読書録

シリアル番号 1167

書名

合衆国崩壊 1-4

著者

トム・クランシー

出版社

新潮社

ジャンル

小説

発行日

1997/12/1

購入日

2013/11/08

評価



原題:Executive Orders by Tom Clancy 1996

新潮文庫

鎌倉図書館蔵

Tom ClancyものはThe Hunt For Red Octoberを読んでいて、冷戦をバックにした潜水艦対潜水艦の戦いに息をつめたものだ。Book 589

本書はJALの機長が単身ジャンボ機を繰って米国国会議事堂に突っ込み、大統領はじめ、米国要人を殺してしまうというフィクション。伏線として日本の財閥のある グループが核兵器を製造して米国と戦争を始めるが、駆逐艦1隻沈没で戦いは終わった。その駆逐艦で死亡した男の親族がJALの機長だったらしいというほの めかし程度しか提示されず、生き残った副大統領を中心に米国官僚機構が自動的に執り行う葬儀の模様が詳細に記述されていて膨大。シチュエーションが時代遅れで必然 性がなく、1巻の途中で読破は挫折。実際の歴史の流れのほうがより複雑。先は読めない世界になった。一種の複雑性の理論が予測するように進んでいる。

いまで思えばジャンボ機で米議事堂に突っ込むという発想はアルカイダの2001/9/11テロの前だ。この本がテロリストの発想の端緒になったかどうか?この小説が書かれてから、イラク、アフガニスタンでの米国の戦争があり、米国の力も減退した。

日本では未だに核兵器の魅力を捨てられない一部のマチョ人間が原発ゼロを受け入れられず、だらだらと時を過ごしている。エネルギーと戦争ー第三次世界大戦に 書いたように、いくら米国の力が減退しても使えない核兵器を持つ利点はまったくない。中途半端な数をもち、いい気になって使っても、報復されて一巻の終わ りになることは必定。要するに使えないのだ。むしろ常時監視システムの完備と通常兵器を目的地にまちがいなく届ける無人航空機、ミサイル・潜水艦システム を科学の力で高度化することのほうがよほど重要だ。

小泉首相はフィンランドのオンカロ最終処分場を視察して花崗岩のトンネル内に地下水が漏れているのを発見し、これはだめだと直観で感じたという。オンカロ は可逆性処分ということで問題あれば取り出せるように管理するのが建前。ということは漏れでる地下水は常時ポンプでくみ上げねば可逆性は維持できない。 10万年もポンプを稼働するなど可能ではないだろう。日本は不可逆性の地層処分だというが、粘土で固めるだけで10万年封じ込めるという予想は北海道での5 年の実験でわかるはずもない。それに福島第一ではいまだ三重水素を海に放流することを住民に説得できていない。魚を食べる国民も納得できないであろう。原 発ゼロとは核兵器の自力開発の可能性を自ら絶つことを意味する。小泉氏の直観はこの核兵器呪縛から脱するよいきっかけとなろう。

熔融塩炉の中に軽水炉の使用済み燃料棒を挿入し、プルトニウムや超ウラン物質を焼却しようというプランがある。たしかに加速器による中性子発生よりエレガ ントである。でもそもそもなぜプルトニウムや超ウラン物質を焼却するかといえば、核兵器への転用を防止しようということだろう。核兵器への転用の防止は国 際的には査察と国際的ボイコットで対処できている。これでイランや北朝鮮はいずれ音を上げるはず。日本は手持ちのプルトニウムを核兵器に使おうとすれば国 際的制裁覚悟となるので手も付けられない。だから核兵器転用防止のためだけの需要はありえないだろう。

熔融塩炉でも1,000年の寿命を持つ核分裂物質は処分できない。最終処分のためといっても、始めの1,000年がすぎれば、プルトニウムや超ウラン元素 の放射線などウラン程度の放射線強度のため手におえないものではなくなるはずと私はおもう。というわけで核分裂物質を無害化できなければ焼却技術とはいえ ないのではないか?日本はすでに手持ちの核分裂物質をどうするかが問われているわけでプルトニウムや超ウラン物質を焼却しなければというのは問題のすり替 えではないだろうか?

Rev. November 15, 2013


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