第12回

自由人のエネルギー勉強会

エネルギーと戦争

2014年11月23日

神田学士会館 302号室

森永晴彦「挨拶と報告」


青木一三「公的ウソ集

30分間、機関銃のようにしゃべった後の質疑応答のとき、第二次大戦開戦の反省で文官優位原理が貫かれる防衛省制服組の榎谷惟光氏が言ったことは、「行政 は法にしたがって粛々と進められる。そしてその法を立案するのは政治家ではなく、全て法学部出の官僚である。そこに理系出身の技官(制服組)は口もはさめ ない。だから理系(制服組)から見ると愚かな政 策がでてくる。原発と再生可能エネルギーについてのドイツと日本の差はここから出てくる。なにも産業(軍事)技術だけでなく、教育現場が崩壊しているのも 同じ理由だ」と発言。防衛省とはい え、官庁の内部で一生を送った人の見解だ。問題の根は官庁が法学部出の指定席になって腐敗しているという従来のグリーンウッド氏の見解を裏打ちする意見で あっ た。日本は彼ら法学部出にハイジャックされたまま、政治家はこれを直せないところに問題がある。能力不足だからだろう。安倍首相は財務省の影響を排し、経 産省の政策を採用したが、経産 省の政策はもう手遅れで、長期的な目で次世代への負債を大きくした失策ということになるだろう。

東大法学部出の経産省資源エネ庁長官が原発の再稼働はホルムズ海峡封鎖リスク回避のためと言っていると紹介したことに関し、防衛省の核兵器担当の清水潤元 海将は自衛隊が心配しているのはホルムズ海峡ではなく、原発へのテロであると指摘。

清水潤元海将から原発は民間の電力には手におえないから国営にしたらどうかという質問があった。わたしは原発の国営化は絶対してはならない。原燃をみれば 明らか、役人に原発の運営をまかしたら怖いものなしで何するかわからない。せいぜい任せられるのは廃棄物処分だが、多分なにもしないだろうと予想できる。


武田暁「素人脳科学者の立場から」

動物も生きるためにウソをつく。言葉は使わないが行動でそれと分かる。例えば自分が隠したエサの前を通過しても他の個体が一緒の時には素知らぬ顔で通り過 ぎる。前頭前野が発達した人間は容易にウソをつく。

ウソには意図的に為されるウソと、自分ではウソと気づかないウソがある。公的ウソまたは集団におけるウソはmirror neuronがあるため。

脳の記憶の7つの欠陥(物忘れ、不注意、妨害、混乱、暗示され易さ、書き換え、つきまとい)は脳の記憶システムの不完全さの反映ではなく、適応性の反映 である。

人の脳は容易に偽りの記憶を埋め込める(暗示に弱い)。

記憶は社会の常識に合うように変更されやすい(公的ウソの拡散)。

情報の統合過程で多くの情報は失われる。

情報の抽象化、範疇化を伴う情報の統合過程で行動目的に適応する情報の統合・選択が起こる。

人間科学のセントラル・ドグマ「人は自分で思っているほど、自分の心の動きを分かっていない」と下条信輔はいう。無 意識の脳の働きに脳のエネルギーの95%は消費されている。意識に登る脳の働きは5%に過ぎない。並列に多数の記憶が想起された事項は意識に上がらない。

fMRIで休息状態での脳の活性化部位を測定すると過去を思い出している時と将来起こる事象を予測し想起する際の活性化部位と一致する。

数学は命題と16個の演繹演算(ゲンツェン)から構成されている。では「脳はいかにして命題の成否を認識できるのか?」、平面幾何学の公理の一つ「三角形 の内角の和は180°は曲面幾何学では真ではない。このように状況によって公理は真でないことがある。「数学定理は広く真実と認められた公的ウソなの か?」という疑問がでてくる。

塩野七生の「マキアベリ語録」:「人はマキアベリ的類人猿で他者の行動を予測して裏をかく」

塩野七生の「マキアベリの政略論」:「君主たるもの、もし偉大なことを為したいと思うならば、人をたぶらかす能力、権謀術策を習得する必要がある」

ピカソ:「芸術とは真実をあ ばきだすウソ

芥川龍之介:「あらゆる社交はおのずから虚偽を必要とするものである。利害の一致には効用がある。本音をむき出しにするばかりでは衝突も起る」

桂歌丸:「落語とはいかに上手にウソをつくか?」

小泉純一郎が原発廃止運動での細川氏との関係を「友情と打算の二重構造」

<参考文献>

1.折橋、杉田著「うその自己分析」日本評論社1999
2.スコット・ペック著、森訳「平気でうそをつく人たち、虚偽と邪悪の心理学」草思社1996
3.シャクター著「The seven sins of memory なぜあれを思い出せなくなるのか」日本経済新聞社2001
4.スクワイア、カンデル著「記憶の仕組み」ブルーバックス2013
5.下条信輔著「サブリミナル・マインド」中公新書1996
6.ラマ・チャンドラン著「脳の中の天使」角川書店2011
7.マリオ・リヴィオ著千葉訳「神は数学者か」早川書房2011
8.武田暁著「脳はいかにして言語を生み出すか」講談社2012
9.武田暁著「脳はいかにして物理学を創るのか」岩波2004


西岡昌紀「科学教育の空洞化」

財政難とはいえ予算は箱物に流れ、文部官僚は少ない予算をさらに削り、教育現場が疲弊していると神経科の医師西岡昌紀氏が指摘。そのいきさつは公立小学校 を出た自分の娘をそのまま荒廃してい るという公立中学校に送り込むことをやめ、私立にした。その娘に物理・数学課程を選ぶようにアドバイスしたらその私立中学の先生が、それは入学試験で不利 になるので生物を選ぶように指導された。私立ですら数学・物理を教える先生がいないらしい。危機を感じ月間Willに投稿したが、書店にまだ残っているの で興味のある人は読んでほしい。


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November 24, 2014


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