読書録

シリアル番号 583

書名

アダム・スミスの失敗

著者

ケネス・ラックス

出版社

草思社

ジャンル

経済学

発行日

1996/4/30第1刷
1996/5/30第2刷

購入日

2003/07/13

評価

鎌倉図書館蔵、原題:Adam Smith's Mistake How a moral Philosopher invented Economics and ended morality by Kenneth Lux

著者は心理学者。心理学からの経済学批判。経済学の生みの親、アダム・スミスが経済の原動力をすべて利己心(Self Interest)に結びつけたので、現代経済学は問題を抱えるようになったという主張。

アダム・スミスの最も有名な文章は「私たちが日々食事を摂っているのは、肉屋やパンやの慈愛心(Venevolence)によってではなく、彼ら自身の利害に対する彼らの関心によるものである。」である。著者はアダム・スミスは「・・・自愛心<のみ(only)>によってではなく、・・・」と書くべきだったと主張する。スミスが「見えざる手(Invisible Hand」を持ち出したことからもスミスの本性ともいうべき民主主義的な精神が利己心をすすめたのは実は利己心に対抗するためだったというパラドックスにある。

利己心はしかしそのままでは必然的に欺きや不正直さをこたらす。欺きは環境との関係でも発生する。環境にツケを回すことである。環境の収奪、破壊、汚染などである。ただ環境問題には実体がなく所有権をめぐる不一致により発生しているだけである。

東ローマ帝国によって確立した王権神授説は後の時代にニコロ・マキャベリやトーマス・ホッブスによって社会契約説にとって変えられる。ここで西洋では神は死んだのだと思う。


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