読書録

シリアル番号 935

書名

香華(こうげ)

著者

有吉佐和子

出版社

新潮社

ジャンル

小説

発行日

1970/9/20発行
1971/6/20第3刷

購入日

2008/03/06

評価

華岡青洲の妻」を読んで有吉佐和子のとりこになり母の書棚より抜き取って読み始める。

この長い小説を読破して感ずるのは関東大震災から太平洋戦争にかける時代を全力で生き抜いた一人の女の一代記、あるいはその人格形成を記述する大河小説だということだ。読み終わると一種のカタルシスを感じる。特に母と娘の感情の相克は息詰る迫力である。一種の転落と甦生のストーリーだが、花柳界の風俗をよくここまで取材して書いたものだと感心する。文化史の記録としても優れている。

義姉によれば有吉佐和子、向田邦子、澤地久枝はともに昭和5年生まれの、引き上げ者という。このため外部から客観的にながめる「外地育ち」「エトランゼ(異邦人)」の視線があるといわれる。有吉佐和子は 読者に熱烈に受け入れられたにもかかわらず、私小説作家や評論家中心の文壇には受け入れられず、賞とは無縁であった。最後は追い詰められて自殺することになる。

Rev. April 4, 2008


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