エネルギー工学連携研究センター(CEE)

第19回CEEシンポジウム

高性能二次電池の新たな展開

2015年1月16日

東京大学生産技術研究所 コンベンションホール

 

リチウムイオン電池開発の功績で2014年のCharles Stark Draper Prize(チャールズ・スターク・ドレイパー賞)を受賞した吉野彰氏(旭化成フェロー・日本化学会フェロー)と西美緒氏(元ソニー社友・日本化学会会員 )が受賞した。その西美緒氏がキーノートスピーカーであった。以前、吉野彰氏の思い出話しを化学工学学会誌で読んだことがある。今回西氏の話しを聞いて感 じたことはリチウムイオン電池の成功は吉野彰氏が理論的にリードし、西氏吉野彰氏はその 場を提供したというものだ。二人のコラボレーションが上手く作動した典型的な例である。西氏の話で確信したのだが、リチウムイオン電池は電力用には使えな いなということだ。あまりにデリケートすぎて弱電では良しとしても強電の世界では危険すぎる。そして西氏がト ヨタのFCVの水素燃料を化石燃料から作る限り、二酸化炭素がむしろ増えると批判したのはよかったのだが、勢い余ってPVのEnergy Payback Timeは20年とやったのには驚いた。1−3年が定説。その程度の人だ。

次はホンダのリチウムイオン電池開発者佐藤登氏の業界打ち明け話が面白かった。声ばかりデカイ、バランスを欠いて向こうっ気の強い上司の役員が capacitor(活性炭固体電極電気二重層電池)が成功への近道と思い込み、研究資源をリチウムイオン電池からcapacitorに集中したため、ホ ンダはリチウムイオン電池開発には失 敗。 失意のうちにホンダを去って、samusungのリチウム事業部を立ち上げて軌道にのせた。ソニーがリチウムイオン電池 部門を売却する決断をした数年前に日本の技術が失われることを心配した経済産業省がこの事態収拾のために立ちあげた対策委員会に呼ばれた。結局、ソニーは 売却を思いとどまったのでその話は流れた。「日本のリチウムイオン電池の開発している企業は最も大切な旭化成のような素材メーカーを大切にしていないた め、 相互の連携ができず、互いにタコツボで、無駄な研究をしている。そして国立研究所も御多分にもれず、論文とドクターの製造組織にすぎず、今まで一度も商品 が国立研究 所から降りてきたことは無い」と、日本の商品開発の体制に批判的であった。このような理由でリチ ウムイオン電池はそのうちに韓国と中国の天下になるだろうと予想している。

レドックス・フロー電池を開発した住友電気の筒井技術部長は二次電池はマルティセルにならざるをえないが、重電と放電を繰り返すと少しの品質のばらつきで 次第に 特定のセルが過放電、と過充電になり、全体の寿命がこの少しのセルのおかげででダメになる。まれに発火する。そうならないように制御する技術も開発されて いるが、金がかかるわりに全てを解決できない。この点フ ロー式は本質的にそのような不都合は生じないという話は目からうろこ。私が「事故賠償額を算入した原発発電原価」で考察したオフグリッドへの適用を質問し た。それは「電力料金が30yen/kWh、PVが20yen/kWhの差が10yen/kWhである以上、送 配電網コストが10yen/kWhもあるので電力会社に蓄電池をかってもらおうと思っても買わないだろう。しかしオフグリッド消費者は送配電網コスト 10yen/kWhがゼロとなるので蓄電池を導入する余地がある。直流家電とセット販売すれば、新しい家電ジャンルが成立する。電池メーカーのマーケット として最適であ る。もし、このオフグリッドが普及すれば伝統の中央給電方式のパラダイムは崩壊し、電力企業は無用の長物となる。家庭用のレドックスフローの開発計画はあ るか」というものだ。回答は「新聞に出た20,000yen/kWhなんてま だ目標 で実は 100,000yen/kWhだ」。それに意外に「バナジウム溶液が高価。ただ燃料電池の構造をまねれば、も少し、ローコスト化は可能だ し、高価なバナジウムにかえて別の物質(多分ウラン238?)を使えば可能性がでてくる」という。自分の開発対称のマーケットを電力会社としてしか認識で きな い住友電気の開発者には期待 できないことがわかった。といって家電メーカーは自分のテリトリーとして認識もしない。もしかしたら認識してはいるが電線屋だから電力会社には楯突きたく ないし。東大の 先生方の心境も同じだと無言で語っているようにみえた。マー!「皆で何もしなければ怖くない」それで日本は衰弱死する。

石器時代が終わったのは石が枯渇したためではない。新しい素材の青銅、そして鉄が発見されたからである。

この私の感傷に対し、原氏は日本は米国のように、採算のとれなくなった分野からは撤退し、航空産業のような高度な分野に展開すべきだという論を展開してい る。正論だ!しかし、殆どの日本の若者はそのような教育を授かれてはおらず、役に立たない。せいぜいファストフードのアルバイトしかできない。仮にいても 米国のような適材に必要な資金が回るような仕組みも存在しない。要するに日本は米国ではないのだ。

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January 17, 2015


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