読書録

シリアル番号 1030

書名

中国は歴史に復讐される 繁栄か、崩壊かー赤い資本主義の全シナリオ

著者

岡崎久彦・渡辺利夫

出版社

育鵬社(いくほうしゃ)

ジャンル

政治学・地政学・行政学

発行日

2008/11/11第1刷

購入日

2009/11/8

評価

鎌倉図書館蔵

鳩山政権が東アジア共同体構想をぶち上げている。だいぶまえに森嶋通夫が日本も中国とヨーロッパユニオンのようなものを作らないとこまることになるだろうといっていたように記憶する。だがヨーロッパとアジアでは歴史が違いすぎる。現実はどうなのか少し中国を学ぼうとエーモン・フィングルトンの本と一緒に借りる。

岡崎久彦氏はかって千代田化工の顧問をされていてその見識を買っていたので特に選んだものである。

渡辺利夫氏は学者で中国研究家である。

二人は中国が抱える難題を数え上げる。

かっての中華帝国は周辺国が華夷秩序さえみとめ、朝貢さえしていれば国境にこだわらず周辺国に干渉しなかったため帝国の維持にコストはかからなかった。しかし現中国はその国境線の中に異民族を含む大清帝国の版図を抱え込んで国民国家にしようとしている。

@チベット、内モンゴル、新疆ウィグル自治区を同質化するため膨大なコストを掛けているがいずれ引き合わなくなり大崩壊する恐れがある

A台湾は中国のものだと公式に宣言しているため、周辺国に緊張を引き起こしている

B華僑が東南アジアに拡散しそこで成功すると一定の期間をおいて華僑街焼き討ち事件が発生している

C1989年の天安門事件後、事態を収拾するために江沢民政権は安易に愛国運動を展開した。しかも日本を主敵として歴史認識問題、教科書問題、靖国問題、従軍慰安婦問題で日本をゆすった。太平洋戦争で贖罪的気分にあった日本のマスコミもこれをあおった。しかし貧富の差になやむ中国の底辺層の反政府暴動は反日暴動という隠れ蓑に隠れて発生するようになった。事の重大性に気がついた中国政府はようやく反日運動を抑えるようになった。しかし戦後親中国的であった日本の世論もようやく中国に対する不快感をもつようになり、マスコミの親中国偏向に気がつく事態となっている。

D2001年中国のWTO加盟は発効し2004年に江沢民が権力の座から降りてから中国経済は躍進を続け、この特需で日本の重厚長大産業は生き返えった。しかし中国中央政府は殆どは半独立状態にある地方政府をコントロールできず、暴走状態になっている。

E中国は地域覇権の野望があるため東アジア共同体構想を提案したことがある。この構想は共通の家を造りその内部でECのように人の自由往来を許すことを含んでいるとすれば。貧富の差が大きいため、豊かな周辺国は中国からの貧民の流入で大混乱になるだろう。

F渡辺利夫氏は満州国中尉として敗戦を迎え、朝鮮戦争を第一戦で指揮した韓国初の陸軍大将白善Yの言葉を引用して地政学の重要性を指摘している。日本は海洋国家であるから同じ海洋覇権国家である。英国との日英同盟は最高の同盟であった。おかげで日露戦争に勝たせてもらったが、ここで日本は自らのアイデンティティーを忘れて大陸国家になろうとする野望をもったが、資質もなく失敗した。米国はこの英国の海洋覇権国家の遺伝子をもっているため、日米同盟の維持こそ日本の生きる道である。沖縄に米軍基地があるのも中国を封じ込めておくために台湾を守る必要があるためだ。1902年戦略家の佐藤鉄太郎の「帝国国防論」にすでにこの戦略は記されており、山本権兵衛により支持されている。残念ながら後の歴史はそうなっていない。

G日本が米国との同盟を維持する上で大切なことは協力関係を対象にすることだ、即ち米国民を怒らせないためにも集団的自衛権を行使すると政治が決意すればすむことである。

Rev. November 9, 2009


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