読書録

シリアル番号 766

書名

両性具有の美

著者

白洲正子

出版社

新潮社

ジャンル

評論

発行日

2003/3/1発行

購入日

2006/4/19

評価

”賢人会”に出席のため新橋に出たついでに虎ノ門書店で白洲正子さんの自伝をさがしたがない。たまたま手に取った「両性具有の美」がおもしろそうなので買ってきた。わたしは彼女が小林秀雄、青山二郎、河上徹太郎などの男性の作家たちと男同士のようにつきあうのをみて、不思議に思っていたのだが 古典エッセイストの大塚ひかり女史の解説を読んで納得したので買ったようなものだ。

大塚ひかりは解説で以下のように書いている。

彼女(正子)がむうちゃんに惹かれたのは、彼女が「男の目」で女を愛でることのできる両性具有の人であって、しかも男たちをつなぐ「女(肉体)」だったむうちゃんもまた、実は両性具有の人であり、何かが狂えば白洲正子もむうちゃんになっていたからではないか。

男の目を色濃く持ちながら女の現し身を生きる白洲正子には むうちゃんの悲劇は人ごとには見えなかったであろうし、自身、辛いこともたくさんあったでろう。幼児から好きだった能を「女にはできない」と悟ったこともその一つだったろう。

ここでむうちゃんとは小林秀雄、中原中也、坂口安吾、大岡昇平、青山二郎など才能あふれる無頼な文士たちの間で盥回しにされて自殺した坂本睦子という女性であることを「いまなぜ青山二郎なのか」を読んでわかった。

解説は刺激的であったが、本文のほうはまじめに 光源氏を書いた紫式部、西行、在原業平、巴御前、世阿弥、薩摩隼人、南方熊楠らを両性具有の観点から論じている。


トップ ページヘ