メガフロート

政 府と造船・重機大手5社がブラジル沖の海底油田の採掘にあたる作業員の中継基地として羽田空港向けに開発されたメガフロートをブラジルに提案するとメディア が伝えた。世界の常識は浅いところはジャケット、深いところはセミサブが居住用に使われているのになぜか。国土交通省の造船管轄部署が中心となってJ-DeEP技術研究組合を設立するという。

対象油 田はリオ沖290km、ヘリで70分、水深2,150mだ。油田が海底より更に3,000m掘削しなければならず、かなりコスト高の油田である。Drilling Rigの設計者はノールウェーのAker、ビルダーはシンガポールのKeppel FELSである。下の写真はそのプロダクション・プラットフォームとして使われるセミサブである。鎖で海底に固定される。



Oil platform P-51, the first 100% Brazilian oil platform  wiki

1960 年代にシェル社の技師Bruce G. Collippがメキシコ湾のBlue Water Rig No.1としてはじめて設計したセミサブの構造は波のあるところは波を通過させる設計にして耐波性を確保している。浅いところで使 われるジャケットだって柱だけ。その上にホテルのような居住区を置く。この形が世界の主流である。掘削はスクリューでダイナミック ポジショニングできる船で掘る。掘りあがれば海底にクリスマスツリーをつけてそこから鎖で海底に係留されたセミサブのプロダクションプラットフォームと結 ぶ。海洋石油掘削と生産設備のためのセミサブの建造はその黎明期に日本の造船業が手も付けずに逃げてしまっため、いまは北海油田開発で設計能力をみにつけたノルウェーや英国のエンジニアリング会社が設計を提供し、建造はシンガポールや韓国2社の独断場と なっているのだ。

羽田飛行場のために開発された
メガロフロートのような薄っぺらな構築物などは 東京湾のような波のないところでは大村湾に浮かぶ長崎空港でも使われ基本的にはOKだが、深さ2,000m以上の大西洋の大陸棚では海底に鎖で係留させなければならず、防波堤で囲うわけにもゆかず、 波ですぐ壊れてしまうのではないか。



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羽田空港の新滑走路設置に際して、国土交通省の造船管轄部署が中心になってメガフロート技術研究組合が設立され、1995年から3年間 は基本技術開発を、1998年から3年間で実用レベルの技術開発(洋上滑走路を想定)が行われた。造船技師にとってメガフロートのような空箱を連 結したものをつくることはメンツが許さないので熱心な取り組みは期待されなかった。在来の埋立工法では なくメガフロート工法が採用されるかが注目されたが、国土交通省の造船管轄部署は省内を説得できず、杭 基礎プラットフォームが採用された。米 軍施設、沖縄向けなども検討されたが攻撃に弱いとされ、成功しないでお蔵入りとなった。

造船業界に借りを作ってしまって困った国土交通省造船管轄部署は時代の要請である石油開発というテーマに飛びついたのか。北村国土交通審議官(京大法)、 前田国際統括官(東大法)、森海事局長ななどを担ぎ出し、国内の港湾建設もなくなりそうだから外にでるという戦略のよう。しかし海上石油生産設備を知らな すぎる。防波堤で守ることもできないメガフロートが深深度の無防備な大陸棚で採用されるのか???こんなものを鎖で海底に固定したところで、波の衝撃で壊 れるかもしれないし、海流により流され、水中凧のよいうに折れ曲がってしまうかもしれない。ここでホテル業しても石油掘削技術を磨くことにもならず、造船 業にとって何のお勉強にもならない。政府資金をただでいただき、ということくらいか。

も し民間側から国土交通省になきついたのなら造船も地におちたことになる。メガフロートのような設計に何のアイディアもないもので国際競争するなど日本も おちたものだ。この設計で雇用を守れるとはおもえない。CADつかう作図に3名強度計算に1人、プロジェクトコーディネションに5名程度でまにあってしま う。メガフロートは沖合約200km、水深2,000m設ける。横315m、縦80mで、海底に複数のいかりを打ち込んで海に浮かべる。事務所と宿泊施設 を兼ね、最大200人が滞在できるという。政府は3年間で計14億5000万円の補助金を出す予定という。シンガポール、韓国地元ブラジルと競争するファ ブリケーターでは可能性はゼロ。かといってセミサブの設計能力はないわけではないが競争力は低い。セミサブを越える設計哲学を育て なければ。こんなバカ仕事を技術者にさせているからそのような能力も育たない。これすべてマネジメントと甘やかした政府の失敗

国土交通省の役人は貴重な税金をゴミ箱にすてて何らかの成果を夢見ているとすればあまりにもお粗末。できなくとも自分の金ではないから痛くもかゆくもないのだ ろう。安倍なんて何もわかっていないで役人にバカにされたままだ。これで景気よくなるのか?これこそ日本版科挙制度の行き着く終着 点で、中国と大差ない。司馬遼太郎は中国や朝鮮と日本は違うとかっていっていたが今の状態をみれば意見をかえると思う。

 February 23, 2013

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