読書録

シリアル番号 1351

書名

ピクサー流創造するちから 小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法

著者

エド・キャットルム

出版社

ダイヤモンド社

ジャンル

経営学

発行日

2014/10/2第1刷

購入日

2018/09/20

評価



原題:Creativity. Inc. by Ed Catmull

鎌倉図書館蔵

著者はユタ大のコンピュータサイエンス学科卒で、スチーブ・ジョッブス、ジョン・ラセタとともにピクサー社を立ち上げた。大学の同期生にはネットスケープ を設立したジム・クラーク、アドビ社を立ち上げたジョン・ワーノック、オブジェクト指向プログラミングのアラン・ケイ等が居た。

ユタ大で博士号をとったのちニューヨーク工科大、次いでルーカス・フィルムに移った。そこでラセターに会い後にピクサーを設立することになる。

マネジャーは手綱を緩めなければいけない。クリエーティブな発想においては役職や上下関係は無意味。

トイストーリー2の ストーリーは「あなたは永遠に人生と愛、どちらを選びますか」という選択が持つ葛藤を感じさせるものでなければならない。いいアイディアを二流のチームに 与えても台無しにされる。一番大切なのは人間同士の相互作用だ。いいアイディアより適切な人材と適切な化学反応の方が大切。だからどの会社にもある開発部 門というのがおかしい。開発部門は映画化するアイディアを見つけ出し発展させる部署だという認識は間違い。開発部門の仕事は脚本を作ることではなく、優秀 な人材を見つけ出し、そうした人材のニーズを知り、適材適所に配置し、連携が上手くゆくように配慮することなのだ。ピクサーには作業台やコンベアーこそな いが映画の作製も同じ。アイディアがチームからチームに渡されてゆく。品質を確かなものにするためにはラインを止める紐が必用なのだ。効率は目標の一つだ が品質は究極の目的であると社員に言ったならその本気度を社員の前で示す必要がある。

トイストーリー作製から学んだことは「物語が一番偉い」と「プロセスを信じよ」というフレーズだが、キャッチフレーズを呪文のように唱えるだけになりが ち。映画なんだから「物語が一番偉い」は当然。「プロセスを信じよ」は日本語でいえば「その場に教えられる」とでも言い換えられる。

仕事で人とかかわる時、本当に思っていることを言わないで済ますことがある。ところが問題を解決するときや共同作業を行う時には事実や問題点やニュアンス をつかむためには隠し事は機能しない。グループの集合知と率直な意見が必要となる。

秘密主義は機能しない。

「見えないものを解き明かし、その本質を理解しようとしない人は、リーダーとして失格である」・・・「カッサンドラが呪われているわけではなく、彼女が話 す真実に気づくことができない人々が呪われているのだ」

本来は効果的であるはずの階層制度が、進歩を妨げるものに変わってしまうきっかけは、自分や他人の価値を無意識に序列の上下と同一視する人が増えたときに そうなる。

「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」・・・アラン・ケイ

2005年ピクサーとディズニー・アニメーションは合併したが組織は別のままキャットルムとジョン・ラセターらが乗り込んでディズニー・アニメーションが自らの力で再生するのを助けた。3Dの興隆でさえなかった手書きアニメーショ ン部門も元気になった。

最後に全てを与えてくれた、スチーブ・ジョッブスの最後が詳しく紹介されている。最高のビジネス書。

宮崎駿に代表される手書きアニメは20代で平均月収9万円という低賃金のアニメーターに辛うじてささえられていたが現場は疲弊しているという。味はないがコンピュータを使った3D化は読むを得ない方向だろう。

Rev. December 30, 2018


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