読書録
シリアル番号 |
1357 |
書名
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STAP細胞はなぜ潰されたのか
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著者
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渋谷一郎
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出版社
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ビジネス社
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ジャンル
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サイエンス
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発行日
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2016/5/3第1刷
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購入日
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2018/11/19
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評価
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優
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STAP細胞騒動は後に放送倫理・番組向上機構から小保方晴子に対する人権侵害とともに重大な放送倫理違反を指摘された2014年のNHK報道を見て憤慨
し、みずからネットを渉猟して情報を集めて友人とのメール交換をして理研とか早稲田大学、日本の科学界全般、そしてマスコミ批判を繰り広げたものだが、世
間の風向きが小保方氏の否定一色になり、一人抵抗していると家族にも誤解される恐れがでてきたため、2016年小保方晴子氏の弁明の書「あの日」(講談社
刊)が出版されたときも店頭で拾い読みしただけで、買わなかった。しかしこの本はすぐ評判になり、結局発売一ヶ月以内で26万部売れ、印税は3,640万
円だったそうだ。
同じ分野のバイオ研究者として東大の修士課程に居た親類の子の母親から「東大では先が無いから米国のカルフォルニア大の博士課程に進みたいがどういうもの
か」と相談されたとき、大変結構、ただし、卒業してから日本には帰って来るつもりなら甘いと」アドバイスした。母親としては「無論そのようなことは覚悟し
ている」というので前途を祝福した思い出がある。
こうアドバイスしたのは何もSTAP細胞騒動の影響だけではないが、日本の社会は文系支配で、理系は委縮して卑屈になっているために、米国のような理系の
才能を伸ばしてその成果を分け合って共に生きるという社会意識がない日本ではすべて文系の形式主義で動いていると日頃、感じていたためだ。形式は本質的で
はないので、日本の技術開発力は衰退し、技術で差別化している資本主義社会で日本は没落傾向にあると日頃思っているわけである。
そういうわけで本件について果敢に発言されている西岡昌紀氏のコメントを時々FBで読んで再確認する程度であった。西岡昌紀氏は「自由人のエネルギー勉強会」で知り合ったのであるが、氏は大変な音楽愛好家であり、2018年11月17日氏のお誘いで紀尾井ホールで天満敦子の演奏会にでかけたおり、本書の著者である渋谷一郎氏を紹介され、御著書もいただいた。渋谷一郎氏は大学で基礎電子物性を学んだ方であるが、電気関係の専門出版社に勤め、独立してサイエンス・ライターになった方である。
読み始めると久しぶりにSTAP細胞騒動の世界に没入できた。本書は小保方晴子氏の弁明の書であり若山氏告発の書である「あの日」にそって事件を解きほぐしてゆく。途中で本件小保方支持派からドロップアウトした者にとっては親切だ。
著者はSTAP細胞騒動が燃え上がった原因をいくつかに分類している。STAP細胞がでてくると困る京大のiPS細胞研究者やミューズ細胞を研究する東北
大一派がこれをつぶそうとかかり、マスコミに情報を流しててけしかける。そして理研内部の権力闘争もあったし、理研の特定国立研究開発法人指定も騒動に火
をつけたと言える。最後の要因としては「嫉妬」であろうと著者は指摘するが、私もそう思う。その理由として批判派に日本分子生物学会理事長大隅典子氏や大宅賞をもらった「捏造の科学者」の著者
毎日新聞記者須田桃子、twitterで理研の姿勢を批判した高橋政代氏、日経サイエンス誌の古田彩氏、科学ライターの詫摩雅子氏など女性が多いのだ。
小保方さんが女性として魅力的であったことも嫉妬の原因だろう。大分古いが「王様と私」の劇中劇でアンクル・トム物語が演ぜられる。この劇中劇でてくる女奴隷のイライザ役に
そっくりである。特にこの事件に関与して小保方批判派の情念はここに尽きる。科学的真実などは興味はない。加えて足の引っ張り合い、予算分捕り合戦、権力
闘争。
小保方さんの博士号を剥奪した早稲田大学などピエロのように不様だ。社会的な強い風が吹いている時の科学界の様子をみていると空恐ろしくなる。もうノーベル賞など望みうすだろう。
キメラ細胞を作ってSTAP細胞であることの証明をした若山氏がキメラ細胞を作る素材のマウス管理が雑であったことに気が付いたのか急に恐ろしくな
り、独断で論文を取り下げ、STAP細胞はES細胞だたっと思わせる疑惑を遠藤高帆氏に流布させて以後沈黙を守って今日にいたる。これはかなり卑怯な行為である。懲罰委員会の席で小保方
氏が「私はポスドクだったので」と述べると委員会の全員がきょとんとした顔をして「誰の指導下だったのですか」と聞かれたという。「若山研です」と答える
と懲罰できなくなったという。呼ばれた委員はすべて小保方氏はユニットリーダーだと思い込んでいたようだ。日本社会は全く貧しく、姑息で卑怯な社会だと、気も重くなる。
小保方氏は2018/3/25に中央公論新社から「小保方晴子日記」という本を出している。