遠すぎた橋


昨日Fox TVで1977年の大作「遠すぎた橋」を3時間かけて観た。

ノルマンディー上陸作戦から3ヶ月後、後の歴史家にモントゴメリー元帥最大の汚点と言われた“マーケット・ガーデン作戦”の失敗の一部始終だ。

有名な俳優オンパレード。なにせ12万人の兵を動員してオランダを通過して一気にドイツに攻め込むという作戦だから、ややこしいこと限りないが、すべて現 地ロケという作り方でで何とかついてゆき、おわってからオランダ旅行時買い求めた詳細地図でその場所を確認した。太平洋戦争とちがい、ヨーロッパの戦争は 日本の戦国時代の様相に近いと感じた。

友人Yはこの映画2,3回見たという。97年頃にアムステルダム泊りでデュッセルドルフ行った時、途中この映画の舞台のアーネム(Arnhem、アルンハ イム)を通るはずだったので、捜したのだが、結局高速道路からでは、何処だか判らなかったという。激戦の行われたアーネムでライン河にかかる橋は戦闘直後 のタンクの残骸の残る橋はフラット構造で映画にでてくるアーチ型とは異なるから無理もない。アーネムの北30kmにあるアペルドールン市には観光で訪れた が。

Yは同じような激戦地のドイツのアーヘン(Aachen)には2012年に行き、大聖堂の観光もしたが・・・ライン川近辺は戦争の跡だらけという。Yのこ の映画の感想は単純に「戦争はむなしい」・・・であったという。確かに「戦争は空しい。だから平和がいい」では平和は維持できないという目でみないと。や はり我々も人間の本質について学ぶ必要がある。そういう目でもると開放者としてやってきた連合軍に対するオランダの市民の動きが非常に興味深い。特に「八月の砲声」を読んでいたのでベルギー市民の動きと同じだなと感銘をうけた。はたして日本では視野が短期的だからフランスのビシー政権のような動きがでてくるのだろうとおもう。日本の戦後のムードはこれ一色。

Yの「モントゴメリー将軍は陸軍で経験不足だからこういう敗ける戦をしてしまった」と言う見方は面白い。多分正しい見方だろう。将軍は第一次大戦はフラン ス、ベルギーで従軍したが、負傷して戦線離脱。第二次大戦はサハラ砂漠でロンメルと対峙した指揮官だったのでオランダを砂漠と勘違いしたのだろう。砂漠と 違い、市街地では最適点に降下できず、また間違って持参した無線機の発信機が違い、相互連絡ができず、戦いの鉄則である「兵力の集中」ができなかったとい う見方だがが多分そうだろう。

軍では上官の命令は絶対だから、(でないと役に立たない組織となる)下位者は疑念をぶつける程度でそのまま実行される。これは会社も政府機関も同じ原理だ から組織の失敗は上官の失敗でドラマになる。日本のようにだれが決めたのかわからないところはない。その失敗者のモントゴメリー元帥もアイゼンハワー連合 軍司令官も画面には登場しない。彼らが裁かれた映画だからこそなのだろう。

役者のギャラの大部分を取ったロバート・レッ ドフォードは第82空挺師団504空挺連隊第3大隊長の役だった。ライン川を昼間手漕ぎボートで対岸に渡るという勇敢な役だったが、画面から感動が伝わら ない。むしろ「遠すぎた橋」で苦戦し、最後は捕虜になったジョン・フロスト中佐、第1空挺師団第1空挺旅団第2大隊長を演じたアンソニー・ホプキンスのシ ブイ演技にしびれた。この人が主役だ。アーネムの市民はこの人を記念してジョン・フロスト橋と改名した。クワイ河マーチの将校を演じたアレック・ギネスを 思い出した。

October 24, 2014



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