イラク人質事件

最近の社会現象につき、グリーンウッド氏かっての職場仲間をメンバーとする非公開のラウンドテーブル21(一種の掲示板)に投稿した雑感と対話録日本の農業改革のつづきです。


イラク人質事件

さてウンドテーブル主宰者の問題提起の件ですが、今回の事件は日本の平和ボケを直すには良い機会だとおもってます。米国のパワーというものがブッシュという判断がお粗末なリーダーのために失われるとカオスが生じということにも気がつかず、善意だけが先行し、リスクに鈍感な若者の目をショックでさますにはちょうど良いとおもってます。

そもそもアラブに自己犠牲のテロという方法を輸出したのが福田元首相以下の日本政府のリーダーだったわけで、その息子が親の間違いを学び、がんばっているというのが私の理解です。

傲慢だった米国も犠牲を払って勉強している過程ですから世の中はまたよくなるのかもしれません。

CIAはパールハバーの再現を防止しようとトルーマンが創設した組織だそうですが、CIAは9/11の予兆を1ヶ月前に報告しながら、ブッシュ政権は何も対策をとらなかったということが証拠とともに白日の元にさらされました。いくら情報システムをもってもそれを活用する能力がなければ役にたたない。要はリーダーの感性と資質次第といういうことになります。

フランスのテレビ会社がCIAの元高官にインタビューした約6時間のビデオ放送を観ましたが、歴代の大統領がCIAを正しく使ったという例はみられませんでした。いずれも不適切な利用方法だったと結論するしかないなと思ったものです。

私はブッシュは2つの過ちを犯したと思っています。

(1)文明の発祥の地といわれる古く、すれた人々のいる場所に拙速に軍を送ったこと。
(2)兵力の遂次投入というしてはならないことをしたこと。

です。イラク人に見くびられて治安維持もできず、あと1万人の軍を急派するとか。それも野党から指摘されてからです。6月の政権移譲も危ぶまれる始末です。

小泉さんは米国にいい顔するしか選択肢はなかったと思っています。なにせ核兵器をもたずに丸腰で北の権力者から国民を守るにはこれからも米国との同盟は必要だからです。

 

アラブに自己犠牲のテロという方法を輸出したのが福田元首相以下の日本政府のリーダーという歴史の重み

アラブに自己犠牲のテロという方法を輸出したという私のコメントはダッカ事件の事後処置のことです。今回の覚悟してイラク入りした3人と全く関係のない137名の一般乗客との差はあります。今回、政府は3名は覚悟のイラク行きなのだから、自己責任をとってもらうのもやむをえないと簡単に決断できたとおもいます。外向きはそうはいいませんが自衛隊を引き上げないのですからそうとしか考えられません。さてダッカ事件とは:

 

1977年9月28日、パリ発羽田行きの日本航空機472便(DC-8、乗員14名、乗客137名、犯人グループ5名)が、経由地のインド、ボンベイ空港を離陸直後、拳銃、手投げ弾などで武装した日本赤軍グループ5名によりハイジャックされました。

同機はバングラデシュのダッカ国際空港に強行着陸、犯人グループは人質の身代金として米ドルで600万ドル(当時の為替レートで約16億円)と、日本で服役および拘留中のメンバー9名の釈放を要求し、これが拒否された場合、または回答が無い場合は人質を順次殺害すると警告しました。

日本国政府は議論の末、10月1日に福田赳夫首相が「人命は地球より重い」として、身代金の支払いおよび、超法規的措置としてメンバーの引き渡しを決断。身代金と、釈放に応じたメンバー6名(3名は拒否)を日本航空特別機でダッカへ輸送しました。

10月2日、人質との交換が行われ、乗員乗客のうち118名が解放された。10月3日、残りの人質を乗せたままハイジャック機は離陸、クウェートとシリアのダマスカスを経て人質17名を解放、アルジェリアのダル・エル・ペイダ空港に着陸して、同国当局の管理下に置かれました。この時点で残りの乗客乗員も全員解放され、事件は終結したわけです。

しかし、この事件における日本の対応は、欧米の「テロリストや過激派と交渉せず」という姿勢の反対であり、国際的非難を受け、「日本はテロまで輸出するのか。」と言われました。

 

この日本政府の安直な行動の前に、1972年2-3月の連合赤軍リンチ殺人事件と浅間山荘事件、同年5月30日のイスラエルのテルアビブ空港での日本赤軍無差別乱射事件とがありました。

日本はイラクでは当事者ではなく、米国との同盟関係維持という大きな目的のため、やむを得ず付き合っているだけですので今回の事件を解決する力をもっていない。というわけでそもそも政府機関に期待することが国際ルールに関し無知の証拠であると思っています。とはいえ小松さんのご指摘のように岡本補佐官の辞任の原因は外務省の組織防衛本能が原因だったようですね。私は外務省OBの岡崎元大使と岡本北米課長の考え方にはいつも賛同しております。

 

国際派

岡崎元大使と岡本元北米課長に加え、浅間山荘事件を解決した元警察庁外事・警備課長佐々淳行の考え方も共感を持ちます。その共通項はなにか考えてみると、国際派ということです。外の風を知っている人とでもいいましょうか、いつも家に閉じこもっていては知りえないことを肌身に感じた人とでもいえます。

今日、1時間にわたるブッシュの記者会見をライブで通訳なしでみましたが、判断ミスしたとはいえ兵に犠牲を求めている立場の人としてはやむをえない強気の態度に終始し、厳しい記者の質問にも明解に回答してよく理解できました。しかし一箇所だけ、彼がなんといったのか理解できないところがありました。それは記者が「あなたがした決断でどこが間違っていたと思いますか」という質問にまず「その質問は事前に質問予定表に入れておいてもらいたかった。よく考えることが必要なので」とジョークを飛ばしたあとの長い弁明です。それで思い出したのは、若き頃、米国の某コントラクターの定例社内会議に出席したとき、米国から派遣されたエンジニアリング・マネジャー氏の発言でわからないことがあったので、会議後、英国人の同僚にあの発言は理解できなかったので教えてほしいとたのんだところ、「おれもわからなかった。だいたい理解できない発言は言っている本人もわかっていない場合がおおいので、気にする必要はない」といわれたことを思い出します。

今年の大統領選挙に米国市民はどういう判断をするか大いに興味あります。我々同盟国にも選挙権がほしいところですが。

 

パリ警視庁刑事の回想録

Mさんが、ハイジャックされた3人の真意を知るまでは彼らに対する判断を保留すると言われたことはそのとおりだと思います。今日の天声人語に紹介されたパリ警視庁刑事の回想録にあるということば「ことを統べる者、何ごとかをなす者は、すべて自からの前に、次ぎのような人々をもつことになる。・・・すなわち同じことを進んでやろうとする人々と、まったく反対のことをする人々とそしてとりわけ、はるかに厳しい目で見るくせに何もしない、大多数の人々とである。」この3分類に従えば、人質になった3人は「同じことを進んでやろうとする人々」であるかもしれず、人質になった3人に対する私のファーストリアクションは「はるかに厳しい目で見るくせに何もしない、大多数の人々」からの反応ということになるのかもしれません。

 

人生でなした最大の過ち

このHPを書いた次の日の天声人語に記者と大統領のやり取りが紹介されていた。記者は「あなたが人生でなした最大の過ちをあげてください」と聞いたのだそうだ。この答えは「前もって質問を出してくれていたら考えていたのに。歴史家が、いずれ顧みて、ブッシュはあおの時もっとうまくできたのではないかというかもしれないが。思い浮かばない」と言ったのだそうだ。天声人語はこれしか紹介していないが、そのあと長い長い独白が続くのだ。紹介に値しない言葉なのだろうが、ここがわからなかったのだ。英国人の同僚が言ったようにジャンクな発言だったのだろう。大統領の足もとで心配そうに大統領を見つめるコンドリー・ライスが用意した言葉ではなかったのだ。

天声人語は続けて初代ワシントンが退任前に「過ち」について述べた言葉を紹介している。「故意なくしておかした誤りに気付くすべはないが、だからとて決して自分の欠点に盲目ではなく、私は多くの過ちをおかしたかもしれぬと思う」

April 15, 2004

Rev. April 16, 2004


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