最近思うこと

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1999年1月17日の最近思うことのうち、貨幣供給量増加に関する日本政府の動きは興味深いのでフォローしてみようと思います。なお括弧内は記事には区別されていないが文脈から追補したものである。

知り合いの元興銀、現在、某国立大学の経済学部教授にマネーサプライ増の可能性につき質問したところ否定的なコメントが帰ってまいりました。

同日、クルーグマン教授の翻訳本で「グローバル経済を動かす愚かな人々」という本を霞ヶ関の本屋で入手しました。これによるとマネーネーサプライを増す方法として日銀が国債を買うことをすすめております。(文意から市中から買うというように理解)

現在のように大量の国債を市中銀行に買わせると、金利が上昇してデフレスパイラルにしてしまうのはあたりまえ。ではないですか?と考え、2月3日に追加アップしました。

朝日新聞朝刊にクルーグマン教授の1月20日のフィナンシャルタイムズの記事を みてついに自民党の一部の人々が日銀が(新発)国債を買うことを検討すべしと言い出したと報道されました。通貨供給増に関し、私がはじめて目にした記事で す。しかし、宮沢大蔵・日銀は後ろ向きとのことです。解説によると、現在日銀は月当たり4,000億円。年間4兆8,000億円のマーケットからの国債買 いきりオペレーションをしているそうです。

国民総預金1,200兆円の0.4%に過ぎないわけで す。このようにつつましいのはインフレ防止のため、預金引出し額に等しい枠内で通貨供給をするという日銀内規で行っているからとのことです。金利をゼロに することもインフレを発生させるのですよ。それでもインフレどころかデフレ真っ最中でしょう。内規はしたがって論理的矛盾じゃないでしょうか。むろん新発 国債引受は各国と同じく財政法5条で禁止されているのでやる必要はないのでしょう。

同じ朝日でルービン財務長官もダボスの世界経済フォーラムで大蔵省の出席者に非公式に期待を表明したと報道されました。ただし、日銀が直接国債を買うことを検討すべしとまでは言わなかったようです。

日経でもイングランド銀行幹部が悪い金利高のリスク回避のため、(既発)国債の買い切りオペの増額を検討すべきといっていると報じておりました。

朝日朝刊一面中央には日銀による(新発)国債引受けは悪性インフレを引き起こすという見だしが踊っておりました。参院財政金融委員会で速水総裁が述べたとのこと。野中官房長官はあきらめていないようです。

同5 日の日経には浮上する禁じ手とかタブーは破られたいうタイトルが出ておりました。かっての戦時経済の再現だというのです。大原一三衆議員が口にしはじめた のだそうです。日銀(新発国債)引受は1932年の大恐慌の折り時の高橋是清蔵相がはじめたものだそうです。しかし戦後の超インフレの元となったという反 省から日本銀行百年史には「本行の長い歴史の中でも、最も遺憾な事柄であった」と書かれているとのこと。

中谷巌一ツ橋教授は「(日銀の新発国債引受は)財政の規律を失わせ、長期的に制御不能のインフレを招きかねない」といっております。

日本総合研究所理事長の若月三喜雄氏は「(日銀の新発国債引受は)麻薬のようなもの」とこれも否定的です。

日銀の篠原審議委員は「ルービン長官の求めた金融の量的緩和にすぐ対応すべきとは思わない」といっているそうです。

鳩 中雄二三和総合研究所主席研究員はデフレ経済から脱却するには新発国債の引き受けは無論のこと、短期金利低め誘導、既発国債の買い切りオペの増額、預金準 備率の引き下げ、公定歩合引き下げの全てを順に行うべしとただ一人賛成しております。日銀券発行高残高の1割に相当する5兆円の国債を時限立法で引き受け ることで際限なき国債引受と、悪性インフレ防止も可能と指摘しました。

日曜のテレビ座談会で堺屋経済企画長長官が、個人的意見として「新発国債の引き受けよ りは既発国債の買い切りオペの増額のほうが市場の評価をえることができるので優れている。新発国債の引き受けは官僚の恣意的操作の危険があり、戦時国債増 発のような危険性がのこる。」と発言しておりました。

日経の経済教室で大阪大学名誉教授の安場保吉氏がマクロ経済の教科書には景気対策には 固定為替相場制下では財政政策を、変動為替相場制では金融政策を行えと書いてある。しかし「流動性の罠」に陥っているときには財政政策がただしく、日銀の 市中よりの国債の買い切りオペレーションの拡充が必要としている。しかしそれでも十分ではなく、戦後タブー化してきた新発国債の引き受けも臨時・緊急措置 として柔軟に検討すべき時がきていると書いている。

自民党の加藤元幹事長は日銀の市中よりの国債の買い切りオペレーションですら反対だとテレビで報道していた。

元経済企画庁事務次官赤羽隆夫氏は日経の経済教室シュペンターの「ケインズ政策はモル ヒネ中毒を招く」という言葉を引用して日銀による(新発)国債引き受けを強く批判している。一方クルーグマンは1998年12月3日のハングオーバー理論 という論文でフリードリイヒ・フォン・ハイエクやジョセフ・シュペンターのビジネス・サイクルに関するオーストリー理論または過剰投資が誘発する不況論は 禁欲生活によってかっての繁栄を取り戻そうという道徳的に魅力的なものなので、世間に訴えるが、不況は人々に金を使わせれば回復するものなので、不況克服 には害さえあると説いている。

このようなわが国の経済官僚の信念こそわが国の不況の原因ではないか。 12日に予定されている日銀の金融政策決定会議もこのようなあやまてる理論によってなされるならば、不況克服は悲観的にならざるをえない。ここに異例なが ら出席するといわれている堺屋経済企画長長官の成功を祈る。長官に投票権はない。

経団連の今井会長と大蔵省の田波事務次官は日銀の市中よりの国債の買い切りオペレーションの拡充は望ましい、ただし新発国債の引き受けはやるべきでないと発言。

テレビ朝日ニュースステーションでとんでもない解決法として日銀引き受けを外圧として茶かしていたが、新発と市中からの買い入れの区別もなく、従って理解も無く知ったかぶりしている久米さんも困ったもの。マスコミもも少し勉強してほしい。

日銀は7時間に及ぶ金融政策決定会で短期金融市場の金利誘導目標を0.25%から0.15%に引き下げることを決定。即日実施とした。公定歩合は0.5%に据え置く。ただし、長期国債の買い切りオペの増額は審議委員全員の反対で見送った。野中官房長官は期待を表明。

宮沢蔵相が4,000億円分の10年物の長期国債を中期国債に切り替え1月は中止していた資金運用部による国債買い入れを再開すると発表。長期金利が急低下し、円安(117円)、株高となった。

クルーグマン教授は日銀はインフレ期待を持たせるように行動せよといっているのに、1999年初頭は日銀の国際引き受けという場外乱闘になってしまいまった。その後、日銀はゼロ金利政策を打ち出した。

日銀のゼロ金利政策が一年経過した時点でも日本経済がデフレから出た兆しは見えない。この時点での新聞に出た経済学者の 論調には二系統ある。純粋東大系は日銀の主張を支持しているが、米国での教育の洗礼を受けた学者や一橋系はクルーグマンを支持している。興味ある現象では ないか。東大マフィアが日本をダメにしている?

日銀のゼロ金利政策について・・・ゼロ金利がすじ、量的緩和はバブル招く…斎藤精一郎立教大教授(東大卒)

為替レートについて・・・円売り介入は慎め、明確なインフレ目標を…清水啓典一橋教授(一橋大博士)

日銀のゼロ金利政策について・・・インフレが始まるまでゼロ金利政策を徹底継続か、打ち切るか早い時期に決め発表 すべき。相反するように見えるがいずれでも有効。日銀が態度を明確にしないのが最悪。…斎藤誠大阪大学助教授(京大卒、MIT博士号)渡辺努一橋大助教授 (東大卒、ハーバード博士号)


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