エネルギー工学連携研究センター(CEE)

第3回シンポジウム

資源・エネルギーの長期戦略を考える

January 16, 2009

東京大学生産技術研究所 コンベンションホール

 

会社の先輩の梅田氏の紹介で知り、元上司の小松氏と出席。会社の後輩で現エネルギー研究所の鈴木君の顔も見えた。案内書と参加記は下記の通りであった。

■趣旨

2008年6月、福田康夫前首相は地球温暖化防止対策「福田ビジョン」として、2050年に世界の二酸化炭素排出量を現状比で半減、特に日本については60〜80%減とするという厳しい目標を公表しました。現首相である麻生総理も福田ビジョンを継承する姿勢を表明しており、我が国における政策的、技術的取り組みが今後加速するものと考えられます。世界の状況を見ても、EUは2050年に90年比で二酸化炭素排出量を60〜80%削減するという日本よりも意欲的な目標を掲げ、米国においても次期大統領オバマ氏の公約として2020年までに90年レベルまでCO2を削減するという目標が公表されています。途上国をどのように取り組むかという問題は残されていますが、少なくとも先進諸国は低炭素社会実現という共通の目標に向かうための体制を整えつつあるといえます。

このように世界がそれまでの経済至上主義からの転機を迎えた2008年、東京大学において、エネルギー・資源研究の拠点としてエネルギー工学連携研究センター、エネルギー・資源フロンティアセンター、先端電力エネルギー・環境技術教育研究センターの3センターが設立されました。

エネルギー工学連携研究センター設立の目的は、東京大学におけるエネルギー・環境技術に関する工学分野の国際的連携拠点を形成し、エネルギーの高度有効利用技術の開発を行うとともに、エネルギー工学の学問体系を構築し、サステイナブルな産業・社会の構築を産官学連携により推進することにあります。

エネルギー・資源フロンティアセンターは、人類社会の安定持続に即したエネルギー・資源パラダイム形成に向け、必要なフロンティア技術群を評価・研究・構築し、これを以って産・官・学連環を通じた対応機能と複合知の創成に資することを目的として、東京大学大学院工学系研究科に設立されたものです。

先端電力エネルギー・環境技術教育研究センターは、魅力ある先端電力エネルギー・環境技術を教育・研究する産学連携のしくみとして、電気事業連合会を中心とした電力エネルギーに関連する産業界の支援を得て寄附講座を中核とする教育研究センターを工学系研究科に発足させたものであり、産学一体となって世界のトップランナー技術を研究開発するとともに、将来の電力エネルギー・環境技術を支える優秀な人材育成を推進することを目的としています。

エネルギー安全保障の確保、地球温暖化防止のためにはエネルギー・環境技術におけるイノベーションが必要であり、この3センターにおける研究・教育活動が、果たすべき役割は大きいといえます。

ここに、3センターにおける産・官・学連携による取組の一つとして、将来の資源・エネルギー戦略を考えるシンポジウムを開催します。産・官・学の立場から、エネルギー・資源問題の解決のための政策や技術についての講演を行い、我が国や世界の長期の資源エネルギー戦略についてパネルディスカッションを行います。


■プログラム

13:00-13:10 開会の辞
13:10-13:35 我が国の資源・エネルギー長期戦略
経済産業省資源エネルギー庁 審議官     上田隆之
13:35-14:00 低炭素社会の実現に向けた都市ガス事業の取り組み
東京ガス株式会社 執行役員・技術戦略部長 渡辺尚生
14:00-14:25 炭素制約を含む包括的リスクマネジメントにおけるイノベーションの位置づけ
東京電力株式会社 フェロー           立花慶治
14:25-14:50 エネルギーの課題解決に向けた技術戦略とインテグレーション
東京大学エネルギー工学連携研究センター  特任教授荻本和彦
14:50-15:15 資源・エネルギー供給の長期展望と地政学的・技術的諸問題
東京大学工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンターセンター長・教授  玉木賢策
15:15-15:40 分散形電源普及拡大時の技術課題と解決の方向性
東京大学工学系研究科先端電力エネルギー・環境技術教育研究センター特任教授谷口治人
15:40-16:00 休憩
16:00-17:30 パネルディスカッション(パネリスト・各講師)
モデレーター 東京大学工学系研究科 教授  山地憲治
17:30-17:40 閉会の辞

■参加の記

生産研といえば糸川教授のペンシルロケットしか思い浮かばない。その後、なにをしていたのだろうと考えながら小田急東北沢駅から歩く。正門と13-14号館は古色蒼然たるものだがその他はモダンなコンクリート建てに変わっている。会場はA棟にあるがまず隣の学食で学生に混じって昼食を摂る。 欧米系の留学生が目立つのが他大学との違いか?

薄膜型ソーラーセルのローコスト化成功の情報は駆け巡っているらしく、経済産業省の上田大臣官房審議官が発電単価は現在45円、3-5年後23円、2020年に14円、2030年には7円とぶち上げていた。 これに関しては少なくとも3-5年後23円までは私もグローバル・ヒーティングの黙示録」で確認していることだ。その先のことは希望的な数値であろう。

パネルディスカッションで上田大臣官房審議官が蓄電池の開発に期待する旨の発言をしたので、またかと怒りを覚えた私は、「蓄電池は電気自動車には必須ではあるが、化学反応を作動原理としており、電力系統に使うことは寿命が短くコスト的に無理がある。これは個人的に『家庭用風力・太陽電池ハイブリッド発電』を体験して確認したことである。物理的原理を使う揚水発電を凌駕する蓄電器の開発はむりだと思う」と述べる。 物理的原理のスーパーキャパシタには寿命問題が付きまとわないが、まだ自動車を長距離動かせるものは開発されていない。

そして「そもそもNEDOの研究で成功したのは太陽光発電だけだ。ソーラーセルメーカー各社や製造装置メーカーが数年以内に原発数基分の薄膜型ソーラーセルの製造能力を持つようになる。これがフル稼働してグリッドパリティーが達成されれば太陽光発電が普及し、家庭からオフィスや工場への逆潮流が当たり前になる。これを前提として消費端の電圧上昇許容値のかさ上げ、あるいは200Vへのアップ、あるいは電線を太くするなどの投資をする用意はあるか」と意地悪な質問をする衝動を押さえ切れなかった。

たまたま失敗と認定されたNAS電池開発を長年させられた立花という東電の元研究所長がパネリストにいたが。うかつには答えられない。モデレーターの山地教授が「揚水発電が一番安い蓄電池だとうことはその通り、逆潮流はコストがかかる問題なので電力会社と通産省とよく話し合って検討してください」と締めくくった。

それから谷口治人教授から「 単相3線式配線を各家庭に引き込んであれば、家庭内でも200Vをつかえるのでソーラーセル導入時の逆潮流抑制を避けるためには200V契約にすればよい」とコメントがあった。

いやらしいじじいが質疑の時間を独占してパネリストが侮辱されたという感じをもたれたかなと少し反省している。

東京ガスの渡辺氏の燃料電池はこれもNEDOが強力にサポートした技術開発だが高効率コンバインドサイクルが達成した熱効率には足元にも及ばないし、二次電池と同じで化学反応を作動原理としているため、寿命が短い。アダ花として終わる運命にあると思う。東電の立花慶治氏に至っては哲学しているだけで、なにやら温暖化防止などの国際的意思決定に企業の意見が反映されない仕組みにご不満の様子であった。谷口治人教授だけがまじめに逆潮流を心配している様子で好感を持った。つぶされないようにリードしていただきたい。

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January 30, 2009


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