農業環境技術研究所シンポジウム

21世紀の農業と環境問題を考える

2010

 

2010年5月26日、西沢重篤さんに誘われて、午前中は東京ビッグサイトで開催されている2010NEW環境展を見、午後は有楽町朝日ホールで開催されたつくばにある農業環境技術研究所のシンポジウムに参加した。

環境展

環境展は持続可能な循環型社会の構築、環境汚染問題、地球温暖化問題がテーマである。4万人の来場者の内の1名であったわけだ。

初めての参加であった。意外にも木材粉砕機の展示が多い。木造家屋のチッパーとしてのリサイクル目的か。それに電池駆動のゴミ収集車が目新らしかった。

戦前からあるドイツの古い技術だそうだが中国メーカーによって再発見された、直径100mm、長さ2m程度の2重ガラス管の環状部を真空にし、内管内部に金属製の集熱板を設置し、銅製のヒートチューブを設置する真空管型集熱器が展示されていた。温水温度が200oCに達するという。

農業環境技術研究所のシンポジウム

つくばにある農業環境技術研究所は仕分けされそうな他の多くの独立行政法人と区別がつきにくい。1893年設立の農商務省農事試験所の流れだそうである。本シンポジウムは32回目だそうである。有楽町マリオン11Fにある朝日ホールが会場である。

<レスター・ブラウンの特別講演>

この人の講演は以前も政府関係の会合で聞いたことがある。今回は2度目。

世界人口当たりの穀物生産が増えたのは、家畜に穀物を与えて得られる肉を食する文化が普及したためで今後もこの傾向が続く。ということは人口増以上のスピードで穀物生産を増やさねばならないということになる。

ブッシュ政権のバイオ・フュエル政策は誤りであったとしたのは私も政策が発表された直後に書いた農業によるバイオ燃料の通り。

20年来、二酸化炭素温暖化説を信じてきたのに急に懐疑派に転じ、二酸化炭素濃度は温室効果に影響するのかを書き上げたた身にとって今だに二酸化炭素温暖化説を信奉しているレスター・ブラウンの限界を感じた。これではピエロになったゴア元副大統領と同じハメになる。

1950年以前は食料増産は耕地面積の拡大が唯一の方法。 しかし1950-2008年にかけて穀物収量は1.1t/haから3.2t/haと3倍になったことである。しかしその後の生産性の伸びは1.3%に下がったという指摘はその通りだろう。

<横沢正幸による気候変動>

すべてIPCC4次報告が正しいという前提のロジック展開のため、聞く価値なし。農業モデルに深入りするまえに気候モデルを正しい予測のできるようにまっとうなものにしてほしい。

<谷山一郎による農耕地>

FAOによれば世界の食料生産は2005-2007年の平均にくらべ、2030年には40%、2050年には70%増加させなければならない。

地球の陸地面積は130億ha、農耕地面積はその11%の14億ha、樹園地は1.4億ha、草地は34億haである。更に16億ha増やす必要がある。そしてその増分の半分は天水農業が可能なアフリカと南米にある。

ところが過去50年間の耕地増分は10%で必要量を満たせない。かてて加えて土壌浸食11億ha、風食5.5億ha、重金属汚染・塩類集積2.3億ha、農業機械による圧密0.8億haに達するという。

<新藤純子による肥料>

西暦 世界人口 穀物生産 生産量の倍率 一人当たり生産量 一人当たり生産量の倍率 窒素肥料使用量 リン肥料使用量
  億人 億t - t/人 - 億tN 億tP2O5
1900 16.0 3 1.0 0.188 1.0 - -
1961 30.8 8.8 2.9 0.286 1.5 0.1 0.11
2007 66.7 23.5 7.8 0.352 1.9 1.1 0.4

ハーバー・ボッシュ法によるアンモニア合成がNに関する最大の貢献

採掘可能なリン鉱石は180億tであるから現在の消費量でR/P=180/0.4=450年。今後の人口増を見込んで300年というところ。それ以後は人類は下水からの回収 リサイクルが必要となるだろう。

耕地面積当たりの施肥量はN、P2O5それぞれ100-150kg/haで過剰施肥。Nは水溶性、揮発性で過剰施肥は環境汚染を引き起こす。

リンは非揮発性、水に溶けにくいが過剰施肥で水質汚染の原因となる。下水からの回収などが必要となるだろう。

<渡邉紹裕による水資源>

一人当たり利用可能な年間水資源

一人当たり利用可能な年間水資源(m3
世界平均 8,559
日本 3,355
エジプト 779
サウジアラビア 94
水ストレス限界値 1,700

現在、世界の食料の40%は全耕地面積の17%に相当する灌漑農地で生産しているくらい灌漑、ひいては水資源が大切であるか分かる。

May 31, 2010


トップページへ