読書録

シリアル番号 442

書名

自己組織化と進化の論理

著者

スチュアート・カウフマン

出版社

日本経済新聞社

ジャンル

進化論

発行日

1999/9/13第1刷
1999/11/17第4刷

購入日

2000/02/28

評価

原題:At Home in The Universe----The Search for laws of Self-Organization and Complexity

サンタフェ研の成果。久しぶりに夢中で読めた本である。生命の起源とダーウィンの進化論への仮説。

2000/05/30完読。

原子核の連鎖反応は臨界点を越えるとどこまでも反応を続ける。化学系も同じく、自己触媒的集合体で全体としては臨界点をこれると分子種が分子種を生み、 1000万種の小さな分子量の有機分子と1兆種のタンパク質という多様性を作り出しているが個々の細胞は臨界点の手前にいなければ死をまねく。臨界点の手 前と越えた領域との間に相転移がある。

生命の起源を複雑性理論の自己組織化から説明し、技術の進化、経済理論、政治体制の合理的説明をしようというもの。

哲学者カントは生物のことをオートポエーシス的統合体と呼び「各部分が全体のために全体の力を借りて存在し、また全体も部分の力を借りて部分のために存在している」と考えた。

フンベルト・マツラーナとフランシスコ・ヴァレーラは「オートポエーシス」とは「自ら作り出していく力を持つシステム」とした。

なぜオートポエーシスなるものが可能となるのか?そのヒントとしてプログラミング言語のリスプ、あるいはアロンゾ・チャーチが普遍的計算をこなすシステム として考案したラムダ文法を上げる。ラムダ文法はアラン・チューリングのチューリングマシン、論理学者エミール・ポストが開発したユニバーサリティークラ スと等価である。理論化学者ウォルター・フォンタナがRNAが行う自己触媒反応をラムダ文法で説明しようとした。

自己組織化臨界現象は砂が降ってくる砂山の動的平衡と同じ。地震の規模を地震により開放されるエネルギーの対数(リヒター・スケール)で表示すると分布はべき乗則に従う。

秩序とカオス間の相転移点上(カオスの縁)にある現象はほとんどべき乗則に従う。ただしデビッド・ラウプの研究のようにカンブリア紀以降の化石に見られる現実の絶滅現象やトム・レイの人工生命の絶滅現象は 大規模な絶滅は小規模ほど発生せず、対数座標で直線とはならず曲がってしまう。即ちべき乗則と正規分布の中間的ふるまいをする。これは化石サンプルは秩序領域にあるからと考えられる。生命すべてを含む範囲のおおきなところではべき乗則に従う。トム・レイの人工生命も コンピュータノ有限サイズによって制約をうけたためと考えられる。

スターリン主義は秩序領域にある。イタリアの左派はカオス領域、部分組織と部分組織の共進化はカオスの縁。部分組織が多く、規模が小さいとタリアの左派に なる。世界が複雑でなく、エネルギー局面が滑らかなときは一つの組織であるスターリン主義が最低値を探しうる。ただ部分組織が結合すると極小値をさがすこ とができるようになる。そして部分組織が最適のサイズにあるときに秩序とカオス間の相転移点上(カオスの縁)にとどまる。

部分組織への分割手法として「受け手本位のコミュニケーション」をする組織に分割することが大切。これは近くにいるもの対し優先的に返答することである。鳥が群れをなす行動にやや似た全体的調整である。

カオス関連の本はこの他にも、00705305405505613129930844271010221062107810811082

Rev. June 3, 2011


トップ ページヘ