Fool Cell に血祭挙げたFool Governmentの軌跡

 


なぜFool Cellなのか?

トヨタの燃料電池車発売開始後、水素時代の到来などとマスコミが囃し立てているが、こんなもの何の役にたつのだろうか?

太陽電池で電池を充電する電池車(EV)で十分再生可能エネルギー時代は快適に過ごせる。太陽電池の電力で水分解し、発生する水素を圧縮して燃料電池車 (FCV)をうごかす必然性はない。

それに天然ガスなどの化石燃料があるうちは再生可能エネルギーを使って製造する電解水素は価格的に化石燃料由来水素に対抗できない。

ちなみに天然ガスから水素製造すると二酸化炭素がでる。 製造国で出すから消費国は関係ないとは言えないだろう。二酸化炭素がでる以上、総合効率が高い方が二酸化炭素発生量はすくない。すなわち圧縮天然ガス(CNG)燃料のハイブリッド車(HV)のほうがすぐれているのだ。なにも苦労してFCVを開発する必要はないことになる。

井戸元からの車輪までのエネルギー転換の総合効率を比較すると5枚目のスライドのような結果になる:

EV車が最高総合効率
CNG燃料HVが2位
天然ガス由来アンモニア燃料HVが3位
天然ガス由来アンモニア熱分解水素を使うFCVが4位
ケミカルハライド水素使うFCVが5位
液体水素で輸送する水素を圧縮した水素燃料を使うFCVが最も効率が悪い

このように、なんでFCVなんか開発するのを国家目標としたのかわからない。Fuel cellは米国では役立たずだからFool cellといわれている。カルフォルニアでEV車開発しているElon Muskが記者の質問にFCVはSilly ideaというのをみたが最近はFool Cell Carとまでこきおろしているようだ。

トヨタは市販開始したがベルトコンベヤなしで熟練工が数人で組み立てる日産3台の規模だ。市販というがまだ試作の段階だ。

現在のトヨタの白金触媒を使う Polymer Electrolyte Fuel Cellに将来はない。なぜかといえば、世界の白金生産量は180t/y。 ミライは1台当たり白金50−100g必要。白金はエンジン車の排ガス浄化にも石油の脱硫にも必要だが、それをゼロとして世界での生産全量を燃料電池自動 車につかうとしても年産180万台が上限。日本での全ての自動車販売台数500万台にも及ばない数なのだ。白金を使わない; Solid Oxide Fuel Cellは定置専用で自動車向けには使えない。経産省の燃料電池偏愛政策は文系的発想でおかし い。

東京ガスが売っているエネファームも白金が必要なPolymer Electrolyte Fuel Cellで、戸別の出力0.75kWだから単価が高く、補助金なしでは普及は無理だ。しかしトヨタのFCVの114kWのfuel cell なら燃料料電池の単価が41.2yen/Wとなる事は確か。都市ガスを水素に転換する水蒸気リフォーマーをつけてもも60yen/Wとなる。この稼働率30%とす れば都市ガス燃料として発電単価27yen/kWhとなり、競争力ある価格になる。東京ガスがこれでマイクログリッドを運用すれば電力は敗けるくらいの優 れものだ。トヨタは発電向けに販売すべきなのだ。にも関わらずなぜ炭素繊維ボンベに天然ガスを充填してCNGとして走り回ることをせず水素にしたかといえ ば、水蒸気フォーマーと触媒毒になる一酸化炭素除去装置が重くて車にはのらないからのようだ。だから精製した水素を充填すればいいと考えたのだろう。し かしCNGのサービスステーションが普及しなかったのに、どうして水素のサービスステーションは普及すると考えたのかわからない。Fool Governmentがサービスステーションを整備してくれると考えたのか。それなら甘い。

日本政府はまさにFool Cell に血祭挙げたFool Governmentに見える。Fool Governmentに付き合ってケミカルハライド水素法でマス水素輸送を狙う千代田の出る幕は何時まで経っても来ないだろう。

それに人々が車を選ぶ基準は総合効率ではない。普通の人々の選定基準は8枚目のスライドの ように給油がどこでもいつでもできることではないか? だからCNGは普及しなかったし、FCVも普及しない。アメリカはEVに向かって走り出した。EV向けのワイヤレス給電技術も各国で研究され、スマート フォン向けプロセッサ「Snapdragon」で世界を制覇したカルフォルニアのQualcomm社がMITが2006年に開発した磁界共鳴無線送電方式 (古いマイクロ波方式ではない)を使い、効率90%のワイヤレス充電システム技術を提供している。これは将来的には信号停止時に少しずつ給電するものだ。 HV車も小型車向けに汎用の48Vシステムが普及するかもしれず、水素エネルギーは誰からも見向きもされなくなるのではないか?

タイヤのゴムは電気を通さないが、補強するために金属製のベルトやワイヤが埋め込まれている。数メガ(メガは100万)ヘルツの電流だと、じかに接触して いなくても、近づいた金属片同士の間に電界が生じる。一般的な周波数の電流をインバーターと呼ぶ装置で超高周波に変換し、道路の下に敷いた金属シートの電 極線路に流す。その上にタイヤが重なると、電気が発生してカートが走る仕組みも豊橋技術科学大学の大平孝教授が2011年に考案し、大成建設と共同開発し た。決められた道路を走る車両には適用できる。バッテリーがほとんど不用ということになる。

車なんて普通の人にとればレジャー用だから燃費なんてどうでもよい。私は死ぬまでガソリンをバカ食いする4,000ccガソリン・エンジン搭載のジープ・ラングラー・サハラを手放さないつもりだ。普段はガ レージでこん睡状態だからほぼゼロエミッションカーである。

FCVのFool Cellは乗らずにガレージにいれておいても電極と隔膜は劣化してゆく。ジープは頑丈な鋼鉄製だから鉛電池以外、劣化するところがない。

FCVは税金の無駄使いは平気だが、中央官庁が怖い地方自治体と政府の補助金がほしい麻薬中毒患者の企業くらいだろう。それになにより、オリンピック祭りで 自己陶酔したいどこかの二流政治家向き?

なんで日本政府はFCV開発に血祭をあげたのだろうか?そこに電気事業税・石油税の一部をそれを支払った電力と石油事業者の技術開発に還流させる目的で作られたNEDOの存在があるといってよいだろう。

NEDOの企画には業界から出向した人間が開発、目的を作り、官僚が予算をつけるという仕組になっている。業界から出向した人間は外国の動向をみてそれを 追うような企画が増える。21世紀に入るころ米国の学者が水素エネルギーの未来予測をし、カナダのベンチャーが有機膜燃料電池の開発に成功したとき、ドイ ツのダイムラーベンツがFCV開発宣言をした。そのときFCV開発はNEDOの目標になったのである。米国でも似たような事情だったが、燃料電池の価格低 下に苦しみ、Fuel Cell はFool Cellといわれるようになったのである。

しかるに一旦組織ができるとそれを継続することが組織の目的になる。こうして15年後の今があるのである。NEDOは電力業界の強い影響下にあり、太陽電池(PV)産業育成にも後ろ向きであって、日本のPVメーカーはほぼ全滅の状態だ。


再生可能エネルギーからの水素はそのまま自産自消で

水素エネルギーに意味があるとすれば再生可能エネルギーから水素を製造して、貯蔵と輸送に使うことだろう。環境省が戸田建設にさせている五島列島の椛島(かばしま)沖で行っている浮体式洋上風車の発電単価は洋上にもかかわらず11yen/kWhであった。2014/4/8 この余剰電力を水素 にし、これをトルエンにくっつけてメチルシクロヘキサンに変換し、五島列島で最も大きい福江島に船で運ぶ実験が始まった。

環境省の当初の計画では水素製造までは考えていなかった。しかし九州電力の送電線線網が貧弱で2MWの発電量を送れないと分かり、急遽、日立製作所が国立極 地研究所より委託された南極の昭和基地での風力発電機とトルエン⇔メチルシクロヘキサンを組み合わせた水素発電.を組み合わせたのだという。

ちなみにトルエン⇔メチルシクロヘキサン法は4グループが研究している。@千代田建設。A南極の昭和基地向け日立方式。BNEDOが開発を委 託している豊田通 商株式会社、株式会社NTTファシリティーズ、川崎重工業株式会社、株式会社フレイン・エナジー、株式会社テクノバ、国立大学法人室蘭工業大学に。C石油 エネルギー技術センターの将来型燃料高度利用研究開発をしていた元ジャパンエナジー戸田第三研究室の「有機ハイドライドを 利用したオフサイト水素供給要素技術開発」 。

いずれも水素を水素化物に変換して戻すと言う姑息な手段が良くない。戻すところで熱が必要になるから輸送効率が下がる。大規模貯蔵と輸送に適しているのはアンモニア化が最適だと思う。

ではあるがトルエン⇔メチルシクロヘキサン法もアンモニア化もどこか間違っている。再生可能エネルギーは分散エネルギーである。特に家庭の屋根に設置するPVで発電した余剰電力を 使った水素は特にそうである。だ か ら、再生可能エネルギー発生地点でガスのまま地産地消どころか自産自消で使い切るべ きなのだ。そうであるなら電解水素は常圧のガスとして安価で漏れないバルーンまたは圧縮ガスとしてボンベに蓄えてエンジン発電機またはFool Cellすなわち白金資源の制約があるPolymer Electrolyte Fuel Cellで一晩で使い切ってしまえばよい。そうすると電力消費総量の14%は家庭向けなので、その分は自産自消で賄える。現在のリチウム電池が安価になる か、ナトリウム電池が実用化されるか、レドックスフロー電池が安くなれば、なにも水素にしなくともオフグリッドが普及し、自産自消が市販電力料金よりやすくなり、家庭向け電力網は不用となる。

その他の大口電力ユーザーも周辺にPV適地に移転するだろう。すでにそのような動きは始まっている。

原子力も 必要なくなる。そして何も七面倒臭い化学反応を持ち出すべきではないのだ。日本政府も民間企業も化石燃料資 源を利用していたときにできた思考形態から自由になっていない。エネルギーは資源国から多量輸送するものだという固定観念に凝り固まったFool Governmentの予算案作成者と民間の開発技術者には原子力技術者と同じような運命が待ち受けている。ゴミ箱行きということ。

これこそ地方創生の王道だろう。

ただこの実現は安価な化石燃料が安いうちは無理だ。でも今世紀後半は再生エネルギー時代に突入するだろう。

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March 1, 2015
Rev. April 10, 2015 


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