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エネルギー工学連携研究センター(CEE)第6回シンポジウム高効率発電技術の最前線2010年1月22日東京大学生産技術研究所 コンベンションホール |
三菱重工が開発した1,500oC級コンバインドサイクル、軽水炉の現状と課題、高速増殖炉の開発状況など興味のあるテーマであったので参加。
東京電力相澤常務「1,500oC級コンバインド・サイクルによる効率向上」
コンバインド・サイクルはガスタービンとスチームタービンサイクルをカスケードにして温度落差を大きくとって効率を上げる仕掛けである。順次タービン入り口温度を上げて高効率化してきた。(MHIのデータもまとめて整理)
1100oC | 1300oC | 1500oC | 1600oC | 1700oC | |
熱効率(LHV) | 48% | 55% | 59% | 61% | 62% |
第1段動翼材料 | 多結晶、耐酸化コーティング | 一方向凝固、遮熱コーティング | 単結晶または一方向凝固、低熱伝導率遮熱セラミック・コーティング | 単結晶、遮熱コーティング | 単結晶、セラミック・コーティングと耐熱合金をつなぐ金属結合層をもつ遮熱コーティング |
動翼冷却方法 | 空気冷却 | 高度な空気冷却 | 蒸気冷却 | 蒸気冷却 | 蒸気冷却 |
低NOX燃焼法 | 空燃予混合 | 空燃予混合 | 空燃予混合 | 空燃予混合 | 空燃予混合、排ガス再循環による低酸素燃焼 |
空気圧縮機 | 圧縮比30、可変静翼 | 圧縮比30、可変静翼 | 圧縮比30、可変静翼 | 圧縮比30以上、 | 圧縮比30以上、衝撃波制御の前進翼形遷音速翼列 |
圧縮機/タービン断熱効率 | - | - | - | - | 89%/91%以上 |
ガスタービンメーカー | GE | GE |
GE(単結晶、翼先端クリアランスコントロール)、MHI(一方向凝固) |
MHI | MHI |
実プラント | 横浜7,8号 | 富津4号GE、川崎1号MHI、 |
川崎火力では隣接工業地帯に熱併給事業
三菱重工塚越敬三技監「1,700oC級ガス・タービンの開発状況ー要素技術開発についてー」
高効率ガスタービンの開発ではそれぞれの国家威信をかけてきた。いままで欧米の後塵を拝してきたがNEDOの国プロのおかげでようやく世界の先端に立てた。しかしDOEは研究資金を投下して日本に再チャレンジしている。
コンバインド・サイクルはボトミングサイクル受け持つ蒸気タービンの温度が現状の600/610度ではガスタービン側の圧縮比を30以上にしなければならず苦しい。
よく日本は省エネ技術は世界のトップといわれるが、事実誤認の自己満足であることがこれでも分かる。
単結晶の第1段動翼はセラミック製の鋳型のなかに溶融状態の耐熱合金を注入したのち単結晶の種を投入して時間をかけて単結晶に育てる。
東芝電力システム社須加威夫氏「700oC級超臨界圧スチームタービンサイクルの開発状況」
蒸気システムはボイラーという多量の材料を使うため、コストの制約から高温にさらされるボイラーチューブ、配管、タービンにはフェライト系の素材が使われている。このため1998年に達成された高圧タービン入口温度は600oC、圧力25MPa、最熱温度610oC、熱効率42%(HHV)が最高であった。
国プロではこれをNi基/Fe-Ni基材料を使って、2段再熱として700/720/720oCにし熱効率46-48%(HHV)にようという開発がおこなわれている。
東大生産技術研究所金子祥三教授「石炭ガス化発電の開発状況」
1712年のニューコメン、1,776年のジェームズ・ワットの往復動蒸気エンジンは1884年の軸流多段スチームタービンの発明によりタービン時代に入った。それも250気圧、600oCでの効率40%で頭打ちになったが、ガスタービンでのトッピングサイクルとカスケードにすると60%以上の効率を狙えるようになった。
石炭火力もこの効率化の恩恵に浴するにはガス化しなければならない。
ガス化炉の形式はTexaco(GE)式のダウンフローからShell式のアップフローに向かっている。発電用にはタービン燃焼室より高温で運転するために炉壁は耐火壁より水冷壁が安全上好ましい。
脱硫は化学吸収を使う湿式から吸着剤方式に代わりつつある。
また二酸化炭素のプレコンバッション回収・隔離の可能性も秘めている。
君津共同火力時下俊一常務「鉄鋼業における高効率発電」
コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガスなどの副生ガスを集めて1,300oC級コンバインドサイクル発電をしている。効率は47.5%(HHV)で少し低いのは燃料ガス圧縮動力が余計に必要だからである。
余剰電力は外販している。
三菱化学玉井真一郎ユーティリティ部長「化学工業における高効率発電」
化学プロセスから出る廃熱はすべて自家発に使っているが、規模は縮小し原発などの買電へのシフトをする方向。というよりエネルギー多消費プロセスからの撤退しかないところまできている。
東京大学大学院工学系研究科鹿園直毅准教授「小型低温度差発電の可能性」
ローコスト化は火力発電機のような大規模化とエアコン、乗用車のような多量生産化のどちらか。いずれも重量当たりの価格はkg当たり数千円の範囲内となる。または20-30円/Wとなる。
スクリューコンプレッサーを逆用する容積形膨張機は安価。小型廃熱回収発電に可能性あり。
東京大学大学院工学系研究科田中知教授「軽水炉発電の現状と課題」
炭素回収貯留が上手く行かなければ2050年までに世界の原発は現状の390基から1500基まで増える。石炭火力の炭素回収が成功すれば580基程度。
ワンスルー型はせいぜい100年の資源量しかない。
日本の六ヶ所村の 燃料再処理系が動いていない。今あるプルトニウムは英国とフランスに委託した分。最終処分場が決まっていないなど社会受容性で問題山積。
米国は再処理はせずワンスルーのみ。廃燃料はそれぞれの暫定的に原発保管。一時期高速増殖炉でマイナーアクチニドを燃して減らすことが研究されようとしたが中断。
フランスと英国は再処理。しかし最終処分場は未解決。フィンランドのみ決定。
海外の原発は韓国など海外コントラクタに奪われるなど日本勢の力は低下している。
日本原子力研究開発機構小竹庄司FRBグループリーダー「高速増殖炉の開発状況」
資源量は1,000年オーダーとなる。
高速増殖炉はマイナーアクチニドを燃して減らすことが可能である。
冷却方式としてナトリウム、ヘリウムガス、鉛ビスマス、水を再検討したがやはりナトリウムが良いということになった。
日本の商用機は2050年頃か?
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February 4, 2010