読書録

シリアル番号 1229

書名

なぜ病院に「殺される」と言われても誰も反論しないのか?

著者

田島知郎

出版社

青萌社

ジャンル

医学

発行日

2015/2/6第1刷

購入日

2015/05/08

評価



著者の献呈本。これが3冊目。

「このタイトルは売るためのものだ」と言っていたが、私が想定する答えは「皆そうだと思っているから」だが、これから読んで確かめよう。

田島氏がいっていることは、「病院選びの前に知るべきこと 医療崩壊から再生に向けて」、から「病院で今、起きていること 患者の危機管理23のノウハウ」まで一貫していたが本書も同じ趣旨であるが、本書が一番過激。

すなわち現在の日本の医療制度では「病院経営者=医師」であるため、病院建設の借金返済義務に縛られて医療のために働くより、借金返済の集金マシンになってしまって、不用 な検査、不要な治療薬を多量に投与する。このまま国がなにもしなければ保険制度の崩壊は時間の問題にもかかわらず、厚生省の役人は面倒なことに係わるのを避け て、ごまかしで何もせず放置したまま崩壊は時間の問題。

この「病院経営者=医師」という問題構造を隠ぺいするために1984年の中曽根内閣の時に「対がん総合戦略」なるプロジェクトが始まったが40年経過して も成果はでていない。「がん対策基本法」の条文は言葉遊びで厚生官僚が医療システムの不合理さを隠ぺいするのが目的。一般医療という土台がしっかりしてい ないのに、癌とか緊急医療という目につくパーフォーマンすをしているにすぎず、おためごかし。2014年に独立行政法人日本医療研究開発機構なるものがで きたがその予算は米国のNIHが3兆円に対したったの1215億円で難治性がんの治療ということになっている。目的は「病院経営者=医師」構造の隠ぺい。 国家的プロジェクトを立ち上げることによって診療の本質を見えなくすることが官僚の常套手段。これは水素燃料プロジェクトを立ち上げた経産省も同じ。

不用な検査の最たるものはCTスキャンで諸外国の4倍ものX線を浴びている。

日本の病院は開業医の私的経営の中小規模で救急病院と名がついても、コスト削減のために全ての専門医を待機させているわけではなく、緊急患者に対応できな いのでたらいまわしされる。それどころか入院している患者の様態が急変しても対応できず患者は命を落とす。また緊急医療の現場は過酷な労働環境で緊急医の 成り手が減少傾向。

対策は米国のように巨大病院を中心にしてその周辺で開業している専門医が必用に応じて出入りできるオープンシステムにすれば解決できる。

開業医は金持ち、勤務医はビンボーで過酷な労働環境。だから医者は開業医になりたいと思う。そうすると勤務医の数が減り、問題だと指弾される。人口1000人に対する医者数はイタリア4.1人、ドイツ・スイス 3.8人、フランス3.3人、イギリス2.8人、アメリカ2.5人、カナダ2.4人、日本2.2人で確かに少ないが、困った厚生省は1.5倍の3.3人にしよう としている。医師一人1億円使うからまた医療費がさらに増える。2013年の医療費は42兆円で国家予算と同額。これでは医療問題は解決できない。

私立医大で医者になるには2億円の裏献金が必用。だから開業医の子弟しか医者になれない。国家試験は易しくてバカでも医者になれる。要するに医療行政が依存している日本医師会は世襲制を維持しているわけだ。

日本医師会がTPPに反対しているのはNP(ナースプラクティショナー)という医師と看護婦の中間職が導入されるとアメリカのオープン・システムと同じく開業医の職場が脅かされるからだ。

メタボ診療はどうしようもない「病院経営者=医者」救済のための無駄な診療名目をつくることにあった。また少子化問題があるのに、お産を自由診療にしたま ま、保険の対象にしない本当の理由は輸血の準備のない小規模産科病院か開業医がおこなっているため、多量出血に対応できていないことがバレてしまうからと いう。

インフルエンザ治療薬の大盤ふるまいも製薬会社のためと言ってよい。

近藤誠氏は必ずしも正しくないが、しかし医療壊滅寸前の日本の医療に対しての最後通牒といえばよい。

癌センターの大病院は癌以外の糖尿病や心臓疾患が分からず、こちらで命を落とす患者が多い。医療過誤での年間死者は米国の統計と同じ比率として 24,000人と同じく、自殺者数と同じく、交通事故の5倍。しかし、日本の医療システムはクローズのため密室で行われ、複数の専門医グループの目のない ところで行われているため隠ぺいが疑われる。

日本の病院は開業医の私的経営の中小規模で質が低い。ところが大病院でも専門領域の狭間に入る病気のときは危険。

医療費削減のために平均在院日数が長い病院の収入が減るように診療報酬額を決めている。ところが日本の病床数はイギリスの4倍、フランスの2倍もあるので空き室にするよりはと介護型療養患者のみを長期間収容している例もある。

患者の訴えに耳を貸さない医者はアウト。すぐ病名を決める医者もアウト。マスメディアのランク付けも怪しい。混んでいる病院はいいと言える。過剰な設備投資しているところも用心が肝要。対応が丁寧過ぎる所も怪しい。タクシーの運転手の評判は信用できる。

日本では医療保証の保険料が安いのは医療者側の敗訴率が低いから。2億円保証型で年額52,820円。

著者と同期で、日本癌センターの医師だった宮沢は田島の危惧を正す手はないとサジを投げている。

Rev. May 25, 2015


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