「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」

Where To Invade Next を観て

友人Tに勧められて表題の映画をみた。2002年の「ボ ウリング・フォー・コロンバイン」と2004年の「華氏911」をみていたので迷わず上大岡まで出かける。

過去の2作より格段によい。大いに参考になった。マイケル・ムーアが世界各国をめぐって米国より優れている点をみつけて、その理由を聞き出すというノン フィクションだ。すでに知っていることもあったが、知らないことも多かった。

知っていることでは

@ アイスランドの銀行がつぶれたのは男の銀行家が投機に走った。つぶれなかった銀行は女性頭取の銀行のみ。アメリカはリーマンショック時に税金をつぎ込んだ が、アイスランド政府は頭取たちを監獄に放り込んだ。これができたのは世界初の女性大統領を出した国だから。投機や戦争に走るのは男の男性ホルモンやペニ スの大きさが悪さをするため。女性を経営者や政治家にすれば平和になる。
A フィンランドの学力レベルは世界一
B 千代田化工時代、ガスタービン、コンプレッサー、熱交換器、圧力容器はイタリアのメーカーが安くて、そこそこの品質なので沢山発注していた
C ドイツではユダヤ人迫害の歴史を国民皆懺悔している
D ノルウェーには死刑がない
E チュニジアのジャスミン革命


知らないことでは
@ フィンランドの教育が世界一の成果を上げているのは宿題をださないこと。脳は遊ばせてやれば生き生きとなり、よく覚えるという見方には打ちのめされた。日本ではすべて文部 省が詰め込みをさせているとおもっていたが、文部省は放課後の部活動のお休みの日を提案しようと画策していという新聞記事をみた。そういえば20年前、息 子の中学で先生方が部活に力を入れていると自慢しているのを不思議に思ったものだったが、どうも暴れる教室にならぬように先生方が必死で部活でガス抜きし ていたのではとハタと気が付いた。結局、詰め込み、お受験という構造から出てきた荒れる教室を部活で押さえようとした構図が見える。不都合なことがあると それを直接たたくという行動しかとれず、根本対策をとらないというバカなことをしていたわけだ。比較的右寄りの人は日教組の赤狩りというマッカーシー流の 策動をしていたように記憶している。とかく右寄りの人間は認知能力が低く、自分は正しいと主張するようだ。文部省は何の思想もなくただ漂流していうだけの ように見える。
A イタリアの縫製工場やドカッティーというバイクの工場労働者は2時間の昼食休み、年8週間の有給休暇をもらえる。結婚すれば15日のハネムーン有給休暇が もられとらなければ積み立てられる。要するにゆったりと人生を楽しめば、生産性はおのずから上がるということ
B ドイツでは経営者の半分は労働者代表。会社の上司が社員の帰宅後や休日にメールや電話することは違法
C フランスの学校給食はフルコースでシェフが給仕してくれる
D ポルトガルでは麻薬は罪とならず、治療対象となる。そうすると麻薬患者はいなくなる
E ノルウェーでは極右の男が55人の学生を惨殺したが、死刑制度を導入することはなく。息子を殺された父親もそれでよいという
F ノルウェーの監獄島の一軒家で鍵は囚人が持っている
G スロベニアには18年前に訪問したが大学の授業料はゼロだとは知らなかった。沢山の米国からの留学生が大在い る
H ベルリンの壁はハンマーで小さな穴をあけているうちに大きくなってついに倒壊した
I 米国は奴隷制度でテークオフしたが、公民権運動で投獄され、選挙権をはく奪されたままの人がまだ大勢いる

さてすべてに共通していえることはアメリカより優れている各国の長所はすべてアメリカ発のアイディアを取り入れて始めたものだったが、発祥の地アメリカで は消え去ったものだということ。日本、中国、アジアには取材するような長所や優れた文化はなにも見つからなかった。

なぜアメリカではこれができないかという国防費に税金が消えているためとマイケル・ムーアはいいたいようだ。これを是正するのはベルリンの壁方式が有効? 私はもう一つ、小さな国では可能だが、アメリカのような巨大な国は意見が割れてしまい難しいのかもしれないなとは思った。トランプ候補はしかし、この矛盾 に乗っているのかもしれない。

日本は米国のように巨大な国ではないので、バーカジャネーノ。それとも米国のような巨大な国なのか?

この映画には出てこないがOECD調査の購買力平価での各国の賃金順位は下表のとおりで日本のみ一人負け。


1991
2014
アメリカ
4
2
日本
9
19
ドイツ
10
12
イタリア
12
20
フランス
14
15
イギリス
15
13
フィンランド
17
16
ノルウェー 18
5
韓国
20
17

June 3, 2016

Rev. June 5, 2016


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