第6集アレルギー 
〜2億年目の免疫異変〜」

これには異論もあって肥満細胞被覆説の藤田理論というものもある。しかし世界の潮流は本論のようなIgG vs IgE拮抗説のようである。

●私は生後1年以内には上田市の奥の真田の庄という田舎で泥の道をはいはいしていたので当然エンドトキシンの洗礼を受けたと推察される。生後1年以内に田 舎に出かけて牛、馬、羊、山羊、豚などを飼っている牧場、または悪臭を我慢して都市近郷の養豚場に散歩にでかけ、糞塵を浴びるか、牛馬の乾燥糞を持ち帰っ てその乾燥糞に触れるチャンスを作り、暴露のチャンスがあればIgG抗体もつくれるように免疫系を成熟させることができる。

●暴露のチャンスとしては藤沢市打戻の「山君(やまくん)牧場」とか三浦半島の横須賀市にある農 業体験型総合公園「長井海の手公園ソレイユの丘」がどうかと思う。後者は旧帝国海軍第二横須賀航空基地跡地に作られたものである。戦後は在日米軍の住宅、 日本に返還された後は航空自衛隊航空無線標識所として利用されていた。動物の糞尿、落ち葉などは堆肥化され、自家菜園などの肥料として利用されているとい う。京急久里浜線三崎口駅から、京浜急行バスソレイユの丘行終点下車または荒崎行漆山バス停下車。

●アトピーは母親由来のアトピー遺伝子(第11染色体)

●ペットが人間のフケでアレルギーをおこす

●夫の精液に対し全身性のアレルギー症状としてのショックを起こした女性もいる

●2013年3−5月アトピー湿疹が3回もぶり返しているのでもしかしたらアトピーではなく薬疹ではないかとと医者が判断し、血液検査した。非特異的IgE(免疫グロブリンE)は30で基準値の170より少ないので、アトピー性皮膚炎」ではない可能性がある。基 準値を超えていたのは乳酸脱水素酵素LD(LDH)が277と中等度上昇なので、感染症が疑われる。また白血球の一種の好酸球が13と少し多いのはIgEではないアレルギー反応があること を示している。リンパ球は17%とすこし低いが正常範囲内。目下歯の治療しているので詰め物の薬疹ではないかと質問すると歯根に巣食ったばい菌の出す毒素によるアレルギー反応ではないかと、抗生物質 を処方された。これで直るかどうか。ハイドロコーチゾン軟膏だけでは悪化し、飲んで初めて快方に向かう。

●現時点ではアトピー性皮膚炎は副腎皮質ホルモン軟膏の継続使用が一般的。

●2013年、東大の本田賢也博士のグループが17種類のクロストリジウム菌を混合した「ク ロストリジウムカクテル」がアレルギー抑制に有効であったと証明した。クロストリジウム菌を増やすには食物繊維を毎日、多量にたべる必要がある。総持寺の修行僧にアレルギー症状がないのは食事に食物繊維が多いかたである。 食物繊維としては何でも良いが、不眠患者がセロニンを分泌させるために服用するオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)で開発された食物繊維を多く含有する大麦のバーリーマックス (BARLEYmax)が有効という。これは一般の大麦に対し、総食物繊維量が2倍、レジスタントスターチは4倍も多く含んでいる。レジスタントスターチ、β- グルカン、フルクタンの3種の食物繊維をバランスよく含有し、腸内で段階的に発酵し情報物質である酪酸という短鎖脂肪酸を産生する。食物繊維を摂取すると腸内常在菌のクロストリジウム菌(Clostridium)が増え、酪酸を分泌してTreg細胞(制御性T細胞)を 活性化するためである。Treg細胞は免疫機能を適性に維持してアトピーが発症しならないようにコントロールしてくれる。抗菌剤などの服用で腸内細菌のバ ランスがくずれ腸内でクロストリジウム菌が出す酪酸が少なくなると、Tregも適正に生み出されなくなる。こうして重症 のアレルギー患者になる。クロストリジウム属菌は、グラム陽性の偏性嫌気性菌でヒトや動物の腸内を始め、土壌などあらゆる環境に生息している。クロストリジウム属の細菌は、 さまざまな糖類を代謝する能力をもっており、その代謝産物として酢酸、酪酸といった腸粘膜上皮細胞の増殖促進や保護作用をもつ短鎖脂肪酸を作り出す。ま た、その多くは芽胞を形成する。クロストリジウム属の細菌は栄養の無い状況や高温などの生息環境の悪い状況に置かれた時、その生き残り戦略として、厚い皮 膜に包まれた球状体、芽胞へと変身する。芽胞の状態では致死性のエタノールやクロロホルムなどの化学薬品での処理や高温化に耐えられるようになる。また、 増殖に適した環境に置かれると、芽胞から増殖可能な細菌に戻る。

●ただ、過敏性大腸症候群とか腸内の細菌バランスが好ましくない状態で長年来ている人は、食物繊維や高分子多糖類の一部に腸内細菌の一部が暴走して、ガスが発生しすぎたり、下痢とかそういうことになることが多い、それでFODMAPとか名前までついた、食物繊維を減らした食材まで開発されている。

●腸内でクロストリジウム・ディフィシルという菌が異常に増えてしまう腸管感染症の治療法に使われる腸内フローラ移植(糞便微生物移植)はアレルギー 対策にも有効かもしれない。これはまず患者の腸内細菌を抗菌剤で全滅させ、ついで健康な人の便を生理食塩水に混ぜてろ過して液体を作り、患者の大腸内に内視鏡で注入するものだ。

●便移植は生の便を大腸に注入するものだが、治療に必要な腸内細菌を便から単離・培養し、カプセルに詰めて経口摂取する研究も福田真嗣慶應義塾大学先端 生命科学研究所特任准教授が行っている。2016年。これは腸内細菌カクテルと呼ばれている。自分自身の便から取り出した腸内細菌を自分の腸内環境維持の ためのサプリメントとして活用する。

●クロストリジウム菌程ではないが「L-92乳酸菌(ラクトバチルス・アシドフィルスL-92株)」がアトピー性皮膚炎、通年性アレルギー性鼻炎、花粉症などのアレルギー症状を緩和する事が分かっている。

●アレルギー患者がノロ・ウィルスに感染し下痢するとアトピー症状は消える。しかし下痢が直るとアトピー症状が帰ってくる。このメカニズムは未解明だが腸 内細菌が関係していることとが分かる。予防注射しなくともノロ・ウィルスにもインフルエンザにも感染しない人はいるが、感染しても発症しないだけ。

Rev. January 19, 2018


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