エネルギー工学連携研究センター(CEE)

第16回CEEシンポジウム

原子力問題に正面から取り組む

2013年1月18日

東京大学生産技術研究所 コンベンションホール

 

核分裂生成物は1,000年で無害。日本の方針はこれを分離してガラス固化体にする方針をかえていない。マイナーアクチニドの中には半減期214 万年というNp-237ものもあるが、そもそも半減期が長いということは放射線は弱い。原研はこれを化学的に分離して中性子線を照射して無害化する研究 をしている。今回のシンポはこの研究の宣伝のようだ。

超ウラン元素のプルトニウム239の半減期は2.4万年だがプルトニウム240は6,500年だ。日本の方針はこれをMOXにして燃焼消滅するとしてい る。それでもすべては燃せないでのこるという京大の反骨の発表もあった。

使用済み燃料の組成も考慮すれば10万年の管理でよいと私は理解している。だから米国、フィンランド、ウエーデンはこの方式ですすんでいる。コストも一番 低い。



再処理しようがしまいが、大部分のウラン238の半減期は44.7億年、ウラン235は7.04億年だ。現在のU238の地球の平均核種密度は1.7E-04 kg/m3。これは地中深くの岩石にトラップされているため、放射線は岩石中で地熱となり、地表にはでてこないので、まったく問題ない。ウラン鉱石中の核種密度を数%とすれば核種密度は1.7kg/m3となり、地球平均値より4ケタ多い。そして微粉は労働者が呼吸で肺に取り込む。劣化ウランはほぼ100%ウラン238だから核種密度は19,000kg/m3となり、更に4ケタ多くなる。結果として地球に平均的に含まれる量より8ケタ多くなっている。ウラン238がいくら地球の岩石に含まれる元素とはいえ、8桁も濃縮しているものをドラム缶に入れて捨てていいわけがない。

ウランはα崩壊だから放射線の貫通力は弱い。 だから触っても大丈夫だが、内部被曝の場合、アルファ線、ベータ線放出核種が重要となり、ガンマ線放出核種の寄与は少ない。 呼吸による内部被曝は、ウラン粉末が空気中に漂う量と人間の呼吸量を積算して体内に入る量は決まる。このとき、影響を受ける部位を特定するにはウランの化 学形態をも考慮する必要がある。吸入後、水溶性の化合物は速やかに体内に取り込まれた後に排泄されるが、安定な化合物は体液への移行に時間がかかり肺の内 部に長く留まって影響を与える。ウランは崩壊してウラン系列、アクチニウム系列を形成するため、系列中の核種についても影響を考慮する必要がある。特に、 ラドンは気体であるために注意が必要である。 呼吸器に取り込まれ、その娘核種が肺胞に付着することでウラン鉱山労働者などに放射線障害を起こしやすい。公衆の発ガン性リスクとしては、石造りの家、地 下室などの空気中ラドン濃度調査が重要であるといわれ米国ではだれでも知っていることで、彼らは注意深く地下室の換気をしている。屋内ラドンによるリスク は線量に依存し、時間加重平均暴露値として150 Bq/m3あたり24 %の肺癌リスクの増加になることがわかっている。

ウランが密封されている場合には、ウランの出すアルファ線は遮蔽されているため、人体に対する影響は鉛214やビスマス214等のウラン系列でガンマ線強度が高いものだけを考えればよい。問題は容器の寿命がどうかということになる。

劣化ウランは重金属の化学的毒性を持っている。したがって、他の重金属と同様に重金属中毒の原因となる。主に腎臓の障害を引き起こす。ただ劣化ウランの毒性は鉛や水銀よりも低く、砒素と同程度である。

とい うわけで、再処理しても廃ウランをどこに捨てるかははなはだ重要な問題だと感じる。ここに再処理方針の論理的なほころびがある。プルトニウムの半減期は2.4万年程度だからわざわざ分離して燃すというロジックも分からない。もと も とプルトニウムサイクルだったものが原発運転継続のための苦肉の策で有害物を燃すという旗に持ち替えたに過ぎないのだから無理がある。

フランスの原発の使用済み核 燃料の13%はシベリアの Seversk という処に送り、ウラン235を遠心分離している。使用済み燃料yはキャスクにいれて野ずみで貯蔵されている。これは Tomsk 7 という核施設の立地する町で。下のグーグルマップの⇒のところが屋外集積場のようである。拡大するとキャスクが縦置き横置きでスタックされている模様が見 える。望月氏によるとモスクワのコメルサントという新聞が 2010年6月に2万トンの核廃棄物を輸入して最終処分を引き受けるとロシア政府にとっては、160〜200 億米$の収入になると報じているという。

モンゴルへの廃棄物投棄の案(3年くらいまえ)は、経産省の役人の動きを新聞にとくダネとして抜かれ、騒ぎになって断念した。これは東工大とモン ゴルの大学との提携関係のなかででてきていたのがどこかから漏れたようだ。ロシアは日本にそのようなサービスを高額で売りたいと切望してい るはず。

ちなみに1980年代に日本が積極的に原発を建設した時、米国の遠心分離装置の能力の不足が予見された。当時はまだ冷戦時代ではあったが、米国はソ連から U235の供給を受ける秘密契約を締結した。そしてGEはなにクワぬ顔して日本にロシア産燃料棒を提供した、とどこかで読んだ記憶がある。価格等一切不 明。


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トリウム232もα崩壊し、半減期は140億年だ。放射線は弱いがα崩壊だから摂取は非常に危険だ。だからトリウム炉も危険な廃棄物を生む。カリウム40は β崩壊で半減期12.8億年。これは我々の体内の主たる放射線源だ。減塩塩はナトリウムの半分をカリウムにしたものだ。ただカリウム40の濃度は 0.0117%と低いため人類は長い間これくらいのβ線への耐性をもつに至った。

東大がこのセミナーを開催 したのは原発運転継続のために廃棄物問題をごまかす国家方針に加担する行為で、研究費をほしいゆえの利己的な行為で、けっして長期的視野にたってもの もではないだろう。国家のためにならない行為だ。 身分保障と給与保証がないことが「エリートの証し」という金言を認識していない行為だ。ノブレス・オブリージがなんたるかを理解していない。武士の社会には切 腹という矜持があった。世も末である。

不都合なことを知っているから、質問を一切うけつけなかった。末期の組織はしばしばこうなる。聞きたいことがきけず、フラストレーションをかかえ て帰った。その質問とは再処理して残る廃ウランはフランス、イギリス委託分は今はどうなっているのか?これから六ヶ所村で出るウランから235を回収する のも六ヶ所村の遠心分離装置か?そし出てくる廃ウランはどこに捨てるのかと いう質問である。ウランは自然に存在するものだからというだけで、その先は思考停止しているようだ。いくら自然にある物質といっても半減期45億年のほ ぼ純度100%の物質を何万トンと集積しておいてだれが45億年管理するのか。α崩壊する物質だから内部被ばくにはもっとも危険な物質。原子力関係者はプ ルトニウムをどうするかしか頭にないようだが、ウランが思考にのぼらないのはどういうことか?だから原子力関係者には何かをかくしているという疑惑がつ きまとうのではないか?

まえ書きが長くなった。そのまえに逸話を一つ。プレゼン用の電源の不具合で2回もスクリーンがブラックアウトしメルトダウンした。ここらへんにも大学の弛 みが垣間見えた。



東大の田中知教授は日本は再処理の方針を 変えていない。しかし再処理プラントが旨くうごくという保証はない。そこで再処理しない方式も研究するというあいまいな方針となった。そうすると、規制委 員会がOKしても廃棄物が出口を糞つまりにして遅かれ早かれ原発はとまると悲観的な見方をしていた。使用済み燃料保管庫 の増設申請は地元 にここに永久に置かないと証明できず、OKがでない。そして糞つまりになって動かなくなるという予想であった。安倍さんがどんなに威勢がよくとも、規制委 員 の首をすげかえても、地元がOKしなければ糞づまりになるということ。だから再処理しないということになると原発の命運カギを地元が握るようになるという ことのよう。だから再処理で進むしかないといいたいようであった。だからといって再処理しても廃ウランの捨て場がないではないかと私は思う。外国に捨てる というこ とに関し不祥事があってうまくいっていないという。それはモンゴルだということをいっていた。

注)望月氏はそれは2011年日米モ核廃棄物処理場建設の秘密協定原案 発覚のことではないかと教えてくれた。2011年1月16日の「米モ共同声明」によると“The United States and Mongolia have decided to explore mutually advantageous activities in nuclear energy based on the September 2010 Memorandum of Understanding between the two countries.
朝日のなぜ米国は日本の脱原発にストップをかけるのかとの朝日のインタビューに答えて個人的見解とながら「国際的合意した1ヶ所に捨てることになるだろ う」ということを言っていた。

日本は2018に改定期を迎える米国との再処理協定を再締結してもらおうとプルトニウム蓄積の脅迫観念でうごいている。ところが再処理の最大の問 題は半減 期45億年のα崩壊するウラン238が100%近い塊として何万トンもでてきてしまい、これの捨て場はいままで全く考えていない。フランスは賢くもソ連に おくってここからウラン235を遠心分離法でとりだし、これが協定により米国に渡り、日本に高価な核燃料として売ってもうけているわけです。日本の廃ウラ ンは高い保管料をとってフランスに保管してもらっている。こうして米国とロシアとフランスは同じ船に乗って日本から合法的に金を巻き上げているという図で す。だから日本が脱原発すると金づるが消えてしまうということのよう。仮にモンゴルがOKしても無論捨て代を要求されるわけ。なにせ45億年にわたって請 求できるわけだからモンゴルにとって甘い汁。私は国際的に合意できる捨て場は南極の氷の下だと思っている。南極大陸が他の大陸と再度塊になるのは1億年は かかるだろうからである。

事故直後NHKに出演して東大教授の権威を地に落とした岡本孝司教授は今回はよく勉強してきて福島以外の事象を解説してくれた。最終結論は1号炉が一番メ ルトしているということであった。東電発表では2号炉が一番メルトしているとうことであり、私はこれでべき分布論文をまとめたのでなんか裏切られたような 感じ。でもべき分布にはほとんど影響しないのでやり直す必要はないであろう。

京大原子炉実験所の山名元教授からは六ヶ所村の動かなかったガラス固化炉は2012年末に動いたというニュースがあった。これにはビックリ。どう 解決したか興味あり。炉は壊れずに一定期間稼働したという程度のことで全ての成分がガラスに溶け込んだかどうかは??なぜならフランス製のガラス固化体も ガラス化していない部分があると聞いている。原子力村はフランスを含め透明性がないところが問題。教授は全体の物質収支を計算してプルトニウムを使い切る 運転はできないからすべての炉を寿命いっぱい使い切って日本の原子炉をすべて廃炉 にしたとき、プルトニウムは余るから米国にひきとってもらわねばと。それから2018年改訂時期を迎える再処理してよいという米国との契約の再改訂が可 能かどうか??

原研の大井川宏之氏は超電導陽子加速器と鉛ビスマス炉でマイナーアクチニドを消滅させるADSという炉の開発構想を披露したが、わたしはこれを第二の文殊 だなと思った。

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January 18, 2013

Rev. January 20, 2013


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