デーナー・ポイントとサンファン・キャピストラーノ伝道所

1984年、たまたまスマトラ島のアルンLNGプロジェクトでニューポート・ビーチに出張中のことである。週末、モービル社のエンジニアリング・マネジャー、エステファン氏とサンファン・キャピストラーノ (Theme Park Serial No.124) と いうかっての伝導所の遺跡を尋ねた。メキシコがまだスペイン王の統治下にあった時、大西洋岸に40マイル毎に伝道所が建設されていたという。その一つの廃 墟である。4個の鐘をつるすしたレンガ壁とそれにまつわるブーゲンビリアが美しかった記憶がある。手元に残った入場券には1776年11月1日設立とある。そしてチケットの下にVAYA CON DIOSと書いてある。どこかで聞いた歌の歌詞にあった。そうナット・キング・コールの歌だった。スペイン語で文字通りでは「神と共に行きなさい」、通常 は「「さようなら」の古語。

伝導所の遺跡を訪ねたあと、エステファン氏所有の貸家を視察にサンジエゴに向かい南下中のことである。突然大平洋に望む眺望のよい絶壁に出た。案内板によるとデーナー・ポイント (Theme Park Serial No.125) という。ボストンから出港してホーン岬周りで現在のスペイン領、カルフォルニアに牛皮のトレードに来ていた帆船が沢山あった。リチャード・ヘンリー・デーナーという若者がピルグリム号という帆船に水夫として2年間乗り込んで、この断崖で牛皮を帆船に積み込む仕事をした。

この経験を後にハーバードを卒業し、弁護士になったときに「マストの前で二年間」という本にまとめて出版した。欧米では先のスローカム船長の単独航海記とともに海洋文学の傑作として知られている。

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R.H. デーナー著のTwo Years before the Mast

かってこの本を読んだことを思いだして、思わぬ出会いに感激した。デーナー・ポイントの下の海は今では贅沢なヨット・ハーバーに変わり、なかなか瀟洒なレストラン がある。その内の一つ「Wind & Sea」 (Restaurant Serial No.22) というところで優雅なシーフードをエステファン氏と楽しんだことは言うまでもない。次の日曜日にはロスのマリナ・デル・レイ(Marina Serial No.83) でヨットとチャーターしてデイ・セーリングを楽しんだ。

エステファン氏は初期キリスト教徒であったコプト族の子孫で、奥さんは気さくで太っ腹なオランダ人であった。この奥さんには安いイワシを多量に仕入れて、煮込み、保存食を作ることを教わった。オランダでは一般的な料理とのこ とであった。

Rev. May 13, 2016


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