最終処分場のない原発の操業期間延長は、ドイツ憲法違反

 

グリーンウッド様

一昨日(2010/1/28)にドイツ環境援助協会(http://www.duh.de/)という団体が、原発の操業期間を延長することは、ドイツ憲法に違反するという法律家の鑑定書を発表したことをご存知ですか(日本のメディアが報道したならば、ご存知かも)。

詳しくいうと、『核廃棄物の最終処分場がないのに原発の操業期間を延長することは、国民のためにリスクを予防し、国民をリスクから保護することを国の役割と定めるドイツ憲法に違反する』ことを結論したということです。この鑑定書の発表はドイツでは広く報道されました。残念ながらこの団体のhpはドイツ語オンリーですが、これ関係のプレスリリースのリンクは次のとおりです:

http://www.duh.de/pressemitteilung.html?&tx_ttnews[tt_news]=2135

全28頁の鑑定書もこのリンク(の一番下)からダウンロードできます。

日本国憲法には、国民のためにリスクを予防し、国民をリスクから保護することを国の役割と定める条文がありますか?

望月



望月様

「核廃棄物の最終処分場がないのに原発の操業期間を延長することは、国民のためにリスクを予防し、国民をリスクから保護することを国の役割と定めるドイツ憲法に違反する」との鑑定意見は正論です。うらやましい。

日本国憲法だってアメリカからもらったものですから当然同じような思想は入っているでしょう。日本の裁判官は純粋培養の官僚ですから、行政官僚のこまることはノーと言いにくいというところがあるでしょう。同じルーツでしょうか日本の環境団体はこのような鑑定は依頼しませんね。

核廃棄物の最終貯蔵場をブッシュは決められず、廃棄物減量化の高速炉の開発をMHIなどに委託して研究しようとしていたのをオバマは中断させました。私はオバマに期待していました。しかし最近の不景気による不人気のため原発は増設の方向に決めたようです。

M先生は元気で原発の延命はともかく新設をとめたいといろいろ代替案を出してきます。そうして昨暮れ、PVと温度差発電のハイブリッドの発想を得ました。私が数日苦労して試設計しましたが、コストダウンがむずかしい。

ところで昨暮れに米国連邦政府の森林研究所のPhD殿から6年前に私が開発したマキ自動車設計ソフトを公開してくれというので3週間かけて改良し渡しました。

米国でこんな研究しているとは驚きでした。

味を占めたらしく、次のシミュレータを作らないかと持ちかけられました。かれの構想ではバイオマスをまずCross-Draft Fixed Bed Gasifier(横吹炉)でガスとタールと木炭粉にし、塩素や硫黄分を灰の方に移し、木炭粉を900oCのスチームと反応させるという構想です。こうしてできた600oC位のガスを間接的に1000oCに加熱して無触媒スチームリフォーミングさせ、SOFCの燃料にするというものです。SOFCはCO耐性がありますので200oCでシフト反応させる必要があるかわかりませんが、IGCCとちがって燃料電池燃料なら常圧反応ですからほぼ理想ガスであつかえますので難しくはありません 。ただマキ自動車向けの専用ソフトのようなものを作る気力はありません。汎用性あるものにする興味はありますが、それには一工夫必要です。 それにエクセルのソルバーは数値最適化ですので、必ずしも正解をだしてくれない。ゴミの解を沢山くれてどれが正しいかわからないところがあります。そのうちにとのらりくらり。

PRO/IIを使えばよいではないかと言ったのですが金がかかるのでエクセルにしたいというのです。

グリーンウッド
 

 



グリーンウッド様

M先生は、原発の延命はともかく新設をとめたいという意向の由、しかし、ドイツでは昨年秋に発足した新連立政権が連立協定書で、《原発は延命はするが新設はしない》と明記しています。日本は小澤鋭仁環境相が原発新設でいく方針を発表しており、新設をとめるのは逆立ちしても不可能の雲行きですよね。09/11/04 の毎日新聞によると、現在、国内では15基の原発の新設が計画とあります。この狭くて地震国の日本にさらに15基も原発を新設するというのが国の正しいエネルギー政策なのでしょうか。ドイツ人に言わせれば、これはまさに狂気の沙汰なのでは。一般国民はそういった大幅な原発新設に、無関心、それとも、諸手を挙げて賛成?

望月




望月様、

民主党はまだ原子力についてなにも検討していないと思っていましたら小澤鋭仁環境相が原発新設でいく方針を発表していましたか?朝日は何も報道していませんね。

無論ドイツでの憲法論議も一切報道がありません。新聞社は一般市民が新聞をかってくれるモーティベーションをもつニュースしか報道しないようです。

一般の日本人は失業、低賃金、貧富の格差増大、財政赤字の着実なる増加、国家の衰退という目下の問題が心配で将来の放射能汚染の可能性については気がかりではあるが考えることもおっくうというのが大多数かと推察しています。

汚染が発生して「狂気の沙汰」であったと分かるというところでしょうか。少なくとも私はもし自分が事故などで、今住んでいる場所を失うなどの不利益をうけた時、推進者である国と事業者を訴えるつもりです。その時点では予測がつかなかったという判決がでないように、現時点で予言していたという証拠を残そうと頑張っているつもりです。

ところでIPCCの二酸化炭素温暖化説は二酸化炭素より強い温暖化ガスである水分が成層圏で過去10年間で10%減少したために緩和されていると最近の米国の国家機関のNOAA観測で判明したとか。今日の朝日で報道していました。成層圏での減少の理由はまだ不明。無論対流圏の二酸化炭素濃度は水循環のため一定です。

たしかに最近温暖化が減速するどころか寒冷化しているようでした。ことしの欧州の寒波は猛烈でコペンハーゲンでのCOP-xxも意気があがりませんでしたよね。太陽黒点減少説などいろいろでてましたが、この測定結果が一番説得性を持っております。成層圏での減少の理由は追って明らかにされるでしょう。

もしこれが本当なら自然エネルギーや原発を増設して温暖化防止の論拠は無くなるのですが。

私は温暖化より、化石燃料の有限性の方が気がかりです。というわけで自然エネルギー利用は将来の人類の死活問題だと思うものですが、これをいうとすぐ原発派は高速増殖炉をもちだします。私はしかし燃料再処理なくして高速増殖炉は成立しない。六ヶ所村の再処理プラントを動かす技術を準備できていない日本にそれをいう資格なしといっていますが、そういうと場が白けます。

燃料再処理ででてくるどうしようもない半減期数万年の高レベル放射性廃棄物を数万年に渡って保管し未来の子孫に害を及ぼさない最終処分ができるという実績はゼロなわけで、特に日本のような地殻変動の真っ只中にある国で安全と断言できる人はいないでしょう。それをまげて大丈夫という国は科学への冒涜を犯していることも気がつかない。とうわけでフィンランドを除くどの国も最終処分場を決めることができないでいます。

原発推進派は高レベル放射性廃棄物の中にあるマイナー・アクチニドを高速増殖炉で燃焼させて最終廃棄物を減量化できるとしています。ブッシュ政権の頃はMHIなどに発注して研究しようとしましたがオバマはこれを金がかかり過ぎると棚上げにしました。けっか廃棄物はそれぞれの発電所で暫定的に保管せよとなっております。日本でもだれもそういいませんが、これからもずっと暫定的に原発内に分散保管することになる予感がします。これは原発を管理する企業と地方自治体の大きな負の遺産となりますが、まだ両者とも知って知って知らぬフリをしています。原発の現場にいる技術者はこれを密かにささやきますが、大部分の従業員は「くさいものには蓋」おれが引退するまでそっとしておいてくれというサラリーン症候群であります。企業の経営者、役人、政治家、皆サラリーマン化して矮小化し、次世代を食い物にしているという構図です。

原発は安いという教義もこれら負の遺産の整理のためのコストは蓋をしたままです。若い世代が原発は自分達への先輩のツケだと目覚めなければ日本の未来はない。

日本の東芝など原発建設会社は海外のプロジェクト受注に夢を託していましたが韓国に負けつつあります。日本には原発技術者の次世代が育っていないようです。そういう意味で若者が気がつき、この世界を敬遠しているからかもしれませんね。これも日本の新聞は書きません。書いて間違った企業戦士を作らないというのはあるいは英知かもしれません。もしあればのはなしですが。

というわけで負の遺産は日々増えているのに検討の俎板には乗らず、国内の原発論争は極めて不活発です。

グリーンウッド

原発の安全性へ

January 31, 2010

 


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