吉田昭彦氏講演に刺激されて

2003年1月のイベリア半島一周の旅でグリーンウッド氏はかの国の農業と林業をつぶさに観察することができた。完全に自然が消えうせ、見事なまでに人の管理下におかれた林にすごさと寂しさとを感じて帰国した。日本は急斜面が多い故、また林業が国際競争力を失って久しく、森は放棄されているが故に、一見荒れてはいるが、見事で野蛮な自然が残っている。

帰国して過去1年間、自然観察ボランタリーグループのメンバーとして取り組んだ鎌倉の広町の森の立枯・倒木調査の報告書を脱稿をした。学会での正式発表後、本サイトでも掲載予定だが、東大の堀真人先生の指導の下、立枯・倒木を調査することにより、樹木の世代交代の実相、すなわち長期間人の手が入らず、伐採も間伐もされず、かっての耕作地に自然発生した二次林が陰樹林へと遷移してゆく過程、スギ・ヒノキなどの過植林で発生する立枯・倒木をつぶさに観察し、炭素循環量測定の基礎となるデータを蓄積できた。

引き続いて一歩前の会で聞いた吉田昭彦氏のお話に刺激され、書庫をあさっていたら、かって読んだ安田喜憲の「森と文明の物語」という本がでてきた。拾い読みし記憶を蘇らせた。メソポタミアに始まり、地中海、そしてアルプス以北のヨーロッパそしてアメリカ大陸と人類は森を破壊することで文明を発展させてきた。しかし地球上には残されたフロンティアはない。この制約のなかで人類が持続的に生存してゆくためには、森に代表される自然を大切にしてゆかなければならないという論旨だ。

幸い、グリーンウッド氏は自宅から歩いて5分のところにある広町緑地の調査にかかわった。今後このかっての里山を都市林として維持管理してゆく方向として何が賢いか考えて、提言してゆこうと思っている。

February 12, 2003


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