読書録

シリアル番号 388

書名

ノモンハンの夏

著者

半藤一利(はんどうかずとし)

出版社

文芸春秋

ジャンル

戦史

発行日

1998/4/20第1刷
1998/5/15第3刷

購入日

1998/06/16

評価

失敗の本質」という本でノモンハン事件と辻参謀のことは読んで概略知っていたが、今回文芸春秋社元編集長半藤氏の近著に関する京大教授山室氏の書評を読んで早速入手し6日で読破してしまった。最近の日本の政界、官僚、経済界、企業内の問題がノモンハンににおける一連の経過、またその後の太平洋戦争に至る過程となんと似ていることか。被告は日本陸軍参謀本部作戦科と関東軍作戦科である。共通の問題とは組織の指導部の機能不全である。なぜこうなるかを見るに論理性の欠如と情緒に流されるという社会性に行き着くのではないか。このような社会でトップがみこしに乗っていると辻参謀のごとき、思い込みの論理で武装し、突っ走る元気いっぱいの若手将校の下克上がまかり通り。悲劇への道をひた走る。良識は卑怯者として抹殺されてゆく。司馬遼太郎氏が描こうとして果たせなかった気持ちがわかる。「驕慢なる無知」によって理不尽な死を強いられた人々に我々が手向けることができることは、このような過去を知り、歴史を繰り返さないようにすることだろう。ただ半藤氏の日本のジャーナリストが一般に持っている知ったかぶりの論調はせっかくの素材を安っぽくしている。司馬氏の筆で読みたかった。


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