ついに人類は原発と化石燃料から解放されるのか?

そして電力網という軛からも開放される予感がする

太陽電池(PV)の価格低下により、ソーラパネル単価が160yen/Wのとき、発電原価は16yen/kWh程度に下がり、電力会社の家庭従量電灯B 40A契約価格の30yen/kWhより安くなってグリッドパリティーは日本ではすでに達成されてい る。こうなるとFIT制度がなくともソーラパネルは普及しつづけ、九州電力のようについに需要の80%を越える事態になるだろう。そのとき、電力会社はグ リッドの安定性を保つために何らかの買い取り制限をしなければならなくなる。電力会社に買い取りを制限されると投下資金を回収できない家庭はEV車のバッ テリーに蓄電して夜間使うか、夜間専用にリチウムイオンバッテリーを購入するだろう。現時点でバッテリー単価は400$/kWh程度だが、この価格でも、 昼夜すべて太陽光で家庭用の電力を電力会社に支払う電力料金並みで自給できることを意味する。これは電力会社が家庭用電力という大需要を失うことを意味す る。

業務用季節別時間帯別電力の価格は家庭用より安く19yen/kWhと設定されている。この場合もすでにグリッドパリティーは達成されているので店舗の屋 根や駐車場にPV設置は増えるであろう。そしてバッテリー単価が100$/kWhまで下がるとバッテリーを設置して夜間電力も19yen/kWh以下で使 えることになるだろう。

こうなると電力会社は低価格契約のできる大口の工場しか需要家を見つけることができなくなるわけだが、需要家も自家発電をもって高価な電力会社の電力を買わ ないという選択肢がある。結果として価格は自家発電原価まで下がり、配電システムの託送料金4-9yen/kWhを載せることができなくなり、エジソンが 発明した中央発電+配電というビジネスモデルが崩壊する。

このような事態が予想されている時、原子力を周波数制御のツールとして使う自信のない電力業界は原子力を負荷調整用につかわず、家庭に設置された太陽電池 を負荷調整に使おうとするため、気象変動防止目的で原子力発電を20%も維持することはPV設置家庭をオフグリッド運用に追いやることになり、自殺行為だ ろう。エジソン的な電力システムを生かしつつ気 象変動防 止も目的とするなら、砂漠に太陽電池を設置し、その電力で水を電気分解して水素ガスを製造し、これに空気中に80%ある窒素ガスを反応させてアンモニアと し、 LPGと同じく冷凍船で海上輸送して火力燃料をするのが一挙両得の方策だろう。空気中に400ppmある二酸化炭素を生石灰と反応させて、石灰石にし、そ れを焼成して二酸化炭素を回収して電解水素と反応させる手もあるが、生成するメタンをLNGにしなければ海上輸送できず、アンモニアに一利ある。

いまだ原発にこだわる電力に圧力を加えるため、原発に巨大な融資してい るメガバンクから定期預金を移す運動をしよう。そのメガバンクとはみずほ銀行3.8兆円、三井住友2兆円、三菱UFJ1.8兆円である。これはダイベスト メント(投資撤退)というんだそうである。


シリコン系太陽電池

シリコン半導体を使う太陽電池は高価ゆえに、多結晶、薄膜など工夫されたが、中国で単結晶でも劇的にコストダウンが行われた。

2018/3シャープはNEDOの資金で単結晶シリコン基板の表面にアモルファスシリコン膜を形成するヘテロ接合の技術を融合した「ヘテロ接合バックコンタクト構造」により、単結晶シリコン太陽電池セルの世界最高の変換効率25.09%を実現した。

中国では再生可能エネルギーを固定価格で買い取る制度(FIT)を13年ごろから本格導入。大規模な太陽光発電施設(メガソーラー)の建設が相次ぎ、17 年はパネルの世界需要の過半が中国に集中した。だが中国政府は2018年5月、FIT価格を約1割引き下げたほか、新規のメガソーラーを買い取りの対象外 にした。

さらに世界2位の市場である米国は1月、自国のパネル産業保護のためセーフガード(緊急輸入制限)措置を発動。3位のインドも追随する方針を示した。日本 は4位の市場規模を持ちながら関税がかからない。米印の保護政策と中国の政策転換のあおりで、行き場を失ったパネルが大量に日本に流れ込む構図となった。

かつて日本の太陽光パネルは世界を席巻した。06年までシャープが世界シェア首位で京セラや三洋電機(現パナソニック)、三菱電機が続いた。しかし17年 は上位10社のうち7社を中国勢が占め、日本勢は1社もない。日本の衰退の原因は12年のFIT導入だ。政府は再生エネ普及のため売電価格を高く設定。メ ガソーラーが相次ぎ建設される「太陽光バブル」は国内勢に空前の利益をもたらした。本来なら追加投資や増産のチャンスだったが、バブル後の需要急減を警戒 した各社は投資に二の足を踏んだ。

相次ぐ増産で太陽光パネルの価格は12年から約6割も下落。原価の半分程度をガラスなどの原材料が占めるパネル産業では「大量調達で原価をいかに抑えられ るかがカギを握っている」。生産規模が小さい日本勢のパネル価格は海外勢に比べて3-5割高い。採算を合わせるため、価格が高くても売れる住宅向けにシフ トして生産規模を縮小し、さらにコスト高になるという悪循環に陥った。京セラやパナソニックの太陽光パネル事業は赤字続き。三菱電機は今春、中核部材の生 産から撤退した。かつて世界で一時代を築いたパソコンや半導体、液晶パネルで日本企業はこの失敗を繰り返してきた。太陽光パネル産業も技術的な差異化が難 しくなり、衰退を食い止めるための議論すら起きておらず、同じ道を歩もうとしている。

エネルギーの9割を海外に依存する日本で、太陽光発電は自給率を高める有効な手段だが、国内パネルメーカーの退潮で、海外依存から抜け出すことはできない。


非シリコン系太陽電池

Solar Frontier社(元昭和シェル)のCIS(銅インジウムセレン)系半導体を使う太陽電池がシリコン系より安い。

米国のファストソーラー社のCdTe金属化合物型が成功している。

ペロブスカイト太陽電池は桐蔭横浜大学大学院工学研究科宮坂力教授らの研究グループが2009年には 色素増感型太陽電池の色素部分にペロブスカイト結晶構造を有するヨ ウ化鉛メチルアンモニウム (CH3NH3PbI3) を用いたことに始まる。そのときは変換効率を3.9% より上げることができなかった。2010 年、イギリスのオック スフォード大学と共同研究したときヘンリー・スミスとマイク・リーの発案で電解液を用いない全固体型色素増感型太陽電池に、同じペロブスカイト材 料を用いた太陽電池を作製した。このとき、最大変換効率10.9%という当時のハイブリッド型薄膜太陽電池の中では非常に高 い変換効率を達成した。2016年には韓 国化学研究所(KRICT)と韓国の蔚山科学技術大学校(UNIST)がペロブスカイト太陽電池を上に、通常のシリコン太陽電池をボトムにして22.1% を 超えた。理論的には30%も可能と想定されている。

そもそも、地球内部における主要な化学組成である MgSiO3 は、地下約660kmから約2,700kmのマントル下部において、ペロブスカイト構造をとっていると考えられている。酸化物高温超伝導体は全て、ペロ ブスカイト構造を基礎とした結晶構造をしている。

2016年5月、オランダにある欧州技術組合のSollianceはペロブスカイト太陽電池モジュールを1枚1枚製造する枚葉方式ではなく、ロールツー ロール方式やシートツーシート方式の連続大量生産方式を開発すると発表した。米Nono-C、米Solartek、オーストラリアDyeSol、パナ ソニックがそのライセン シーとなり、この方式を開発中。6x6インチ角のガラス基板上で10%の転換効率を出せることを確認しています。

こうしてペブロスカイト太陽電池はシリコン製の太陽電池と同じ転換効率を達成でき、かつ発電単価7yen/kWhと安くできると期待されています。もし 7yen/kWhが可能なら、PVを負荷調整に使える。

思い起こせば、政府が燃料電池開発に熱心だったため、ペロブスカイト型構造を持つプロトン伝導性酸化物セラミックス(PCC Proton conducting ceramics)を使う固体酸化物型(SOFC; Solid Oxide Fuel Cell)燃料電池開発が盛んに行われた。しかし、SOFC型燃料電池は外国に負けてしまった。実用化さ れた燃料電池は有機膜のみ。

2017年10月5日、理化学研究所がスパコン『京』を用いた材料スクリーニングで鉛を用いない51個の低毒性元素だけからなるペロブスカイト太陽電池の 候補化合物を発見している。

2018年2月13日、ブラウン大とネブラスカ・リンカン大の研究者がペブロスカイト太陽電池の鉛を公害と劣化のないチタンに入れ替 えてもうまくゆくと発表。透明なペブロスカイトの薄膜(効率4%)と通常のシリコン膜を重ねた複合セルで効率23%を達成した。



バッテリーを使う分散発電の時代背景


10兆円といわれた原発事故の補償費、使用済み燃料の保管費、廃炉費、揚水発電費など未算入の費用を含めれば、原発の発電原価はキロワット当たり20円に もなる。これを 安い火力発電で薄め、キロワット当たり9円の配電コストを乗せれば電力料金はキロワット当たり30円になるわけだ。2016年11月になり、原発事故の 補償費と廃炉費は21兆円を超えると分かってきたので更に上がる。一方、再生可能エネルギーの風力発 電の発電原価はキロワット当たり12円程度だし、太陽光発電の原価は全てのコストを含む原発と同 じキロワット時当たり20円まで下がったのでフィードインタリフ制度がなくとも分散発電は普及する。ただ太陽光発電や風力が普及すると、発電ピーク時は需要を越えてしまい、電力会社にまったく買ってもらえないか、安い価格でしか引き取ってもらえ ない事態 が遅かれ早かれ到来する。

<揚水発電>

原発用に建設したものを転用できる。

<圧縮空気畜エネルギー>

日本では評価が低いがネットワーク用に適する。詳述。

<ナトリウムイオン・バッテリー>

カーネギーメロン大のJay Whitacre教授がリチウムのかわりにナトリウムを使う、Aqueous Hybrid Ion Barreriesを 考案しAquion Energyというベンチャーにビル・ゲーツが出資したが、2018/3に突然、経営破たんした。しかしその後、China Titans Energy Technology Groupの出資をうけ商品化し、フランスの重電大手の日本法人、シュナイダーエレクトリックが2月27日、鹿児島県にある蓄電池併設型の太陽光発電所 に、パワーコンディショナー(PCS)を設置した。300$/kWh目標。

<リチウムイオン・バッテリー>

リチウムイオンバッテリーは電極とイオンが一体型のため、一日分なら兎も角、天候に大きく影響を受ける再生可能エネルギーが要求する一週 間分の蓄電をするのはコスト的に無理だ。テスラのリチウムイオン電池は350$/kWh程度だ。

「リチウム・イオン・バッテリー」で詳述

<フローバッテリー>

24時間以内のバックアップならリチウムイオン・バッテリーでもかろうじて対処できる。 ただ、9yen/kWhの配電コストに蓄電コストを上乗せすれば電力会社が提供する30yen/kWhを越えてしまい、蓄電の入る余地がない。まして梅雨のような 長期に 渡る天候不 順の間、必要な電力を貯蔵するには現在のリチウムイオン・バッテリーのコストでは過大になる。ここでフローバッテリーの概念がでてくる。

NASAが考案した電極とイオン溶液を分離するフロー 型バッテリーはイオン水溶液タンクを大きくするだけ であまりコストをかけずに蓄電量を自由に増やせる特徴があり、長期間蓄電を安価で行う可能性を秘めている。フロー型バッテリーの電極は黒鉛製で、セル の 隔膜にはイオン交換樹脂を使う。

@初期の鉄 - クロム系では両イオンが膜を少しずつ通過して混合してしまう問題があった。

A電荷の異なるバナジウム金属イオンを両極に使えば、混合問 題は解決できる。バナジウム・フロー電池を搭載したEVが欧州で公道走行認可された。開発したのは Nanoflowcell社で、航続距離は最長600km、最高時速は350kmということです。10,000回の充電サイクルを繰り返すことができる。 nanoFLOWCELL技術はEV車だけでなく、エネルギー、海運、鉄道、航空などの分野へ導入される可能性を持つとされている。ガソリンのように バナジウム溶液を給油するという方式も提案している。しかしバナジウムはレアメタルで大量に産しませんので700$/kWhとリチウムイオンバッテリー を凌駕できていない。

B劣化ウランもいくつかの電荷レベルを持つし、原発の廃棄物として多量にありますが放 射能のある核分裂物質やプルトニウム分離問題がある。

Cキノン・フロー・バッテリーはハーバード大の研究だが溶液のエネルギー密度が低く、貯槽が巨大になる。

DAir-Breathing Aqueous Sulfur Flow BatteryはMITの中国系研究者の研究。DOEの資金。U-tube

歴史的にバッテリーに使われる資材費は次第に高価になっていた。理由はポータブル機器のためにエネルギー密度を高くするため。グリッド電力ストレジにはエネルギー密度は重要ではない。そこでポリ硫化リチウムLi2Sxとかポリ硫化ナトリウムNa2Sx水溶液と半透膜をつかって$100/kWhも可能なグリッド用フローバッテリーを作ろうと言うもの。

こうして人類はついに環境を汚染する原発からも化石燃料からも解放されることになるのだろうか。いずれにせよ、水素ガスは人類の救済者ではなく、分子に固定された水素原子に救済されるということになるのだろうか?




サイバー攻撃に対し脆弱性を持つ電力網(パワーグリッド)

日本が米国の同盟国をやめた瞬間に日本をブラックアウトさせる目的でCIAが電力系統制御系にマルウェアを仕込んだとCIAの工作員スノーデンが告発した のは有名だ。スコセッシ監督が映画化した。

彼が日本の送電網のSCADAシステムのプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)に送り込んだマルウェアはイランのウラン濃縮工場のシーメン スのSCADAシステム、SIMATIC WinCCを誤作動させたスタックスネットであったそうだ。

日本の電力網のSCADAの例としては日立の電力系統監視制御システムがある。これは一般のネットワークとは直結していないがスパイならUSB経由 で感染させることができます。

スパイと関係なく、電力網に計算機能と通信機能を搭載したスマートグリッドの普及は、電力網のシステムに侵入するポイントをたくさん作ってしまった。 現在、スマートグリッド端末から無線送信されるデータについてはデータの内容が正しいものなのかそれとも攻撃なのかはわからない。かくして電力網はサイ バー攻撃に脆弱となった。こうして太陽電池とバッテリー価格の低下で可能となったオフグリッド電力のタフさがクローズアップされる。



バッテリー・パリティー

筆者が2007年に行ったオフグリッド予測当時バッテリーパリティーという言葉はまだなかった。テスラが予定通り安いバッテリー を出荷してくれれば、その時点でパリティーとなる。

テスラの価格を10kWh、42万円とすれば、バッテリー単価42,000yen/kWhとなる。ネットキャッシフロー(NCF)の割引率4%として バッテリー寿命9年で初期投資を償還するとし、固定資産税1.4%、保険料0.5%、管理費1%を加えればバッテリーの均等化経費率=(NCF-充電電力 費)/(初期投資額)=16.355%/yとなります。バッテリー電 力回収率0.85 PV発電原価=20yen/kW とすれば、

NCF=1kWh  x  42,000yen/kWh x 16.355%/y=6,867yen/y

年間蓄電電力=1kWh/d  x  365d/y  =365kWh/y

畜電単価=NCF/年間蓄電電力+充電電力費=6,867/365 + 20/0.85 = 18.8 + 23.5 = 42.3yen/kWh

下は仮想的な家庭のオフグリッドシステム構成です。



需給バランス図


紺色が消費電力355kWh/month、赤色が発電量380.5kWh/month、黄色が充電量 161.6kWh/month、空色が夜間使える蓄電量131.6kWh/month、紫色は収支バランスゼロでグリッドとの取引はないことを示してい る。回収率は131.6/161.6=0.81となる。

PV電力のうち、充電に使わず日没までに直接消費出来る比率は(355-131.6)/355=0.63となる。夜間使える放電は131. 6/355=0.37とした。

昼と夜の加重平均電力費=0.63 x 20yen/kWh + 0.37 x 42.3yen/kWh= 12.6+15.7=28.3yen/kWh

となり、バッテリー・パリティー達成。




バッテリー・パリティー



バッテリーコスト低下による電力業界のパラダイムシフト

ニッサンのEV車はNECと合弁のAESCにミネート型(箱型)を作らせていたが2017年に、NECが降りたため、中国のGSRに売られた。テスラはパ ナソニッ クの円筒型を採用これを7,000本箱に収納し、温度センサーでグリコール液を制御するバッテリーパックに仕上げている。トヨタはパナソニック、ホンダと 三菱自動車はジーエス・ユアサコーポレーションから購入。

2018年現在リチウムイオン・バッテリーコストは400$/kWh程度だが、近い将来、EV車の普及に伴いリチウムイオン・バッテリーコストが200$ /kWhそして100$/kWh(11,000yen/kWh)以下になると期待される。そのときバッテ リー寿命9年、固 定資産税1.4%、保険料0.5%、管理費1%とすればバッテリーの均等化経費率=(NCF-充電電力費)/(初期投資額)= 16.355%/yとなる。バッテリーの電力回収率0.85とするとバッテリーパリティーを達成するPVに許容される最大発電原価Xは、昼のPV電力の直接消費比率63%、夜の蓄電池消費比率37%とすると。

電気料金=0.63X+0.37x蓄電単価(昼のPV電力の直接消費比率63%)

蓄電単価=蓄電損失+蓄電池固定費=X/0.85 + 11,000 x 0.16355/365=X/0.85 + 4.929

電気料金=0.63X+0.37(X/0.85 + 4.929)=1.065X+1.824

X=(電気料金-1.824)/1.065 (バッテリーの価格=100$/kWhのとき)

X=(電気料金-3.648)/1.065 (バッテリーの価格=200$/kWhのとき)

X=(電気料金-7.296)/1.065 (バッテリーの価格=400$/kWhのとき)

昼夜比が逆転すれば

電気料金=0.37X+0.63x蓄電単価(昼のPV電力の直接消費比率37%)

蓄電単価=蓄電損失+蓄電池固定費=X/0.85 + 11,000 x 0.16355/365=X/0.85 + 4.929

電気料金=0.37X+0.63(X/0.85 + 4.929)=1.111X+3.105

X=(電気料金-3.105)/1.111 (バッテリーの価格=100$/kWhのとき)

X=(電気料金-6.21)/1.111 (バッテリーの価格=200$/kWhのとき)

X=(電気料金-12.42)/1.111 (バッテリーの価格=400$/kWhのとき)

となる。

2018/2の東電の一般家庭用電気料金は月に300kW使ったとして1,123yen/300+26= 29.7yen/kWhとなる。

また業務用季節別時間帯別電力は月に500kW使うとして1685yen/500+20.15(1/24)+19.45(1/4)(11/24)+ 18.05(3/4)(11/24)+12.5(12/24)=3.37+0.81+2.23+6.20+6.25=18.86yen/kWh

となる。

2018年の東電の託送料金は低圧供給9.26yen/kWh、高圧4.07yen/kWhである。業務用といえども500kW 程度だと低圧供給が殆どである。

電力購入契約
低圧供給
託送料金 (yen/kWh)
電気料金 (yen/kWh)
PV最大許容発電原価X (yen/kWh)
バッテリーの価格100$ /kWh
バッテリーの価格200$ /kWh バッテリーの価格400$ /kWh
昼63%
昼37% 昼63%
昼37% 昼63%
昼37%
家庭従量電灯B 40A契約第二段階(300kWh/m)
9.26
29.7
26.5
24.2
24.5
21.1
21.0
15.6
業務用季節別時間帯別電力(500kW/m)
9.26 18.9
16.0
14.2
14.3
11.4
10.9
5.8

家庭用と業務用の低圧託送料金は同じである。ということは柱上トランス、低圧送電線、電柱などには大差はないことになる。しかるに家庭用の電気料 金と業務用の電気料金には10yen/kWhの差がある。これは電力会社が業務用には発電原価の一部を割り引いて、その分、家庭用に割り振っ ていることになる。このように電力会社は独占の立場を利用して発電原価を公平に配分していないことがわかる。役所も知っていてそれをよしとしていることに なる。これは独占の特権の当然な帰結だが、これから割高な家庭向け電力を押し売りされている消費者がソーラーセルとバッテリーに投資して自前のオフグリッ ド電力システムを持つか、そのようなサービス提供会社に自宅の屋根を開放すれば配電網という施設に投資してしまっている電力会社のビジネスモデルが崩壊す ることを意味する。

因みにソーラパネル単価が160yen/Wのとき、ソーラーパネルの発電単価は16.28yen/kWh である。ソーラーパネルのグリッドパリティーは業務用ですら達成している。そしてこの数値は2020年には3yen/kWhまで下がると予想されている。これは陸上の風力より安いのである。

一方、バッテリーパリティーはバッテリーの価格が400$/kWhにならないと家 庭 向きでさえ達しない。テスラのパワー・ウォールの予約直販売価格が該当するが、開発中のロボット組立工程の遅れで製品の出荷は2017年末時点で遅れてい る。将来更にバッテリーの価格が100$/kWhになれば業務用でもバッテリーパリティーが成立する。そうするとコンビニの駐車場に柱を建て梁を 渡し、梁上と店舗の屋根にソーラーパネルを載せ、バッテリーに蓄電し、直流のまま店舗の空調と冷凍棚などを稼働させることが可能となる。そういうエコ指向 は若者が好むので好感されるかもしれない。雨の時も顧客は濡れないで済むし、経営者にとっては電力費も節約になる。店舗の片隅でLEDで自動栽培されるレ タスを自分で採取して買うことができればなおよろしい。残念ながら最近の経営者は沈滞気味なのでアメリカ人か中国人がまずやって、それから日本がマネする ことになるのかも。いずれにせよ、このとき、人類は電力網という軛から開放され るのだ。東電よ!さようなら。アッ!すでに電力は東電の配電網経由で新電力から買っていたのだ。



もっとわかりやすいバッテリーパリティー計算

我が家の平均月当たり電力消費量は老夫婦2名で月300kWhである。無論、照明はすべてLED化し、空調機も大型を使いゾーニング使用として消 費電力を抑えている。もし電力会社から買い続けると電力料金は今後10年間は30yen/kWhとしよう。そうすると月当たり電力料金は9,000円。 20年間で2,160,000円となる。

太陽電池のキャパシティーファクターを12%とすると3.4kWの出力の太陽電池を設置しなければならない。このコストは2018年の非シリコン系太陽電 池メーカーSolar Frontier社(元 昭和シェル)のCISモジュール+システム費+標準工事+消費税の合計価格は200yen/W (20yen/kWh)程度であるから680,000円かかることになる。ただ設置工事に足場が必要な際や、別途部材が必要な屋根材の場合などは追加料金 がかかる場合がある。

蓄電池容量を1日分をカバーする13.5kWhとし、テスラ社のリチウムイオンバッテリーコストは現在は補機と消費税いれて670$/kWhであるからバッテリー関係800,000yen。合計1,480,000円。これは400$/kWhに下がると期待される。

どうせ金利はゼロだから銀行預金150万円を降ろして電力会社とは完全に縁を切り、オフグリッド運用をするものとする。太陽電池の寿命は20年以 上だから10年後に80万円を追加投資してバッテリーを更新するとすれば総投資額は2,280,000円となる。それでも20年で元が取れるとれることに なる。

これは2007年の私のバッテリーパリティー時期予想の2025年よりも7年早く、2018年にバッテリーパリティーが成立したことの証明となる。無論、バッテリーコストはまだまだ下がる余地があるためエジソンパラダイムの崩壊は必ず電力会社を襲うだろう。



2019年のFIT買取期間終了後の住宅用太陽光発電の対応

2009年に始まったFIT買い取り制度は2019年に終了する。その後の取り扱いにかんする資源エネルギー庁の方針

@バッテリーを使っての自家消費の奨励
A余剰電力の小売電気事業者(九電力以外の新電力)や需要家の需要量を制御して電力の需要と供給のバランスを保つ、ディマンドレスポンス(DR)におい て、電力会社と需要者の間に立ってうまくバランスをコントロールする事業者であるアグリゲーターとの自由契約はすべて、一般送配電事業者(九電力)のス マートメータ―経由でおこなう が、アグリゲーターが倒産した場合など逆潮流防止のための解列はせず、一般送配電事業者(九電力)に一時的に無償引受けを要請しつつ、小売電気事業者に引き受けて もらうインセンティブを考案する。引受量の増大により一般送配電事業の負担が増加し支障が生じ得る場合には、仕組みを見直す。
BFIT認定施設と非認定施設併存の場合の逆潮流計量は一般送配電事業者がおこなう差分計量で行う。

となっています。電力も役所も面倒なものはいやだ、どうぞご勝手にという態度。



電力システム制御

分散発電が多くなる電力システムの制御は大型の火力発電があれば苦労しないが、それがなく、再生可能エネルギーだけのときはバッテリーが必要となり、バッ テリーコストと送電コストの二重苦がのしかかる。そこで送電コストが余計となり、オフグリッド運用が増えるであろう。原子力は負荷調整運転もフランスのよ うにPWRが多いと可能だが、BWRの多い日本では困難となる。これにかんしては東京大学生産技術研究所エネルギーシ ステムインテグレーション社会連携研究部門シンポに詳しい。




再生可能エネルギー導入を阻害する原発再稼働

ドイツ(卸電力は2017/1/1から入札制)と日本は再生可能エネルギー導入促進のためFIT方式(Feed in Tariff)を採用し、徐々に売り買い同一料金取引のNEM方式(Net Energy Metering)に移行することになって居る。ところが日本では原発再稼働させるために昼間の電力を高くし、夜間電力を安くしてあるため、NEM方式で は金持ちはバッテリーを導入するより、PVの余剰電力を電力会社に昼間高く売り、夜間は原発を一定出力で運転するために安く設定した電力を買ってバッテ リーなど導入する愚かない人はいない。これでは電力会社は負荷調整を永遠にし続けることになり、損をする。その損をビンボー人が負担するという不公平な社会 となる。これは原発の存在がバッテリー導入を阻害するという矛盾を生むことを意味する。

カルフォルニア州やハワイ州は現在のMEM方式をやめて、TOU方式(Time-of-use rates)とし、夜間電力を高価に設定してメーターの背後(消費側)にバッテリーを導入させて電力会社の需給バランス義務の軽減をしようとしている。日 本でこの米国方式を採用してTOU方式とし、夜間電力料金を上げることは出来ない。なぜなら原発を夜間も連続して一定出力で運転するためにヒートポンプ+ 温水貯槽をセットにして販売しまくっているため、従順な消費者を裏切ることになるからである。仮に彼らを捨て去って夜間電力を高くすると、20%もある原 発の電力をすべて消費する需要はないため、原発を一定出力で運転できなくなる。

ことほどさように原発再稼働と再生可能エネルギー有効利用のためのバッテリー普及は矛盾する政策である。再生可能ネルギーは今後の日本のエネルギー自立の ための必須システムである。これくらいのことが分からない経産官僚が阿呆というしかない。そしてその阿呆共を野放図に放置している安倍政権は国賊であろ う。



ヒートポンプ式温水器による電力側の対抗策

東電から電話がかかってきた。年配のアルバイトの御婦人のようで、ガスと電力をパッケージにする契約してくれれば3割安くできますという。

風呂と暖房はガス加熱のため冬季は電力料金よりガス代の方が3倍も大きい。どうしてそんなことが可能なのか興味をもった。そこで説明を聞くとなんと彼女は 今のガス燃料の風呂用湯沸し器をヒートポンプ+蓄熱タンクに変えるというのが条件ですと自信なさそうに言う。その設備工事費は当然私持ち。3割やくすしてもらっても、元とるのに6年はかかかる。これは詐欺みた いなもの。それに暖房を空調機で行うと部屋の上部があたたまるだけで部屋の下部は冷えて不快である。

私は即「そもそも私はすでに東電から電気は買っていません。石油会社から安く購入しています。それにヒートポンプを売り込んで原発動かすのは犯罪行為とおもい ますよ」と一喝したところ「やはりそうですか」とあっさり引き下がった。売り手が信じていないものは売れるわけがない。懲りない連中だ。

その後なんで3割も安くできるのか不思議でいろいろ考えてみました。ヒートポンプは発電で失ったエネルギー分を取り戻すこと出来ますのでトントンにはでき ても3割も安くはできません。電力の需給バランス義務を負う電力会社としては電力が余る時に、遠隔操作でヒートポンプを動かせれば、それを温水という熱に 変換してタンクにためておくことで、ピークシェーブはできるのですが、どうも、無線で遠隔発停制御まで行っている商品を作っている家電メーカーはありませ ん。原発がフル稼働していた時代は夜間電力を安くしてタイマーでヒートポンプのスイッチをいれるという仕掛けがありました。しかし原発は7年間、止まった ままです。それでも夜は業務用の電力消費量が激減するのでやはり夜間料金は低く設定したままなんですね。多分、この安い夜間電力をつかってタイマーで蓄熱 管理して料金は安くなるということなのだろうと推察されます。技術的には新しいものはまったくありません。

でも原発が再稼働しないでもソーラーパネルの導入がすすめばパネルがフル稼働するする昼日中、余剰電力がピークとなるという問題がいずれクローズアップさ れます。その事態が来ると安い夜間料金を維持できなくなります。そういう時にこのシステムを導入した人は裏切られるということでしょう。だから3割値引き というのは詐欺に等しいともいえます。東電という会社はそういう会社ですね。早々と縁を切ってよかった。


リチウム・イオンバッテリー

リチウム・イオン・バッテリーは日本が開発したたもので携帯電話などの電源として世界に普及したが、EV用、家庭用に安価な電池を供給する企業は生ま れなかった。しかるに米EVベンチャーのTesla Motors(テスラ)は2017年1月4日、パナソニックと長期契約を締結し、米ネバダ州リノにリチウムイオン電池の生産工場「Gigafactory(ギガファクト リー)」を完成させた。そして「2170セル」と呼ぶ円筒形のセルの量産を開始したと発表した。これはテスラが予約販売する と公表した7kWh、 36万円、10kWh、42万円、 14kWh、61万円に充当するものと推察される。2018年末に「2170セル」を数千本たばねて電池パックを組み立てる工程の自動化に手間取っている。

バッテリー・メーカー 円筒形 角型 ラミネート型
パナソニック テスラ トヨタ、VW, ニッサン、フォード、アウディ -
LG化学 - - GM、ルノー、現代、ボルボ
サムスンSDI - BMW、VW -
オートモーティブサプライ - - ニッサン、ルノー

バッテリーは基本的には2枚の電極と隔膜から成立していて必要総枚数と必要総面積はおなじ。だから「円筒形」だろうが「角型」だろうが「ラミネー ト型」であろうがリード線の始末の仕方が少しちがうだけ。「角型」は積層している分、高電圧となり、ショートしやすい?「ラミネート型」は面積が大きい 分、やはりリード線の処置が難しい。私の好みでいえば「円筒形」が一番安定しているのではと思う。欠点は円筒形の入れ物の素材が無駄で、高価になっているのではと思い。また円筒型は一部セル が熱暴走しても温度計で検出して大事にいたる前に遮断できる。7,000個の円筒型を組み立てるロボットが上手く動いていないため、人海戦術で対処してい るとのことだが、砂漠のなかの無人工場に人を動員するのも大変で、資金繰りが大変のようだ。

テスラはまたニューヨーク州バッファロー工場で屋根瓦一体型太陽電池セル・モジュールの生産を開始することで合意したと発表しした。テスラは10年間全量を買い 取る契約とか。

下は筆者が2007年に行ったバッテリー価格予測だが。それより早めに下がっている。したがってリチウムイオン電池がオフグリッド化の最有力候 補となる。テスラは宣伝がうまい。パナソニックは日本では100万円で売っているものを、予約販売といって予約をとり、それをエサにパナソニックが全量を 10年間すべて買い取るという条件でこの価格をつけています。ま!しかし実際にどうなるかは来年にならないとわからない。競争相手が必要だ 。ところが中国がEV車を優遇するという方針を打ち出したため急にリチウムイオン電池に期待があつまった。



リチウムイオン・バッテリーの価格

電池材料などを手掛ける研究開発型のベンチャー企業である米Zeptor(ゼプター)は、短時間での充電と大電流の放電を繰り返せる新型のリチウム (Li)イオン2次電池を実用化した。CNF(カーボンナノファイバー)をSi合金と銅箔に絡ませる技術で、剥がれなどを抑えたシリコン負極のリチウムイ オン電池だ。

車載電池の世界最大手、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が25日、日本に営業拠点を開設する。同社の2017年の車載電池の出荷量はパナソニックを 上回る12ギガワット時。電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PEV)の普及の波にのり、創業からわずか7年で世界最大のメーカーとなった。 これはPVと同じ構造。

広東省深圳市に本社を置く中華人民共和国の企業である比亜迪またはBYD BYD Company Limited)も車載電池メーカーだ。生産能力は2019年には24ギガワット時、2020年には60ギガワット時。

ちなみに2017年の出荷量はCATLは12ギガワット時、パナソニック(補助金なし)が10ギガワット時、BYDが7.2ギガワット時。

ニッサンとNECの子会社のオートモーティブサプライ(AESC)を中国のファンドGSRキャピタルに売却する交渉は資金不足で2018/6にとん挫。


圧縮空気蓄エネルギー

リチウムイオン電池以外にも多様なエネルギー保存システムが考えられる。圧縮空気畜エネやフローバッテリーも。

そもそも圧縮空気はまだバッテリーがなかった第一次大戦の頃、ソンムの激戦の映像をとらえたカメラの駆動に使われた古い技術です。当時は圧縮空気を充填し たシリンダーが使われた。 17才でプリンストン大で博士号をとったDanielle Fongが等温圧縮、等温膨張をシリンダーへの水インジェクションで達成させようというアイディアを持ちました。彼女自身が設立した米国のベンチャー企業 のLight Sail Energy社 はそれを実現するために高圧ボンベと500kW圧縮・膨張機を開発中。

商用3相200V電力の単価は安く設定されているため、コス ト的にはまだ無理ではないかと推察します。た だ、グリッドコストが30yen/kWhにもなる日本の家庭向け単相100V市場は、市販の中国製CNG用シリンダーを採用すれば、往復動圧縮・膨張機が 量産効果で安くな れば、バッテリーと競 争できる可能性があります。筆者はむしろこれは家庭向けオフグリッドの蓄電に使えるのではないかと考えました。以下は簡便モデルの概算。

太陽電池の昼間の余剰電力でシリンダー容量100cc、毎分1,000回転のアルミニウム製往復動圧縮機を回し、空気を200気圧まで圧縮して40リッ ターの蓄圧器8本に蓄えます。このとき、圧縮機のシリンダー内に水を直接スプレーし て冷却します。もし水を注入しなければシリンダー内温度は1,000℃を超えてしまいます。温度は最低運転圧の400気圧でも注入水が気化しない温度 257℃になるように制御します。シリンダーから 出る空気と温水の混合流は熱媒体で冷却され、水を分離した圧縮空気は、蓄圧シリンダーに蓄えます。蓄圧シリンダーは炭素繊維製もありますが、車に乗せる CNGや 水素とは異なり、常置用ですのでクロム・モリブデン鋼とします。こうすると安価な中国製を使え、かつ圧縮時の温度上昇を自然放熱で冷却しやす くなります。250℃になった熱媒体は常圧の保温タンクに蓄えておきま す。常温に冷却されて空気と分離後、減圧された水は相分離して捨てても良いのですが、環境汚染を考えて、水タンクに保管することにします。レシプロ機のピ ストンとシリンダーの潤滑は、水とする。



夜間には電力を回収する。蓄圧タンクに蓄えられている圧縮空気は往復動圧縮機を膨張機として膨張させ動力を回収する。このとき、水タンクに保管 されていた水はインジェクションポンプで昇圧され、保温タンクに蓄えら れていた熱媒体の熱で再加熱され、膨張機のシリンダー内に噴霧する。もし、温水をシリンダー内に噴霧しないと温度はマイナス200℃以下に下がって空気 中の水分が凍結してしまう。このために膨張機には圧縮機の時に使う逆止弁の他に、ピストンと同期する圧縮空気導入制御弁が必要となる。ガバナーが この制御弁の開度を制御して回転数を一定に維持する。モーターはジェネレー ターとしても使う。電力需給をバランスさせるためにガバナーの回転数設定値を制御するので直交変換パワー素子は不可欠だ。

40-200気圧でスイングするとき、安い中国製のクロムモリブデン鋼製の40リッターのCNGシリンダーが8本必要になる。しかし1本$100 だからから全部で$800(10万円)。50ccのアルミ製の圧縮・膨張レシプロ機とその他機器を多量生産で25万円で造れれば全体で35万 円となる。これはテスラが予約販売すると公表した7kWh、36万円、10kWh、42万円、 14kWh、61万円に太刀打ちできる。テスラには制御機器が含まれないし、バッテリー寿命は9年程度。レシプロ圧縮機の寿命も同程度だが、ボンベの 寿命は検査すればもっと長くとれる。

ライトセイル社の本水注入冷却技術は水を入れすぎれば、ウォーターハンマーでシリンダーは壊れるし、潤滑油水と混合してエマルジョンになるため、水潤滑し か使えないという問題も考えられる。シリン ダーから出る315℃の熱を向流で熱回収して保温常圧タンクに蓄えるためには ダウサームオイル( (biphenyl  and diphenyl oxide))などの熱媒体が必要です。この熱媒体タンクの高温相と低温相の間にはフロート式断熱板をうかべて相互混合を防止する。

しかしマネジメントの失敗で2018年開発資金が底をついて休眠中。

2017/4/20より神戸製鋼がNEDOに納めた「空圧電池」と称する圧縮空気畜エネシステムが静岡県河津町で実証試験を始めた。原理はここで書いたも のと同じ。圧力10気圧、直径2m、高さ11mの蓄圧タンクが52本で構成されている。


次は元フルアー社のプロセスエンジニアから受けた制御法に関する質問に答えた回答。

I have made this study only for my pleasure. Therefor I, have used EXCEL as programing tools and used thermodynamic equation assuming isothermal compression and expansion. Cooling and heating duty were assumed enthalpy difference between isothermal and adiabatic process. 

I have to make more precise calculation some time assuming multistage process, but it is tedious work.

I expect someone might make custom made compression and expansion machine. Most difficult part would be control valve mechanically connected to crank shaft. All temperature control device could be under PC control.

In Japan, compensation cost caused by Fukushima accident were planned to be payed by grid transmission cost. This is the reason why I have started to go off grid.



キノン・フロー・バッテリーの登場(有機メガ・レドックスフロー・バッテリー)


フロー型バッテリーのコストダウンで期待されるのがハーバード大がネ イチャーサイエンスに 発表したアントラキノンに,スルホ基を2つ結合した分子AQDS(9,10- AnthraQuinone- 2,7-DiSulphonic acid)を使ってキノンとヒドロキノンの間の酸化還元反応を電流に変換するフロー電池だ。それでも初期のものはキノンー臭素には臭素の混合劣化問題が あったため、それを避けるために分子径を大きくして膜透過量を極小にするためにフェロシアニドを選んだと考えられる。



PHOTOGRAPH BY ELIZA GRINNELL, HARVARD PAULSON SCHOOL OF ENGINEERING AND APPLIED SCIENCES

アントラキノンは血糖上昇抑制作用のある大黄の薬効成分で野菜としてシベリア原産の多年草のタデ科の植物ルバーブ(Rhubarb)に含まれています。東 京では売られていませんが軽井沢などには出回っています。 ふきに似ていて、茎の部分が食用になります。 欧米では、ジャムやお菓子の材料や肉料理のソースなどにもとして広く一般的に使われている。



ハーバード大の初期のものはAQDSの水溶液を負極の活物質として使用し,正極には臭素水を使用していました。放電時の反応としてはヒドロキノンがキノン に戻る反応 と臭素分子が臭素酸になる反応が組み合わされ、

H2AQDS → AQDS + 2H+ + 2e-(負極)
Br2 + 2H+ + 2e- → 2HBr(正極)

という反応で放電する。(充電時は逆反応) ただAQDSの水への溶解度は10 g/Lのため、無駄な水を循環することになり、自動車向けにはならず定置型といえる。

2015/9/25のハーバード大の2度目の発表は、臭素をフェリシアニド(ferricyanide)という無害な非腐食性イオンに置き換 えている。これは現在は米コロラド大学ボールダー校に所属するマイケル・マーシャク氏が提案したアイディアだ。フェリシアニドはFe3+中心に6個の シアニド配位子が八面体形に結合した構造をしている錯体で、シアン化カリウムのような一般 的なシアン化物と同等だが、CN-とFe3+の結合が強いため毒性は弱い。



[Fe(CN)6]3− + e → [Fe(CN)6]4−

この酸化還元はFe-C結合の形成、切断は伴わない。バッテリー寿命はこれからの研究。そしてコストだが27$/kWhという数値が 喧伝されている。

ヒドロキノンとキノンの酸化還元反応は生物でも使われ、素材のベンゼン環は有機合成反応で容易に石油留分から合成できる。もしキノンを使うフロー電池の コストが配電コストのキロワット10円以内で可能となれば、電力網から独立した分散発電が可能となる。



ビタミンB2フロー・バッテリー

2016年、ハーバード大は脂溶性ビタミンKの親類のキノンの代わりに水溶性のビタミンB2riboflavin  or lactoflavin)を使うフローバッテリーの特許を申請しました。商品化に成功するかまだ分からないが、資源的に無限で環境にやさ しい物質を使うので大いに期待できる。


フロー・バッテリー開発の裏話

このシステムの発明者であるハーバード大のProf. Michael J. Azizのチームがアントラキノンを選んだ時、チームに参加した Prof. Alán Aspuru-Guzikが1万種の分子を計算機にいれてテストして一番性能が良かったものを選んだと言っている。このチームにいた韓国出身のDr. Changwon Suhは計算を担当したのではないかと推察しされる。アントラキノンは石炭乾留のタール中に多量にあり、蒸留で安価に分離でき る。無論石油留分中にも沢 山ある。1個のベンゼン環にOH基がついたものは石炭酸でこれも安価な防腐剤だ。エポキシ樹脂の原料となるビスフェノールも同じ仲間。UCCの基 本特許を買い取って、パイロットプラントを子安研究所に作って鉄鋼系の化学品メーカーにプラントを売ったことを懐かしく思い出す。

今までの二次電池はリチウムにしてもバナジウム、それに鉄にしても金属イオンをエネルギー担体につかっていますからリチウム、バナジウム資源量が普及の ネックでした。それに金属イオンは分子径は小さく、イオン交換膜を微量ながら通過するので寿命が短い。このために20年前に千代田化工は鉄クロム系フロー 電池の開発継続を断念したのだ。当時金属イオン以外のキノン⇔ハイドロキノンをがつかえるなんて気も付かなかった。イオンは金属という固定概念にと らわれていたためだ。ケトン構造に水素が付いたり外れたりしても同じこととまでは頭が回らない。私はこのニュースを読んで衝撃を感じた。すでにドイ ツにライセンスし、スポーツカーの道路テストまでしていうのだから。アントラキノンはあくまで水素担体に使うわけで、燃してしまうわけではないので、資 源的には問題ないでしょう。石炭は400年分の資源があり、タールは今後もガス化工程ででてくる始末に負えない重質残渣だ。石油にしても石炭と同じくら いの資源があるとみていい。

千代田化工が開発したベンゼンを水素化してシクロヘキサンにしてタンカー輸送することにより水素を運ぶというの技術の代替としても使えそう。どちらも水素 をガスにしないところがミソ。


技術立国できない日本の将来

ビタミンB2フロー・バッテリー、圧縮空気蓄エネルギーやペロブスカイト・ソーラーセルが成功せずとも、シリコン製ソーラーセルとリチウムイオン・バッテ リーの組み合わせて分散発電が勝つ。

世耕経産大臣は経産官僚の御神輿にのって国家予算の2割を超える21.5兆円(廃炉8兆円、賠償7兆9000億円、除染4兆円、中間貯蔵 施設1兆6000億円)になる福島事故の処理費のうち、2.4兆円を託送料にのせようとしている。これを2020年より40年間、毎年600億円を託 送料金に乗せて徴収するというのだ。この方策は日本の電力 業に分散発電に負ける仕組みを押し付け、自滅に陥れるものだったと後世の歴史家から指弾されるだあろう。そして世耕経産大臣は「もんじゅ」の後継機を開発 しようとしている。原子力をやめられない国は106億円をバカラでうしなった井川意高大王製紙会長とおなじく、国家として賭博依存症だったと世界の笑い ものになっている。

自民党政府は原発を持つ電力事業の保護に熱心であり、太陽電池を敵扱いするため、太陽電池メーカーの開発熱は低く、桐蔭横浜大学大学院工学研究科ではじ まったペロブスカイトを太陽電池開発を取り上げることも無く、世界中の研究者の狩場にしてしまった。これでは技術立国などおぼつかない。いずれ再生 可能 エネルギー時代になっても他国の後塵を拝することになる。



再生可能エネルギー+蓄電がエジソン的な電力配電ビジネス破綻とならぬ方策

火力発電が再生可能エネルギーの変動吸収として最適であるが、気象変動の原因となると危惧する政治的勢力が世界で優勢である。温暖化防止のための化石燃料 の燃焼禁止も目的とするなら、砂漠に太陽電池を設置し、その電力で水を電気分解して水素ガスを製造し、これに空気中に80%ある窒素ガスを反応させてアン モニアとし、 LPGと同じく冷凍船で海上輸送して火力燃料をするのが一挙両得の方策だろう。

空気中に400ppmある二酸化炭素を生石灰と反応させて、石灰石にし、それを焼成して二酸化炭素を回収して電解水素と反応させる手もあるが、生成するメタンをLNGにしなければ海上輸送できず、アンモニアに一利ある。




核燃料サイクルを捨てられない日本

地球温暖化が人為的なものとする説は、10万年毎に海面が10m以上高くなる現象を説明できない。とはいえ世界は化石燃料を掘り出して環境を汚 染するより太陽電池や蓄電池の技術開発したほうが持続的発展ができるし、経済も発展するとして世界中で技術開発に邁進している。日本だけが電力業界の抵 抗で後ろ向きなわけ。こうして世界が再生可能エネル ギー開発に向かう中、日本はいぜんとしてプルトニウムサイクルを捨てられないで、貴重な国家予算をこの決して成功しない技術開発に投じ続けている。さす が「もんじゅ」は安全性がないと廃炉になったが、高速炉の開発は続けると決めた。経済産業省のエネルギー基本計画でそう定めているから。流石 の原子力委員会も経済性に疑問を呈している。

高橋実東工大原子炉工学教授は「もんじゅの冷却材にナトリウムは安全という設計は難しく、もっと早く決断すべきだった。といいながら廃炉決定で安全な新し い高速実証炉開発に踏み出せる」とコメントしている。しかし高速炉は鉛冷却、ナトリウム冷却、ガス冷却、超臨界軽水冷却のいずれかになりますので、高橋 教授の発言は鉛、ガス冷却、超臨界軽水冷却を使わない限り自己矛 盾です。ところが日本が共同研究相手としているフランスのアストリッドはナトリウムをつかうもの。高橋実東工大に代表される大学の原子力工学科はどう なっているのか?


規制と推進組織が同根の日本

2016/12安倍政権は規制庁の人事を再び経産省出身の推進派の手に戻した。民主党のきめた警視庁、環境省出身者の次は、資源エネ庁原子力政策課長など を 務めた安井正也氏(京大原子核工学科卒。経産省で原子力を推進し、2004年に発覚した原発の使用済み核燃料の直接処分に係る試算結果隠しに深く関わっ た)が就任する。プレイヤーが審判を兼ね、しかも福島原発事故を起こした誤審だらけの審判に逆戻りだ。

民主党の時代ですら吐出圧ガ炉心圧よりはるかに低い消防車を待機させれば再稼働OKとした規制庁ですが、現在では丘の上に非常用発電機とメタクラ(スイッ チ)をおき、給水ポンプに直結しておけば再稼働OKとしております。給水ポンプ室に防水扉をつけるとはいえ、給水ポンプ室が水没すれば炉心冷却はできずメ ルトダウンします。消防車で冷却するには炉心圧を抜かねば非常用冷却水の注入はできないのです。圧抜きの弁は遠隔操作で、制御系の電源が切れれば開閉は不 可能。規制組織と推進組織が同根のため、このような理不尽なことがあるのだ。


時代遅れの開発独裁の日本

金子勝はアベノミクッスは、「原発推進、リニア、五輪、カジノ」という時代遅れの開発独裁でしかなく、時間を日銀による毎年80兆円の国債、6兆円の株式 購入という国家の信認を食い物に花見酒経済で稼ぎ、破綻までの間に、改憲と戦争のできる国を作ろうというのが真の目的と喝破。持続性は全く頭にない。

フランスの人口動態学・経済学・歴史学者のエマニュエル・トッド氏が英国のBREXITや米国のトランプ現象は高等教育をうけた人が総人口の30%超えた からだといいます。高等教育を受けたエリートが増えるとその他が見えなくなり、驕慢になり、既得権を手放さなくなるために格差が拡大し、その他70%が悲 惨になって 社会がひっくり返る現象だと解説している。

日本も無論この状態に向かってまっしぐらで、遅かれ早かれ、英国や米国のようになるでしょう。原発を手放さないのもエリートが驕慢なためだろう。

EUのエリートは国家が国民の権利を守らなかったため、グローバル市場に放置された市民が反抗しだしたもので、いずれEUは崩壊する。

中国はこれとはちがい人件費が安いために世界の製造工場になったが、労働者は低賃金のために購買力はなく、中国も消費を増やして経済を回転させるとい う、うまい発展ができず、クラッシュする。とのご宣託。


原発は安いのウソの罠に自ら落ちた東芝

東芝は原発は安いと自らも思い込み、英国を含め各国を転売されていたウエスティングハウスというババををひいたわけで、さすがの三菱重工も降りた 代物。そして2008年に米国のサザン電力のボーグル原子力発電所やスキャナ電力のサマー原発など110GWのPWR炉4基の原発を1.4兆円で 受注しまし2013年に着工しました。ところが2011年の福島事故後、米国の安全規制が厳しくなり、設計や作業の変更のため増えた費用の負担について電 力会社と工事を請け負うCB&I Stone & Websterと訴訟問題が発生。事態打開のため、CB&I社からCBI Stone & Websterを無償でC&&Iから譲り受け子会社とし、電力会社とはランプサム契約に切り替えました、2016年末にCB&I Stone & Webster社が数千億円の赤字であることに気が付いたというお粗末さです。これに気が付かなかったのは志賀重範(東北大工学部原子核工学科)会長だ。 人的関係しかとりえのない文系経営者がウエスティングハウスを買収したのだが、特定の産業だけにしか職場がない理系もウェスティンぐハウスを統率できてい ないのだ。売れるものは全て 売って、残る虎の子のNAND事業を売ればなにも残らず、増資はできず、銀行が融資してくれ なければ倒産の瀬戸際。NAND事業といえどもいすれファウンドリーの独断場となるだろう。


November 19, 2015
Rev. August 6, 2018


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