原発奴隷

 


友人の千原氏が2003.6.8付けのスペインの新聞エル・ムンド(EL MUNDO)誌の記事を送ってきた。「日本の原発奴隷」という見出しである。原発施設で使い捨てられる人々の悲惨さを報告したものだ。2015年の現在も なんら改善されていない。2011の福島事故後、上野公園のホームレスの一群は消えた。どこに行ったか明らかだろう。

それにしてもタイトルが「原発奴隷」とは。西欧の伝統から出た用語だろう。日本人は奴隷といえばアメリカの黒人奴隷しか知らないからこうは書かない。でも 図星だ。

千原氏は千代田化工建設時代、アルジュベールのJVの天然ガスプラント建設工事で、テクニップ工事部分で頻繁にミスが発見され、テクニップから日本人を入 れてくれと千代田に依頼があった。千原氏は上司から下命され、テクニップ本社にしばらく滞在した後、現場に赴任した。テクニップチームのなかに一人で一年 間いた時のフラ ンス人の印象と、南アフリカのクーベーク原子力発電所(フランス製の1980年代建設の現役)を訪問したとき会ったフランス人の印象がまるで違う という。

安全管理を担当しているフランス人技術者が原子炉内部を案内したそうだが、現場の維持管理工事関係者一人一人の顔写真と定期訓練記録とライセンスが見える 化 されていた。日本人は、自分達は細心で精確な(meticulous)国民性と思っているようだが、千原氏は「フランスの原子力安全技術者はあのテクニッ プの フランス人ではない」との印象を持ったという。原子力大国フランスが南アでは輸出後30年以上も、安全管理はフランス技術者だそうだ。

日本が原発を導入するまえ、その形式選定作業を担当させるために原研の所長に任命され、その後、政治的に失脚した長岡半太郎の息子の嵯峨根教授(広島・長 崎原爆投下の 10日前に嵯峨根教授宛てに警告の手紙がラジオ・ゾンデでとどけられ、陸軍が捕獲して翻訳して事前に知っていたとのこと)の教え子だった森永先生から聞い た言葉に。「米国、英国、ソ連そして日本で原発重大事故を経験したが不思議なことにフランスはないんだよね。理由は分からない。それでもいずれはフランス でも事故は起こる」というものがある。フランスだって無論、漏えい事故は沢山あるのだが、不思議と大事故はない。

千原さんが個人的に体験したフランス人技術者が一般のフランス人とちがっていたというのいは森永先生の観察の裏つけの一つのヒントになる。

私が推測した理由は

@    100%自らゼロから開発したPWR+vent filterである。
A  PWRは封じ込め性能がBWRより優れている。
B    開発を自分でおこなっているためブラックボックス部分がない。(日本はいまだに基本設計は外国にたより、単に聞きサプライヤーと保証をさせられている「技 術奴隷」にすぎない)
C   自分で開発しているので常に改良ができ、どこが弱いか分かっている
D     もともと出来が違う人間のあつまり
E   住民の監視がうるさく常に覚醒していなければつとまらない
F   放射線をあつかうので常に緊張を強いられる

千原氏はまた1997年1月に58歳で被曝が原因とおもわれるガンでなくなった平井憲夫氏が生前書いた弾劾の書「原発がどんなものか知ってほしい」 を送ってくれた。平井氏は千代田化工建設、日立製作所グループの吉田溶接工業、東京電力福島第一、第二、中部電力浜岡、日本原電敦賀、同東海など、沸騰水 型原 発の建設、定期検査における配管工事の監督を20年以上原発で勤めた。1988年退社後、1990年「原発被曝労働者救済センター」を設立、代表として原 発工事で被曝する労働者の救済にあたりながら、全国で講演活動を繰り広げた。各原発建設現場の実態を法廷で証言した。

ところで話題が変わるが、独自の安全な原発を開発し、安全に稼働させているフランスでは酪農分野でも技術革新をしているのでついでに紹介する。フランスと いうより、ヨーロッパではとしたほうがいいかもしれないが。

フランスのコート =ドール地方の豊かな片田舎をドライブしたことがあるが、その牧歌的な外貌とはことなり、中身は近代的な独自技術で最先端なのだ。

酪農家は完全自動の牛舎を開発して運用している。乳牛の搾乳を機械で行うBOX型のロボットである。通常は1日2回(朝・夕方)行う搾乳作業を人の代わり に行い、搾乳作業を自動化する。牛に搾乳ロボットを訪問させるために、搾乳ロボット内で餌を給餌し、牛が餌を食べている間に搾乳を行う。搾乳ロボットはタ グから情報を読み取って個体を識別している。餌を目的にロボットを訪問した牛の個体データを搾乳ロボットが読み取り、前回の搾乳から設定以上の時間が空い ていれば飼料の給餌と搾乳を同時に行う。設定時間よりも短い(前回の搾乳から十分な時間が経過していない)場合は、搾乳ロボットをつかわず、牛舎へ戻す仕 組みになっている。

自動搾乳機は入室した牛の立ち位置をロボット内に設置されたカメラや床面の重量移動などで認識し、レーザー光で乳房の位置を測定する。乳房位置を検知した 後、アームと呼ばれる搾乳機器が収納された可動部が乳房まで移動して、搾乳前の乳頭洗浄を行う。乳頭の洗浄後、レーザーで乳頭位置を検知して、乳頭に1本 ずつミルカーを装着して搾乳を行う。搾乳中はロボット内でミルクの成分(電気伝導率・乳色など)を計測し、異常があればミルクを集乳せずに分離したり、警 告を表示したりする。搾乳終了後は、ゲートを開放して牛を退出させ、アームの搾乳機器を自動洗浄した後、次の牛の搾乳に備える。 メーカーはDeLaval VMS社など。欧米に10年おくれているという北海道でも納入する酪農家がふえているという。

清掃ロボットも稼働している。デラバル ロボットスクレーパーRS250は牛ゾーンに入り込んでスノコ床を清掃する。事前に牛はソートゲートで別のゾーン に追い出して事故が起こらないようにする。ロボット作業空間と牛の居住空間は柵で仕切られ事故はおこらない。人間は監視するだけ、ウシどもは自由に広大な 牛舎のなかろ歩き回り腹が減れば餌をたべ、ついでに張れオッパイの腫れもとってもらえる。

私はこれみて、日本では完全自動介護施設が開発可能だと思った。腹が減れば食堂にゆけば、オムツ自動交換機が交換してくれる。

日本人のロボット開発といえばすぐ人型ロボットしか頭に浮かばないらしい。かわいいとかの感情が先に立ってしまうのだろう。でもヨーロッパの搾乳ロボット はそうじゃない。工場全体がロボットの動き回る領域と牛の領域とは柵で完全にゾーン分けし、ウシは柵の隙間から顔をだして餌ととる。搾乳ロボは逆で作の隙 間からアームを牛ゾーンに挿入して形状認識と操作を行う。

同じように自動化介護施設でも合理性を徹底したシステムにしなければならない。人間にタグをつけソート・ゲートで管理するするなんてまず感情がゆるさない ので施設を そのようには作らない。結局、介護人は疲労困憊して、ベルトで固縛するなんて拷問がまかり通る社会なのだ。感情が邪魔して合理的な判断が出来ない。

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  February 28, 2015


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