読書録

シリアル番号 953

書名

神は妄想である 宗教との決別

著者

リチャード・ドーキンス

出版社

早川書房

ジャンル

宗教

発行日

2007/5/25第1版
2007/7/25第4版

購入日

2008/5/19

評価

原題:The God Delusion by Richard Dawkins

たまたま本屋で平積みになっているのを手にとって衝動買い。リチャード・ドーキンスの本を「ブラインド・ウォッチメーカー 上下」、「利己的な遺伝子」、「遺伝子の川」と3冊読んでファンになっていたためである。

この本を著者本人が朗読しているCDをたしかブリュッセルのロジェ広場近くの本屋で2006年に買ったはずと調べてみるとiPodに入っていた。朗読は本書の「第3章神の存在を支持する論証」から始まっている。

ドーキンスは9/11以降イスラム原理主義者の挑戦を受けたアメリカのキリスト教原理主義者のブッシュ大統領がイスラム諸国に攻め込んで、イスラム圏では珍しく非宗教的、世俗的なサダム・フセインを殺してイスラム圏全てを敵にしてしま ったことを目撃して、ますます宗教にのめりこむアメリカで無神論者がそれを表明できずに隠れ無神論者になっている人々を勇気つけようと書いた本ということだ。

ヨーロッパ諸国の人々はほとんど宗教には関心を持たない。アメリカ合衆国創設者も世俗的な人々で宗教と政治を明確に分けていた。しかしアメリカ国民はますます宗教的になってきている。その理由は移民達が教会をコミュニティーのよりどころとしたためであろうかと考察している。子供時代に宗教教育を受けた人は100%宗教的になってしまう。

人はなぜ神を信じるかを進化論的に考察すると他の生物は生きる術をすべて遺伝子の形で親から受け継ぐ。しかし人間はかなりのものを生まれてから親から教わる。従順に親のいいつけを守る子が生き残ったため、子供の頃は親からおそわることを無批判に学ぶ性向を我々は持っている。実際、親が教えるもののほとんどは有益だが中には無意味で時に有害なものがある、それが宗教である。成長して神など居ないと学んでも子供のうちに植え付けられた神を信じる心は生涯消えるものではない。

一神教の国では「世界の宗教は多神教から一神教に進歩する」と思っているらしい。一神教優越主義はチャリティー法に明記されている。「なぜ私はイスラム教徒ではないか」の著者イブン・ワラックはふざけて、一神教はやがて、もう一つ神を取り去って無神論になるべき運命にあるという推論をしてみせた。今でも米国民の半分はまだ「ダーウィンの進化論は間違いだ」と信じる田舎者なので救いようがないが、ヨーロッパの人々は 今時はほとんどが無神論者だ。仏教や儒教は哲学か倫理学であってこれもほとんど無神論だから我々は最も進化した宗教を持っていることになり、まことにめでたい。

Rev. March 1, 2010


トップ ページヘ