日本の政治・経済の不調の原因

知優先社会は暗黙知を失い国は亡ぶ

追補ー12 コール・デ・ミーヌ

木下氏から次のようなメールをいただいた。

べき分布の議論は、われわれの手で、現実に原子力の世界に矢を射ることができるテーマですが、表記は評論で、(本を書いているわけではない自分としては)頭の整理にしかなりません。

しかし一昨日、東大柏の葉からの帰りに、石野栞先生(3.11以後に記者会見で謝った、松浦、田中俊一、石野、の一人です)と話をしてきました。そのなかで「文系はあぶない、とてもあぶない」と言われていました。

自分で検証する力をもたない(自分で深掘できない)まわりにどういう理系の人間が居るかで、判断が違ってくる。(これはいまの政治を見れば明らか。実例は青木さんのWEBに沢山)(寺島実郎氏とはなしをしてもそれを感じました)

日本の教育系大学は、みな文系大学だ。これが大きな問題だ。その大学のセンセイは、文系大学に働いている理系のセンセイ(マイナー)という意識でいる。

石野栞先生は東大本郷/浅野地区で定年まで居られたので、いろいろ見てこられたようですが、大山巌先生が、東大法学部が癌だ、と激しくおこっていたのを記憶しているそうです。理由は聞き忘れましたが。

ゆとり教育は失敗したとされていますが、教師が対応できなかった。乾電池のつなぎ方がわかるセンセイの数(比率)が、愕然とするくらい少なかったという話をされました。

柏の葉から狛江(小田急線の喜多見)まで、あっという間に着いてしまいました。


私の返書は

そうですか。石野栞先生もそう感じておられるとは。マー!渦中の人ですからむしろ私らより強く感じられたのでしょう。肝心の田中俊一氏は今後どのように動くのか興味ありますね。本当に原子力を理解している理系か問われます。

東大法学部はエリート官僚養成所であり、ほかの学部とは異なる目的をもっていると理解しています。選抜法、教育内容も問題なのかもしれませんが、卒業してからの特権的身分がそ の人物を変えてしまうと理解しています。高校同期でトップの成績の男がここに学びました。本人は当然官僚になるのが目的でした。しかし、兄が自治労の活動 家ということで採用されず朝日新聞の記者にしかなれませんでした。彼とメールを交換していると細かな論理の破れを見つけて揚げ足とるのが得意でいつもイラ イラさせられました。本質とば別の場外に持ち込むのです。こういう手法で相手より優位にたつように訓練されるのでしょうね。権力闘争の練習みたいなもので しょう。化学工学会の理事だったころ、木下さんもご存じの東大の化学工学の某先生が会議中資料の誤字を指摘するので思考がみだされて迷惑だと思ったことを思い出します。

さて国家エリート集団の典型はフランスにあります。きょうの朝日にナポレオンが作ったコール・デ・ミーヌCorps des Mines 鉱 業技術団)が紹介されていました。鉄は国家なり ではなく、原子力は国家なりを体現する秘密結社です。昔読んですっかり忘れていましたが、ポリー・プラットによればエコール・ポィテクニック(Ecole Polytechnique)卒業生のうち、成績が10番以内が入会できる秘密結社です。ちなみに政治家・官僚養成はグランド・ゼコールですがその入学試験は 数学1本とのこと。頭の良さを評価するには高等数学が一番という考えらしい。ちなみにアレバの元社長アン・ロベルションやニッサン社長のカルロス・ゴーンはコール・デ・ミーヌである。フランスは政治家も含め、完全に理系的人間によって支配されている。日本はしかし数 学もできない東大法学部系事務屋天国。このフランスの制度はポリー・プラットなどアングロサクソンには奇妙と映るらしい。というアングロサクソンでも文系天下だが最近は経済学の信用はエリザベス女王もあきれるくらいまったく地に落ちてしまった。英国、米国 の文系指導層は文系指導層は大丈夫でしょうか?英国は一級国から転落して英語という文でかろうじて生き延びており、米国も後を追っています。そして日本ですが、英語という 資産もなく、お先真っ暗。iPS細胞研究集団に付け焼刃的予算をあわててつけているようでは先が思いやられます。森永先生によればドイツは核融合研究から 手を引いたそうです。日本は半分の予算を分担していますが、全部フランスに使われているアホだとやめる決断をしたドイツ人学者が森永先生にいったとか聞き ました。

ドイツ在住の望月氏からは

山中伸弥教授(50)のノーベル医学生理学賞受賞は快挙でした。これを報ずる朝日新聞に:山中さんも含め、日本の自然科学系の受賞者は計16人。卒業大学 別だと京大が5人でトップで、東京大の4人が続く。ドイツの大学のトップはゲッティンゲン大学で、なんと45人、ハーバード大学は55人です。中国人では 素粒子論で対称性の破れを発見したヤン。また米国のエネルギー省の長官のチューが物理学賞をもらっているという。総人口比ではスイスが1位だという。

と書いてきた。まだまだ日本では理系が生きていないし、今後はますます暗い。

この構造にはエントロピーの法則が支配しているとしか思えません。

  October 11, 2012



]コール・デ・ミーヌに代表されるフランスのエリート集団が狂っていることあげつらったが、民主主義の国と思われている米国のエリートの認識力またはとぼけ 度も相当なものである。朝日新聞が米戦略国際問題研究所(CSIS)のJohn Hamel所長にインタビューしている。それを読むと彼は原発とエネルギーに関しては少しどうかと思う認識をもっている。米国の風力の稼働率は10%(実 際には20%)とか、日本のエネルギーコストは他の先進国の2-4倍(天然ガス価格ならそう)だから原発ゼロでは日本は貧乏になるとの認識などだ。製鉄な ど高エネルギー産業を維持しようとすれば確かにそうだが、産業構造を低エネルギー消費型に転換すればいいだけのこと。それに日本としてはロシアと国境紛争を解決して、ロシアの資源開発を直接行い、日本回にパイプライン敷設などいろいろ手はある。

原発事故で国土を失うリスクなどこれぽっちも言及しない。技術でカバーできるという超楽観論である。多分Hamelは文系なのだろう。我田引水もいいところ。自己矛盾だ。 規制委員会が機能すれば、原発は安全などとうそぶいている。これこそ村のロジックだ。そうしておいて日本政府と電力が住民の信頼を失なったのはまずいという。そのうち米国でも事故が生じてほぞを噛むことになるだろう。その顔を見てみたい。

二酸化炭素の温暖化説を信じているところなどまさに原子力村の住民の症候群だ。この点オバマは不勉強だ。だからHamelが次期国防長官候補なのか?ロムニーは完全に二酸化炭素の温暖化説に一顧だに加えない。

次期民主党政権の国防長官候補だと のことだが、Hamelの原発やめるべきでないは前置詞で、本心は核拡散防止が第一重要事項でアメリカだけでの覇権維持は力不足だから日本も手伝えという ことなのだろ う。この点は木下氏も同意見だ。こういう不誠実な人間が米国を指導するようでは、オバマ政権もお先真っ暗。あまり期待しないほうがいいということで はないか?日本はそろそろ独自の道をゆかねば。ハーバード大のジセフ・ナイや元国務省の役人アーミテージも同じ穴のムジナであろう。米国も官僚がおかしく なっている。核拡散防止に日本は世界に原子炉を供給し続けることが必要ならそうすればよい。ただ事故補償は米国にならってしなければよい。それ売れないな らそれでよい。

さて日本の規制委員会だが、たしかに田中委員長は全国の原発周辺の汚染マップを作成してすこしは信頼回復に貢献している。しかし既存のBWRは大改造なしには放射能漏れを防止できないし、大改造はコストがかかりすぎるので規制できないとにらんでいる。

Hamel所長は使用済み燃料はそのまま保管しておい てそのうちに国際管理下で再処理することを提唱している。再処理は兎も角、南極大陸の地殻にすてれば数億年は大丈夫だ。ただ国際的な合意はむずかしいだろう。

CSIS の研究者 Frank A. VerrastroがYet, in the wake of Macondo, Fukushima, and the shale gas and tight oil revolutions, the energy landscape is rapidly changing.という風に使っている。マコンドはノーベル賞作家ガ ルシア=マルケスの「百年の孤独」の舞台になった、架空の村だ。ここで繰り広げられるホセ・アルカディオ・ブエンディアとウルスラ・イグアラン夫婦を始祖 とする一族の7代に渡る物語だ。最後に濃い血縁の 結びつきで豚のシッポを持つ赤ん坊が生まれたところで、一族は死に絶える。福島はマコンドと言っているのだ。なんとすごい比喩だろう。所長とは別に研究員はこういう見方をしている組織がCSISなのだ。

Rev. October 24, 2012

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