読書録

シリアル番号 1225

書名

明治維新という過ち 日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト

著者

原田伊織

出版社

毎日ワンズ

ジャンル

歴史

発行日

2015/1/15第1刷
2015/2/25第3刷

購入日

2015/03/05

評価



友人のTから海舟書の「惑死」の意味が分からん。だれか教えてくれる人はいないかと聞かれ気になっていたためか今日近くの本屋で目に止まる。帯に「明治維 新」という無条件の正義が崩壊しない限り、この社会に真っ当な倫理と論理が価値をもつ時代が再び訪れることはないであろう・・・とある。ぱらぱらとめくると吉 田松陰と水戸学をこき下ろしたもののようだ。

著者は彦根城下の出身。吉田松陰を刑死させた井伊大老の本拠地出身だからいわば松陰の天敵。

公的ウソ」の源泉をたどれるかと思い衝動買い。時あたかも長州政権に先祖帰りし、日本も昭和維新に先祖帰りしそうでタイムリーな本かもしれないという思いもあった。著者は彦根藩の藩士の子孫で解体された武家文化に郷愁を持っている人のためバイアスがかかっている。

公的ウソに関しては早速、岩倉具視が薩摩の大久保利通らに「討幕の蜜勅」という偽の勅許を作ったことが明治維新がウソからできた例としてまずでてくる。ここには言及されていないが明治天皇すり替え説すらあるのだ。孝 明天皇はすでに毒殺されており、14才の幼い明治天皇はいたが、その署名もないものだ。これに慶喜が騙されてあわてて大政奉還をしてしまった。こうして明 治維新への車輪が回り始める。

長州はテロを平気で行ったが、その思想的なバックボーンは水戸学の思想だ。吉田松陰は真っ先にこれにかぶれた。wikiによれば天皇の伝統的権威 を背景にしながら、幕府を中心とする国家体制の強化によって、日本の独立と安全を確保しようとしたのであるとされる。維新、攘夷、国体、天誅は水戸学の用 語。天誅はテロの正当化、

徳川幕府の官僚達は武家を中核にして穏やかな開国に向けてうごいていたが、徳川家の末席の水戸徳川家が形成した水戸学がテロを正当化しているがゆえに明治維新において武家社会は完全に解体された。

昭和維新のとき、うごめいた右翼も全て水戸学から派生したもの。結果、昭和維新の結果として水戸学の用語の国体が飛びまわり、太平洋戦争に至り、それに破れて軍部は解体された。

本書を貫く筋は司馬遼太郎の明治維新美化史観(官軍史観)を退け、実際にはなにが起こっていたかを、詳細に記述し、実際にあった残酷な実態を赤裸々に記してそのうえで歴史を再認識させようという意図を持って書かれた。勝てば官軍 といわれるが、文部省教育に限らず、マスコミも含め、いかに官軍史観に歪められているかを知ることになる。

この本を読む価値は官軍史観のフィルターを外すことにあると感ずる。

最後にテロリスト集団である官軍と勇敢に戦い、降伏後は、冷遇されて下級官吏になった殿様上総請西(かずさじょうさい)藩主 林忠崇(ただたか)愉快な川柳が紹介されている。

Rev. August 22, 2015


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