読書録

シリアル番号 701

書名

日本国債は危なくない

著者

久保田博幸

出版社

文芸春秋

ジャンル

経済学

発行日

2002/8/20第1刷

購入日

2005/4/24

評価

友人S.K.にいただく。K氏蔵書

国債は税による現在の負担と国債の形での将来負担には差がないという「リカードの中立命題」がある。リカードの等価定理、量的クラウディングアウト効果、単にリカード効果ともいう。減税してもデフレは終息しないことをいう。

国債発行は現世代の返済能力の範囲内であれば問題ないが世代間を越える国債はだめ。

2010年の国の国債発行残高は800兆、地方自治体の負債と合計して1,000兆円、国民の預金残高1,000兆円という。これ以上負債を重ねると国家が債務超過となり、国債の引き受け手がいない状態に陥る可能性がある。ギリシア、スペイン、ポルトガル並の国家に転落するのだ。そうなれば強力なリーダーの居ない政府は苦し紛れに売れ残りの国債を日銀に押し付けるという禁じ手を使うかギリシアが米国のゴールドマンサックスの指導下で採用した証券化という姑息な手段を使うだろう。そうすると戦後に我々が経験したようなハイパーインフレが始まるおそれがある。ハイパーインフレでたくわえは紙切れになり、年金制度が機能不全をおこし、食料品の値上がりのために食うにも困る事態になる。我々年金生活者は塗炭の苦しみに落ちるのではないかという恐怖感がある。農業で生きてきた田舎を捨て都会にでてきた移民一世から構成される都市住民は生存のために最低限の食料自給もままならぬというのが最悪のシナリオとなる。

とはいえ私は日本がいつそうなるかを知る立場にはない。その時期は来年と予言するカリスマ・ディーラーがいる。一方日本金融財政研究所長の菊池英雄氏は「外為特会」と「財投特会」の合計302兆円は国家の負債ではないから擬似財政危機であってまだまだ余裕があると講釈している(学士会報 No.881 2020-II)。仮に後者が正しくともいまのペースで50兆円ずつ借金を積み上げてゆけば6年で食いつぶす計算になる。もう働けないが、まだまだ餓死したくない年齢だ。快適な都会生活の裏にはこのような脆弱性が隠されているということをひしひしと感じる今日この頃である。

Rev. April 9, 2010


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