北海道

大雪山*縦走・十勝岳*・富良野岳

2007年8月5-10日、Wakwak山歩会始めての北海道山行は北海道中央部に聳える大雪・十勝山系を目指した。高 山植物に彩られた北海道の屋根、大雪山の最高峰旭岳(2,290m)から黒岳(1,984m)へと縦走し、活火山十勝岳(2,077m)の噴煙を嗅ぎ、富 良野岳(1,912m) の花を楽しんだ。往復JALを利用した5泊6日の山旅であった。マー幹事の目論見は毎日100%天然温泉で老筋を癒しては、後半は自炊宿に3連泊しながら 十勝の山々をのんびりと登り、更にレンタカーを活用し、移動日などでオーバーワークを極力防ぐことにあった。

北海道地図

5月以降3ヶ月、手術で休んでいたクリさんも復帰しての久しぶりのフルメンバーの参加となった。

第一日8月5日(日)

藤沢駅前より江ノ電バスで羽田の第一ターミナルに向かう。バス利用は初めてだが、重い山道具を持って階段を上り下りしないで済むので便利だと痛感する。

羽田12:00発JAL523便で新千歳13:30着。レンタカーにて札幌経由、自動車道にて旭川に向かう。北美瑛経由で忠別川流域に入る。2004年7 月の大雪山 周遊ドライブのとき目撃した建設中の ロックフィルダムは完成していて満々と水をたたえていた。重力式コンクリート部分は当時よく見えなかったがロックフィルダムとの複合ダムとのこと。用途は 特定多目的ダムとのことだが、水は余っているらしい。この湖面に夕日に輝く旭岳が映っている。旭岳の左には旭岳に次ぐ高峰北鎮岳(2,244m)がチョ コッと頭を出している。その左手には比布岳(ひっぷだけ2,197m)と愛別岳(2,112m)も見える。 新観光名所の出現だ。

別ダム湖に写る右から旭岳、北鎮岳、比布岳、 愛別岳

旭岳温泉「ラビスタ大雪山」着。登山の基地としては少々贅沢だが、ここしか宿がとれなかったのでやむをえない。(Hotel Serial No.398)ホテルの部屋から 旭岳を望める。

ラビスタ大雪山

自室から仰ぎ見る旭岳

早起きと運転疲れで、温泉には入らず、シャワーを浴びて寝てしまう。


第二日8月6日(月)

4:00起床。コーヒ豆を手挽きで粉にしてフィルターで4人前のコヒーを入れる。買い置きのパンで朝食。ホテルが用意してくれたおにぎりは昼食用とする。 朝一番の6:00発の旭岳ロープウェイにて姿見駅に登る。101人乗りのゴンドラは軽快なデザインのスイスのガラベンタ社製だ。6:15姿見駅 (1,600m)から登坂開始。

姿見の池から旭岳を望む

登山路の左側の地獄谷からは盛んに蒸気を吹き上げているが右手は大雪山系の山並みが見張らせる。左手遠方に音更山(1,932m)、石狩岳 (1,967m)、ニペソツ山(1,013m)が見える。手前に 高根ヶ原というなだらかな高原が突然終わり、切り立った崖になっている。この崖で終わる高まりが忠別岳(1,962m)だ。忠別川の源頭にある山で切り 立った崖は侵食で形成されたものだ。その右手遠方の雲のなかにトムラウシ山(2,141m)があるはずである。そしてその先にオプタテシケ山、美瑛岳、十 勝岳、富良野岳が隠れている。 手前下の旭岳の麓の旭平の潅木の中には池塘が散在している。

左手遠方に音更山、石狩岳、ニペソツ山、近く忠別岳と雲の中のトムラウシ山、オプタテシケ山、美瑛岳、十勝 岳、富良野岳

ニセ金庫岩と金庫岩を廻りこむころにはガスの中に入る。8:45山頂に立つ。視野は10m位か。なにも見えない。標高差690mを2.5時間で登ったので 垂直登坂速度は276m/hとなり 、平均240m/hより快調である。風が強く、寒いので記念撮影をし、15分後には間宮岳(2,185m)に向かって下りはじめる。須走りのような急斜面 を下るとやがて雪渓にたどり着く。旭岳と後旭岳がつくる窪地に残る残雪である。雪渓に沿って下 ってゆくとどうしても横断しなければならないところに来た。アイゼンは持ってきていないため、滑落しないように用心して下る。窪地の風のないところで昼食 とする。

旭岳山頂にて マーさん撮影

旭岳南面の雪渓

間宮岳に上りなおせば巨大なカルデラである御鉢平を囲む火口壁上に出たことになる。10:50間宮岳 着。霧で何も見えない。強風と雨の中を中岳分岐に向かって下る。火口壁にはまだ残雪が残っているのが見える。頭痛がするが我慢して中岳(2,113m)に 上りなおす。7月はパスしたため 、訓練不足で、ももの筋肉がこわばってつっ張りそうになる。そうはさせじと登坂速度を落とす。カッパの下には化繊の薄いシャツと肌着を着ているが フード頭巾をかぶらなかったために首筋から入った雨水のためか、汗のためか、濡れて冷たくなっている。幸い雨風は後ろから吹いているので助かる。

ようやく 北海道第二の高峰北鎮岳への分岐に来るが、風雨が強く、視界も利かないのでパスして雲ノ平に向かってだらだら坂を下る。やがて御鉢平展望台に到着するが殆 どなにも見えない。更に下ってゆくと御鉢平から流れ出す赤石川が作る渓谷がかすかに見えてくる。

赤石川がつくる渓谷

多少ガスが薄くなって左手には凌雲岳(2,125m)、桂月岳(1,938m)が並んでいるのがみえる。そして前方には黒岳が見えてくる。

黒岳

黒岳石室で小休止。キタキツネが登山者の人気を博していた。花畑が目にしみる。コンチャンが ストックをなくす。

石室のお花畑

黒岳中腹より石室をふり返る

14:30黒岳山頂着。層雲峡側から見た黒岳は急な崖を持っているが、山頂は穏やかな山で、北側が侵食で崖になっていることがわかる。

黒岳山頂にて  マーさん撮影

雨に濡れた石ころだらけの急斜面を慎重に下る。シマリスが眼前を横切る。16:15に7合目リフト駅着。雨の中、キッカリ10時間歩いたことになる。リフ トに乗ると雨がますます激しく降る。 カッパのポケットにいれておいたデジカメは水びたしだ。しかし防水構造のため無事。黒岳ロープウェイで層雲峡温泉に着くころにはようやく小降りになった。

本日の水平総距離は12.38km、累積登り1,039m、累積下り1,106m。

今回の縦走路で見かけた花はクリさんによれば

エゾコザクラ、イワブクロ、イワヒゲ、アオノツガザクラ、エゾノツガザクラ、チシマツガザクラ、チシマノキンバイソウ、カラマツソウ、ハクサンチドリ、ハ クサンボウフウ、ウスユキトウヒレン、ナガバキタアザミ、トリアシショウマ、ヤマブキショウマ、コマクサ、エゾウサギギク、ミヤマアキノキリンソウ、ヨツ バショウガマ、トカチフウロ、マルバシモツケ、イソツツジ(花は終わっていた。)ミヤマホツツジ、エゾツツジ、エゾオヤマリンドウ、イワウメ(花は終わっ ていた。)チングルマ、ウメバチソウ、オオバミゾホオズキ、ダイセツトリカブト、リンネソウ、ミヤマリンドウ、エゾヒメクワガタ、エゾイワツメツサ、タケ シマラン、エゾゴゼンタチバナ

であった。本州の花より色が鮮やかと感じた。

民宿とだて泊(Hotel Serial No.399)疲労困憊で食欲が ない。


第三日8月7日(火)

朝起きると腰痛が酷くなっている。今後登山が継続できるのか不安になる。 今日は移動日だ。バスで旭川に出て、駅前のデパートで夕食の食材を購入して昼食をとり。再度バスで旭岳温泉駅に向かう。ここでレンタカーを回収。一旦美瑛 にもどって反転し吹上温泉白銀荘に向かう。途中望岳台にて十勝岳の雄姿をカメラに収める。 噴火口からは噴煙が上がっている。振り返ると鬱蒼とした原始林を切り開いて牧場が見える。白金模範牧場というのだそうだ。

望岳台より十勝岳を望む

白銀荘は自炊である。(Hotel Serial No.400)地元産のタマネ ギ、ジャガイモを使ってビーフスチューを作った。ブイヨンをどのタイミングで投入するか論争になる。各家には流儀があるらしい。コシヒカリのご飯を炊いて 小田原の梅漬けと海苔で翌朝のオムスビも作る。

食後は洗濯をし、温泉に入って蚕棚ベッドにもぐりこむ。腰痛防止のため腹ばいで寝る。


第四日8月8日(水)

腹ばいで寝たためか、腰痛は治った。 天候不順のため十勝岳の代りに富良野岳に先に登ることにする。コンチャンは靴の中に雨水が入るのとストックをなくしたため、安全をみて不参加。十勝岳温泉 を6:10出発。ガスの中、安政火口分岐、上ホロ分岐、富良野岳分岐に9:05着。9:50富良野岳山頂に着く。視界50m。

富良野岳山頂にて  マーさん撮影

昼食後10:20発。花を愛でながら下山開始。幸い雨は帰着まで降らなかった。チシマフウロの花弁が露を集めて夢幻的雰囲気を醸している。

富良野岳山頂付近のチシマフウロ

兎に角一面のお花畑は見事。この山も大雪も含め北海道の花の特徴として藍色は本州よりも濃い 色をしている。

富良野岳の南面のエゾウサギギクのお花畑

富良野岳の南面の斜面は樹木がなく、谷底の原始ヶ原まで見通せる。

富良野岳の面のお花畑の中の登山路

北斜面の切り立った崖の下は緩斜面で、ここに登山道がつけられている。

富良野岳の北面のお花畑の中の登山路

富良野岳と十勝岳の中間に位置する上ホロカメトック山の中腹に開いた安政火口はいまだガスを 放出して いる。行政はここに火山活動監視用のTVが設置している。2007年12月23日、ここで表層雪崩が発生し、地元山岳会が遭難した。

安政火口を後に

夕食は上富良野町までドライブしてデリカテッセンで好みのお惣菜を食す。二度目の洗濯をして 乾燥室で干す。

登りと下りは同じ道を往復した。片道水平距離5.89km、片道累積登り683m、片道累積 下り65m。

富良野岳で新にみた花はクリさんによればムカゴトラノオ、マルバノイチヤクソウ、コモチミミコウモリ(ムカゴが付いていた)である。また車道の横にミヤマ モジズリを見た。

2017年暮れにTVで放映された十勝岳登山を観たが十勝岳は我々と同じ富良野岳に登ってから引き換えし、三峰山、上ホロカメトック山と尾根歩きし、上ホロカメトック避難小屋で一泊し、砂漠のような荒涼とした尾根を歩いて十勝岳に至るコースであった。


第五日8月9日(木)

北海道についてから4日間、不連続線が居座り、朝8:00まで豪雨。谷川が増水していて渡渉できないと2時間待って十勝岳山麓の雲の平散策とシャレこむ。 泥流分岐にむけてトラバース中、林の中で九条武子の歌碑を発見する。西本願寺の21代宗主と側室の間に生まれた武子は九条公爵と結婚した。柳原白蓮となら び大正三美人とされている。京都女子大を設立し、歌人、社会福祉家として活躍した人だ。残念ながら歌碑の文字はあまりの達筆で読めない。

近くには十勝岳の火山活動監視TVが設置されている。エゾウサギ鳴き声を聞く。増水した谷川を苦労して渡り、泥流分岐、雲ノ平分岐を通って美瑛岳方面へ2 時間登り、雷雨が来そうな雲行きとなったので雲ノ平には未着のまま引き返す。午後2時過ぎには宿に引き上げた。

十勝岳泥流に咲くエゾオヤマリンドウ

夕食は上富良野町までドライブしてデリカテッセンで好みのお惣菜を仕入れ、宿にもどってビールを飲みながら宴会とした。

白銀荘の蚕棚

寝室は蚕棚ではあったが、1泊2,500円で温泉付なので長期滞在型の登山には白銀荘はお奨め。ホンダのサイドカー付の大型バイクで北海道まで来た人は怪 我をして1週間もここで直るのを待っていた。


第六日8月10日(金)

8:00には白銀荘をトヨタカローラで出発、札幌に向かう。

白銀荘とトヨタカローラ

富良野で富田ファームに立ち寄る。ラベンダーは終わっており客が少なく、ラッキー。エセンシャル・オイルを土産に購入。ここではじめて富良野岳の山頂が雲 から姿を現す。三段滝パーキング と旧住友奔別炭鉱立坑で小休止する。奔別炭鉱は1880年に発見され、立坑の高さは50m、深さは1,100mとのこと。1971年に閉山と説明板にあ る。

富田ファームにて

旧住友奔別炭鉱立坑

三笠ICから札幌までは自動車道。北海道大学の付属病院に駐車し、ポプラ並木と理学部を見物。理学部旧館は改装されて博物館となっていた。コンチャンが札 幌駐在だったころ贔屓にした狸小路のラーメン屋を探したが、主人が亡くなって閉店したとのこと。代りに近くのラーメン大公でミソラーメンを食す。

理学部前で コンチャン撮影

羊ヶ丘展望台を訪問後、千歳空港に向かう。羊ヶ丘展望台は社団法人化されて有料になり、ドーム球場が無粋な姿をさらし、レストハウスなどの無用の施設が増 えてかってのロマンあふれる雰囲気はなくなったとマーが悲しがる。

18:20発のJAL534便で羽田に帰り、江ノ電バスで藤沢に帰った。

August 14, 2007

Rev. December  19, 2017


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